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文化祭。
A組のタピオカミルクティーは大成功した。
今年も2日間共、完売したのだ。
D組の1件でルチルは学園で恐れられるようになったが、クラスメートもお茶会メンバーも変わりなく接してくれている。
見知らぬ子を怯えさせてしまうことに、申し訳なさがあるくらいだった。
文化祭は、いつものメンバーで楽しく過ごした。
J組の催し物の魔石探しで、去年と同じように勝負をし、勝ったのはシトリン公爵令嬢。
負けたのは、今年初参戦したフロー公爵令息だった。
何か買ってもらおうと考えているそうだが、何を買ってもらうかは、これから吟味するそうだ。
フロー公爵令息は「高すぎるものは無理だからね」と言って、シトリン公爵令嬢を怒らせていた。
そして、文化祭の1番の人気はカメラだった。
アヴェートワ商会から派遣されたカメラマンたちが、屋台の横に設置された撮影場所で写真を撮るというもの。
長蛇の列ができているのに、みんな何回も並んだそうだ。
夏期テストもテストの順位発表も終わり、迎えるのは夏休み。
1日目のお茶会は、エンジェ辺境伯令嬢とガーネ侯爵令嬢の仲が心配だったが、衝突もなく、仲が良さそうに話していて安心した。
2日目のお茶会は、D組と揉めたことを遠回しに聞かれるんだろうなぁと憂鬱だったが、誰も聞いてこなかった。
「ルチル様。あそこに立っている彼は、どなたですか?」
理由は、オニキス伯爵令息だ。
いつもは給仕の真似事をして護衛をしてくれていたが、給仕に飽きたらしく、今回からは正装をして、待機している侍女たちと立っている。
ルチルのお茶会に、初めて男の子がいることに興味が出たのだろう。
しかも、アズラ王太子殿下ではないのだ。
どういう関係か聞きたくて、みんな声を弾ませている。
「彼は、アズラ様が決められた私の護衛騎士ですわ。名前は、オニキス・ラセモイユ伯爵令息です」
「ああ、彼が有名なラセモイユ伯爵家の三男なのですね」
「有名なのですか?」
「はい。なんでも勘当されているそうですの」
勘当? オニキス様が?
「不倫が原因らしいですわ」
「私も聞いたことがありますわ。お相手は、あのホーエンブラト侯爵未亡人だそうですの」
ホーエンブラド……
は? はぁ?
あの雨蛙、いつの間に亡くなってたの?
え? え? ちょ、ちょっと待って……
オニキス様の好きな人、19歳って言ってなかった?
あの雨蛙、確かお祖父様と同じ歳で、結婚5回とか6回してるんじゃなかった?
「とてつもなく変態だから絶対に近づかないで」って、アズラ様に言われたことがあるんだよね。
マジか……
他にも何か言っていたが、衝撃が強すぎて頭の中に入ってこなかった。
夜、ベッドの上でアズラ王太子殿下に上の空を心配されて、お茶会で聞いた話を話した。
「オニキスが、たぶん聞いたんだと思うって言ってた通りだったんだね」
「オニキス様にバレていたんですね」
お茶会の後、オニキス伯爵令息と、どのように会話したのか思い出せない。
「まぁ、有名な話だからね。はじめから聞くだろうと思っていたんじゃないかな」
「私、全く知りませんでした」
「ルチルは、パーティーでは僕の側にいるから。誰も僕が仲良い相手を貶しにきたりしないからね」
「そうですね」
「ルチルは、何に心を痛めているの?」
心を痛めているのかな?
ただ背景を色々考えると、オニキス様もホーエンブラト侯爵未亡人も辛かったんだろうなと思うだけで……
「2人が幸せになってくれたらいいなと思っているだけです」
「そうだね」
自分のことじゃないから、やっぱり詳しく話してくれないよね。
そういうアズラ様だから好きなんだよね。
アズラ王太子殿下の優しい腕に包まれて、ルチルは眠りに落ちた。
次の日に、オニキス伯爵令息に「オニキス様が勘当されていて、お相手がホーエンブラド侯爵未亡人だと聞きました。勝手に知ってしまって、ごめんなさい」と謝った。
オニキス伯爵令息には「それだけ? 全然ダメなお茶会じゃん」と言われた。
首を傾げていると、「そのうち全部話すよ。その時は、何も言わず聞いてくれたらいい」と大人びた顔で微笑まれた。
もう自分から会いたいとは言い出しにくくなり、オニキス伯爵令息から言ってくれるのを待つことにした。
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