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ラブラド男爵令嬢を見送り、昼食後にアヴェートワ公爵家本邸にやってきた。
なぜか転移陣前にいたリバーに「面白い案ありませんかー?」と詰め寄られた。
「ビデオが欲しいわ」
「何ですか!? ビデオって何ですか!?」
「写真じゃなくて、動くものを記録して、記録したものを見れるものよ」
「動くものを記録するんですか!?」
「一緒に音も記録してね」
「音もですか!?」
リバーは体を引き伸ばしながら、驚きで飛び跳ねている。
「でも、先に音だけでも記録して聞けるものを作って欲しいの。録音機ね」
「どうせならビデオを作りたいです」
「んー、両方作って」
「ええ!?」
「面白い案が欲しいって言ったのはリバーじゃない。両方欲しいから作ってね」
「ビデオは私が、録音機は他の者に頼みます」
「みんなも暇そうにしているの?」
「私もみんなも暇じゃありませんよー」
暇じゃないなら、無茶振り聞きに来ないでよ。
でも、頼もうと思ってたから、聞きに来てくれてあたしは嬉しい。
ありがとう、リバー。
期待して待っているからね。
足取り軽く帰っていくリバーを横目で見送りながら、邸に向かう。
「また、スゴいものを思いつくね」
「動くアズラ様を残しておきたいんです」
「殿下も相当だけど、ルチル嬢も相当だよね」
「アズラ様に比べたら、私なんてひよっこですよ」
「どっちもどっちだよ」
そんなことないはず。
あたしは、闇属性取得してないもの。
厨房に着くと、みんな歓迎してくれた。
必要な材料を伝えると、手早く用意してくれる。
「新作楽しみー! 何の新作になるの?」
「揚げ菓子ですね」
「ドーナツ?」
「違いますよ。ドーナツよりもカロリー爆弾です。絶対太るので販売はしません」
「太ってもよくない?」
食べたいけど太りたくないのが、女子なんだよ!
販売したら、食べたい葛藤を増やすことになるでしょ!
「太らない人は、いいですよね」
「運動しなよ」
全世界の女子を、敵に回したな。
「アズラ様やオニキス様みたいな訓練できませんよ」
「俺も殿下の訓練はできないよ。あれは、確実に死ぬ」
最近、お祖父様に一太刀入れることができたって喜んでたな。
初めて褒められたって、走ってきて抱きしめられたんだよね。
可愛かった。
「お嬢様、はじめませんか?」
「ごめんなさい。はじめましょう」
思い出してニヤニヤして、ごめんなさい。
気合いを入れて、アズラ様にピッタリなカロリー爆弾を作ろう!
今から作るのは、韓国に行きたくても行けない時期に作ったお菓子。
韓国ブーム、すごかったなぁ。
焼肉食べたい。
王宮じゃ難しいかな?
今日の夕食の時に相談してみよう。
水あめ、蜂蜜、お湯、スライス生姜を鍋に入れ、中火で沸騰させたら、弱火で煮て冷ます。
ボウルに砂糖と水、作ったシロップを少しと胡麻油を入れ、かき混ぜる。
そこに、中力粉とシナモンパウダーを入れて捏ね合わせ、クッキーよりも少し分厚く伸ばし、型を抜く。
130度の油で揚げて、シロップに10分ほど浸し、取り出せば完成だ。
薬菓という韓国の伝統菓子になる。
クッキーとドーナツを凝縮した感じで、とてつもなく甘い。
お花の形をしているから、ハニーブロッサムクッキーと呼ばれることもあるんだそう。
可愛い名前なのに、本当の本当にカロリーが可愛くないので、要注意なのだ。
専用の型はないので、クッキーの型を代用。
シロップに一晩漬けるレシピや、材料が少し違うレシピもあるが、あたしのお気に入りレシピを採用する。
あたしは、食べないぞ。
食べてなるものか。
期待に胸を躍らせながら、オニキス伯爵令息が1つ食べている。
「ザクッ! もちっ! あまっ! 美味しい!!」
ああ! 食べたい!
ザクザクと、いい音させてるー!
「すっごい甘いのに、もっとってなる。なにこれ、永遠に食べられる!」
そうなんだよね。
1つ食べたら止まらないお菓子、それが薬菓。
だからこそ食べない。
太って……
うう……
うん! 1日くらい、カロリー爆弾を抱えても大丈夫!
みんな美味しそうに食べているのに、食べられないなんておかしいもの。
オニキス様の「食べるんじゃん」って、顔も気にしない。
1つどころか、2つ3つと、手は止まってくれない。
コーヒー欲しいなぁ。
コーヒー豆は、どこにあるの?
見つかった時のために、ローストする魔道具もミル(魔道具)もドリッパーも用意済みなのに。
後は、豆だけなんだよね。
「ルチル嬢、どれだけ食べるの? 太るよ」
「へ?」
あああああ! 8個も食べてしまってる!
もっと早く止めてよー!
「お嬢様。こちらは本当に販売されないのですか?」
「間違いなく太るのよ」
「では、アヴェートワ公爵家でのみ、食べられるものにしてもよろしいですか?」
「いいわよ」
「ありがとうございます」
胸を撫で下ろしている料理長に、疑問を投げかける。
「何かあるの?」
「お恥ずかしい話なんですが、タイチン様のお茶会で、1人のご婦人が『いつも購入して、いつも食べているものだわ』と仰られたようでして……タイチン様より、珍しい食べ物を用意してほしいと申しつけられておりまして……」
贔屓にしているって伝えたかったのかな?
好きで家に常備しているとか、言えばよかったのに。
「次のお茶会で薬菓を出したいってことね」
「はい」
うーん……
お母様のお茶会で、カロリー爆弾を出してもいいのかな?
ヘルシーで綺麗になれるものがいいんじゃないかな。




