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アズラ王子殿下と遊んだ楽しくも大変だった日が、幻だったかのように時間は過ぎ、気づけば秋も深まっていた。


時間ができたので祖父に遊んでもらおうと、執務室に向かった。

執務室に祖父はいたが、ソファで頭を抱えていた。

サーぺが入れてくれたジュースを飲みながら、ため息を吐く祖父を見つめる。


「おじーさま、どうされたんですか?」


「とても面倒臭くてな。断ってしまっていいと思うんだが、断ったら断ったで面倒なことになりそうでな」


ふむ。

とりあえず、面倒臭いことが起こったということは分かった。


「ルチル、ナギュー家分かるか?」


「はい。よんだいこうしゃくけですよね。たしかとうしゅさまは、さいしょうをされている」


「そうだ。その宰相からの依頼というか、願いなんだが」


また吐かれた大きな深いため息に、首を傾げる。


「今度、宰相の子供の3才の誕生日パーティーがある。そこでゼリーを出したいとアラゴが言われたそうだ」


「よろしいんじゃないでしょうか」


「だが、アラゴは事前に、陛下からゼリーは使わせないように言われていてな」


「え? どうしてですか?」


「アズラ王子殿下の婚約者だと思われたくないそうだ」


そんなはっきり……

というか、素敵だったから真似したじゃダメなの?

ジャムの時もそうだったけど、どうしてすぐに婚約者云々になるの?


「陛下は、アズラ王子殿下が自分で決めることを望んでいるそうだ。だから、疑わしいことはしてほしくないらしい。

宰相に直接言えないからアラゴに言ってきたんだよ」


「さいしょうのかたはこわいのですか?」


「怖いというより、娘を溺愛しすぎているんだろう」


お祖父様やお父様と同類なのか。


「それで、ゼリーも娘からのお願いらしい。アズラ王子殿下と同じものがいいんだそうだ」


「でも、へいかからつかわせないようにいわれている……」


「ああ、アラゴは陛下のことは隠して『ゼリーは用意が難しいが、ジャムなら必要数必ず用意する』と言ったらしいんだが、娘が嫌がってるらしくてな。宰相から毎日のようにゼリーの用意をお願いされているそうだ」


お父様、可哀想……心労で倒れなければいいけど……


「で、ジャムやゼリーに代わる何かあればいいと思って、アズラ王子殿下が大好きなフルーツサンドはどうかと勧めたんだ。涼しくなったし、アズラ王子殿下に振る舞えるぞという意味を込めてな。なのに……それでも嫌なんだそうだ」


もう本気で面倒臭くて最終手段に出たのね。

それを断られたと。


「もうゼリーを使わせたらいいんだ。どうしてナギュー家の娘の誕生日パーティーのことで悩まなければならないんだ」


板挟み状態の祖父や父が可哀想になってきた。


「あたらしいスイーツなら、なっとくされるんでしょうか?」


「どうだろうな」


バースデーケーキは、弟のミソカの誕生日に作るため、料理長と密かに計画を練っている。

フルーツで見た目も華やかになるから誕生日にはもってこいだが、弟のために用意しているものを知らない令嬢に使いたくない。

それに、ゼリーより華やかにしていいのかどうかも迷う。


「ナギューこうしゃくけのごそくじょがすきなものって、なんでしょうか?」


「んー……そうだなぁ……宝石やドレスだろうな。王都にいない私の耳にも、購入してる数がすごいと届くくらいだからな」


なるほど。キラキラしたものが好きなのね。

だから、ゼリーなのかも。光に当てたら輝くもの。


「おじーさま、かんてんってあるんでしょうか?」


「寒天? どんな物だ?」


「ゼラチンとおなじようなものです。ゼラチンよりしょっかんをかたくできるんです」


寒天は和菓子にしか使われてないイメージだからなぁ。

スイーツが無いこの世界にあるんだろうか?


「うーん……聞いたことないなぁ」


無いのか。

海藻があれば作れるだろうけど、知らない子のためにそこまでするのもなぁ。


「それがあったら、どんなスイーツができるんだ?」


「こはくとうという、ほうせきみたいなスイーツです」


「宝石みたいなか。いい案だが、寒天かぁ。ゼラチンでは無理なのか?」


「ざんねんなことにむりなんです。てでつまんでたべられるスイーツですので」


「手でだと!? それは素晴らしいな。寒天……料理長に聞いてみるか」


料理長が寒天を知っていますようにと願いながら、厨房に向かった。






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ルチルの口調がアップデートされた記念すべき回♪
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