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25

ラブラド男爵令嬢を見送り、昼食後にアヴェートワ公爵家本邸にやってきた。

なぜか転移陣前にいたリバーに「面白い案ありませんかー?」と詰め寄られた。


「ビデオが欲しいわ」


「何ですか!? ビデオって何ですか!?」


「写真じゃなくて、動くものを記録して、記録したものを見れるものよ」


「動くものを記録するんですか!?」


「一緒に音も記録してね」


「音もですか!?」


リバーは体を引き伸ばしながら、驚きで飛び跳ねている。


「でも、先に音だけでも記録して聞けるものを作って欲しいの。録音機ね」


「どうせならビデオを作りたいです」


「んー、両方作って」


「ええ!?」


「面白い案が欲しいって言ったのはリバーじゃない。両方欲しいから作ってね」


「ビデオは私が、録音機は他の者に頼みます」


「みんなも暇そうにしているの?」


「私もみんなも暇じゃありませんよー」


暇じゃないなら、無茶振り聞きに来ないでよ。

でも、頼もうと思ってたから、聞きに来てくれてあたしは嬉しい。

ありがとう、リバー。

期待して待っているからね。


足取り軽く帰っていくリバーを横目で見送りながら、邸に向かう。


「また、スゴいものを思いつくね」


「動くアズラ様を残しておきたいんです」


「殿下も相当だけど、ルチル嬢も相当だよね」


「アズラ様に比べたら、私なんてひよっこですよ」


「どっちもどっちだよ」


そんなことないはず。

あたしは、闇属性取得してないもの。


厨房に着くと、みんな歓迎してくれた。

必要な材料を伝えると、手早く用意してくれる。


「新作楽しみー! 何の新作になるの?」


「揚げ菓子ですね」


「ドーナツ?」


「違いますよ。ドーナツよりもカロリー爆弾です。絶対太るので販売はしません」


「太ってもよくない?」


食べたいけど太りたくないのが、女子なんだよ!

販売したら、食べたい葛藤を増やすことになるでしょ!


「太らない人は、いいですよね」


「運動しなよ」


全世界の女子を、敵に回したな。


「アズラ様やオニキス様みたいな訓練できませんよ」


「俺も殿下の訓練はできないよ。あれは、確実に死ぬ」


最近、お祖父様に一太刀入れることができたって喜んでたな。

初めて褒められたって、走ってきて抱きしめられたんだよね。

可愛かった。


「お嬢様、はじめませんか?」


「ごめんなさい。はじめましょう」


思い出してニヤニヤして、ごめんなさい。

気合いを入れて、アズラ様にピッタリなカロリー爆弾を作ろう!


今から作るのは、韓国に行きたくても行けない時期に作ったお菓子。

韓国ブーム、すごかったなぁ。


焼肉食べたい。

王宮じゃ難しいかな?

今日の夕食の時に相談してみよう。


水あめ、蜂蜜、お湯、スライス生姜を鍋に入れ、中火で沸騰させたら、弱火で煮て冷ます。

ボウルに砂糖と水、作ったシロップを少しと胡麻油を入れ、かき混ぜる。

そこに、中力粉とシナモンパウダーを入れて捏ね合わせ、クッキーよりも少し分厚く伸ばし、型を抜く。

130度の油で揚げて、シロップに10分ほど浸し、取り出せば完成だ。


薬菓という韓国の伝統菓子になる。

クッキーとドーナツを凝縮した感じで、とてつもなく甘い。


お花の形をしているから、ハニーブロッサムクッキーと呼ばれることもあるんだそう。

可愛い名前なのに、本当の本当にカロリーが可愛くないので、要注意なのだ。


専用の型はないので、クッキーの型を代用。

シロップに一晩漬けるレシピや、材料が少し違うレシピもあるが、あたしのお気に入りレシピを採用する。


あたしは、食べないぞ。

食べてなるものか。


期待に胸を躍らせながら、オニキス伯爵令息が1つ食べている。


「ザクッ! もちっ! あまっ! 美味しい!!」


ああ! 食べたい!

ザクザクと、いい音させてるー!


「すっごい甘いのに、もっとってなる。なにこれ、永遠に食べられる!」


そうなんだよね。

1つ食べたら止まらないお菓子、それが薬菓。

だからこそ食べない。

太って……


うう……


うん! 1日くらい、カロリー爆弾を抱えても大丈夫!

みんな美味しそうに食べているのに、食べられないなんておかしいもの。


オニキス様の「食べるんじゃん」って、顔も気にしない。


1つどころか、2つ3つと、手は止まってくれない。


コーヒー欲しいなぁ。

コーヒー豆は、どこにあるの?

見つかった時のために、ローストする魔道具もミル(魔道具)もドリッパーも用意済みなのに。

後は、豆だけなんだよね。


「ルチル嬢、どれだけ食べるの? 太るよ」


「へ?」


あああああ! 8個も食べてしまってる!

もっと早く止めてよー!


「お嬢様。こちらは本当に販売されないのですか?」


「間違いなく太るのよ」


「では、アヴェートワ公爵家でのみ、食べられるものにしてもよろしいですか?」


「いいわよ」


「ありがとうございます」


胸を撫で下ろしている料理長に、疑問を投げかける。


「何かあるの?」


「お恥ずかしい話なんですが、タイチン様のお茶会で、1人のご婦人が『いつも購入して、いつも食べているものだわ』と仰られたようでして……タイチン様より、珍しい食べ物を用意してほしいと申しつけられておりまして……」


贔屓にしているって伝えたかったのかな?

好きで家に常備しているとか、言えばよかったのに。


「次のお茶会で薬菓を出したいってことね」


「はい」


うーん……

お母様のお茶会で、カロリー爆弾を出してもいいのかな?

ヘルシーで綺麗になれるものがいいんじゃないかな。






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