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13

完成した刺繍花の冠を持って休暇に入ったオニキス伯爵令息を見送った夜。

ルチルの誕生日の前日の夜になる。


日付が変わるまで起きていて、アズラ王太子殿下に誰よりも早く「お誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、僕と出会ってくれてありがとう」と言われた。


誕生日は、朝から夕食終了までアヴェートワ公爵家で過ごし、夜に王宮でアズラ王太子殿下と過ごすことになる。


家族や友人たちからの誕生日プレゼントを開け、明日からお礼の手紙書かなくちゃなと思っていた。


その他のプレゼントは、母と侍女たちが開け、一覧表にしたものを後日渡してくれるとのことだった。


久しぶりの家族水入らずは楽しく、あっという間に時間が過ぎていく。

寂しさを埋めるようにたくさん写真を撮って、アルバムに収めた。


アズラ王太子殿下と毎日会えていても、家族と会えない日々は寂しいものがあるのだ。


王宮に迎えに来てくれたのは祖父だったので、帰りは父に送ってもらう。

部屋の前で抱き合って別れた。


部屋に入るなり、続き扉でアズラ王太子殿下の部屋に行く。

隣だとしても、直接アズラ王太子殿下の部屋に行くとなると、父の機嫌が悪くなるだろうと配慮してのこと。


アズラ王太子殿下が転移陣まで迎えに来なかったのは、いつ帰るかの細かい時間が分からなかったからだ。


「おかえり」


「ただいまです」


「早速始める? 少し休憩する?」


カッコいいのに可愛らしく首を傾げるアズラ王太子殿下に、ルチルが閃いた。


「アズラ様、私ドアを開け直しますので、言ってほしいセリフを言ってもらってもいいでしょうか?」


「いいよ」


セリフを聞いたアズラ王太子殿下が真っ赤になり「え? いや、え?」と狼狽えている。

ルチルは満面の笑みで「お願いしますね」と、ドアをノックするところからやり直した。


「お、おかえり」


「ただいまです」


「休憩にする? それとも、ぼ、僕にする?」


これ、本当に言ってほしい男性がいるのかと疑問だったけど、中々いいではないか。

ふっふっふっふ。

アズラ様に恥じらいがあるから、なお、いい。天才だわ。


「もちろんアズラ様です」


「うっ、あ、はい」


恥ずかしくて両手で顔を隠す姿、可愛い! 萌える!

抱きついちゃえ!


「チャロとカーネは下がってくれていいよ」


「チャロに手伝ってもらった方が早いよ?」


「私が手伝いますから」


アズラ様の顔から湯気が出そう。

いくつになっても初々しいのう。


チャロとカーネが頭を下げてから出ていき、ルチルたちはこの日のために部屋に飾っているマネキンに近づいた。

マネキンには、近衛騎士・騎士団・文官・医者・ローブ等の制服を着せている。


ルチルが、アズラ王太子殿下に誕生日プレゼントとしてお願いしたのはコスプレだ。

ファッションショーだ。

色んな制服姿の写真が欲しいとお願いしたのだ。

推しの色んな姿は、何にも代えられない心のオアシスなのだ。


アズラ王太子殿下に脱いでもらっている間に、ルチルはマネキンから制服を脱がす。


「見ないでほしい」と言うアズラ王太子殿下を笑顔で無視し、着替えるところも写真を撮っていく。


「……恥ずかしい」と視線を合わせてくれなかったアズラ王太子殿下も、3着目からは恥じらいを捨てたように色んなポーズをとってくれた。


「アズラ様、本当にありがとうございます。宝物が増えました」


「喜んでもらえてよかったよ」


「疲れましたよね。一緒にお風呂に入りましょう」


「ははは入らないよ!」


「今日くらい、いいじゃないですか」


「ダメ! 絶対にダメ!」


「私の誕生日なのに……」


ちっ! 嘘泣きしてもダメか。

何回もお願いしているのに入ってくれないんだよねぇ。


「ルドドルー領では一緒に入ってくださいましたのに」


「2人っきりなんてダメなの!」


「では、入っている姿を見ていてもいいですか?」


「ダダダダメ!」


ケチー! 1回見てるんだから、いいじゃんかー!

濡れる堕天使様……

髪の毛から滴り落ちる水とご尊顔……

素敵なんだよねぇ。 


「どうしてもダメですか?」


「ダメだよ。ルチルも僕に見られながらって恥ずかしいでしょ?」


「いいえ。見てくださっていいですよ」


「なっ! 僕がダメ!」


粘っても折れてくれないだろうな。

今は諦めるか。


「いつになったら一緒に入れますか?」


「……結婚してからなら」


「遠いですね。そんなに私は嫌ですか」


「違うよ!」


「でも、嫌なんですよね?」


「嫌じゃない! 我慢できなくなりそうなの!」


頬を膨らませ、プイッと顔を背けて、アズラ王太子殿下は浴室に消えていった。

ルチルは腰が砕けたように、その場に崩れ落ちる。


か、か、可愛いいいいいい!

プイって、プイって。ねぇ、プイってしたよ。

あのアズラ様がプイってしたんだよ!


くぅ! 答え分かってたけど、聞いて正解だった。

神様、アズラ様、ありがとうございます。

来年の誕生日まで生きていけます。


アズラ王太子殿下のプイ顔を何度も反芻してから、ルチルも自室の浴室で湯浴みをした。


湯浴み後は、お互いの髪の毛を乾かし合い、ベッドの上でじゃれつくように隣り合って座る。


「どの写真もカッコよすぎです」


アズラ様ったら、自分の写真を見て恥ずかしくて赤くなっているなんて……本当に可愛いがすぎる。

可愛いって言うと拗ねちゃうから、伝えられなくて寂しいわ。


アルバムを閉じて、アズラ王太子殿下の顔を見つめる。


「ん? どうかした?」


「いいえ。写真もカッコいいですが、本物のアズラ様はもっとカッコいいなぁと思いまして」


テレテレ顔も可愛いわぁ。

本当に休みの間に、存分にアズラ様を摂取しとかないとね。


それに、アズラ様にもあたしを摂取してもらって闇属性を薄めてもらわないと。

そのうち、誰かが闇に葬られそうで怖いからね。






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