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応接室に着くと、ドアの前に立っている衛兵が「ナギュー公爵令嬢とルクセンシモン公爵令嬢が到着しています」と教えてくれた。


中に入ると、立ち上がったシトリン公爵令嬢が号泣をしはじめた。

初めて見るシトリン公爵令嬢の泣き顔に、どうしていいか分からなくなる。

アンバー公爵令嬢が、シトリン公爵令嬢の背中を撫でている。


「ごめん、ごめんなさい! 私のせいで!」


え? え? なにが?


「ルチル嬢、とりあえず座りましょう。シトリン嬢もアンバー嬢も」


オニキス伯爵令息に促されて、全員ソファに座った。

ミルクは、ルチルの膝の上で眠るようだ。


王宮の侍女が用意して持ってきてくれたお茶を、カーネが淹れてくれる。


「シトリン様、どうされました?」


「どうもこうもないわよっ……本当にごめんっなさい……」


ボロボロと泣いているシトリン公爵令嬢に、頭がこんがらがってくる。


ルチルも会ったら、合宿を駄目にしてしまったこと、歓迎会に参加できなかったこと、心配をかけてしまったことを謝ろうと思っていたのだ。


なのに、どうしてシトリン公爵令嬢に泣きながら謝られているのだろう。

全く分からない。


「ルチル嬢。シトリン嬢は、自分と間違われて連れ去られたことを謝っているんだと思いますよ」


「え? でも、それは……」


「殿下からは、話すかどうかはルチル嬢に任せると言われています。どうするかは、ルチル嬢が決めてください」


耳元で小声で言われた。


話すかどうか決めていいって言われても、どこまで話していいの?

難しすぎるよ。


でも、こんなに罪悪感を持ったままでいてほしくない。

全部、あたしの軽率な行動が招いてしまったことなんだから。


「シトリン様、アンバー様。私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか」


ルチルは常日頃から、神殿や他の貴族、裏社会の人たちから狙われていることを話した。

理由は、金色の魔法の使い手ということ、王太子の婚約者ということだと伝え、もう何回もそういう人たちは捕えているということも付け加えた。


まぁ捕まえても、どこの誰とかの詳細はルチルには伏せられているというのは、言わなくてもいいことなので話さなかった。


そして今回も、シトリン公爵令嬢を狙ったと供述しているけど、本当はルチルが狙われたんだろうということを説明した。


「父から、なるべくルチル様といるようにと言われたのには、そういう理由があったのですね」


ルクセンシモン公爵が心配してくれていたとは。

絶対、アズラ様に助けてもらいますので。

あたしに薬の開発はできないんです。

すみません……


「でも今回は、ナギュー公爵家に来なければ起きなかったことだわ。私が誘わなければよかったのよ」


「そんなことありませんよ。私、ナギュー領に行くことも、シトリン様たちと遊ぶことも楽しみにしていたんです。無かったら寂しかったですわ」


「だとしても……髪の毛も短くなってしまって……」


これも、火に突っ込んだあたしが悪いんだけどなぁ。

話していいかな?


迷いながらも、囲まれた火から逃げ出すために火に突っ込んだと簡単に説明した。


隣からオニキス伯爵令息の呆れたような息が、ハッキリと聞こえる。

知っていたくせに、まだ反省するようにと、心を抉るような攻撃をしてくる。


「はぁ!? なにしてんのよ! あなた馬鹿なの!」


うんうん、これでこそシトリン様だよ。

でも、怒らないで。

もう反省してるから。


「ルチル様、それは絶対にしてはいけないことですわ」


アンバー様の顔も目も怖い。

お願い、怒らないで。


「火傷は!? 大丈夫なの! 痕が残るとかないの!?」


「はい。幸いなことに火傷はありませんの」


「でも、その首は?」


「これはナイフで切られまして」


あ、シトリン様が真っ青になっちゃった。

アンバー様は、ブツブツと何か呟いてて怖いなぁ。


「あなた、もう絶対1人になったらダメよ! 殺されたらどうするのよ!」


あのシトリン様が、物凄く心配してくれている。

さっきも泣いてくれていたし。感動。

嬉し泣きは許してもらいましょう。


「ルチル嬢、泣いても許してもらえないからね」


「ひどっ。シトリン様とアンバー様が心配してくれたのが嬉しくて泣いただけなのに」


「反省して泣いてよ」


「え? 泣いても許さないって言ったのに」


オニキス伯爵令息が差し出してくれたハンカチを受け取り、ハンカチを頬に押さえつけて涙を吸い取らせる。


「疑問だったんだけど、どうしてオニキスがいるの?」


「残念なことに、ルチル嬢の護衛に任命されたの」


「代わってください!」


アンバー公爵令嬢が、前に乗り出して、机に手を突いた衝撃でカップが揺れてソーサーの上で音を立てた。


「殿下が許可したら喜んで代わるよ。毎日、砂糖吐きそうな空間にいなくて済むし」


いやいや、ニヤニヤして楽しんでるじゃない。


「アズラ王太子殿下に直訴しますわ。まずは手紙を書きませんと」


「でも、アンバー嬢はもうすぐ卒業だから、オッケー出るのは難しいと思うよ」


「学園内も加味していますのね。もう1度、2年生3年生できるかしら」


いやいや、できないから。


それに、あたしが卒業するまでは、オレンニュ伯爵と過ごしながら鍛えるって言ってたよね?

会いに行ってあげてね。

オレンニュ伯爵、きっと楽しみに待ってるよ。


「でも、どうしてオニキスなの? ジャスの方が強いんじゃないの?」


「ジャスには相手がいないからでしょ」


「相手って好きな人? ジャスにもいるわよ」


「ジャスって、そうなの?」


ジャス様……みんなにバレていってます……

強く生きてください……


「そうよ。だから、その条件なら護衛もできるでしょ」


「だね。殿下に相談してみよ」


オニキス様って会話するの上手だよね。

あたしも色々隠されているのかもな。


シトリン公爵令嬢とアンバー公爵令嬢に「暇な日は王宮に来て遊んでほしい」とお願いすると、快く了承してくれた。

遊びに来た時に、ダンスパーティーのドレスのデザインを考えようということになった。


後半のアヴェートワ領に遊びに行く計画は、アズラ王太子殿下にお願いをするから、他の予定を入れるのは待ってほしいともお願いした。


オニキス伯爵令息の白い目が痛かったが、チョコがけナッツが欲しいのか、何も言われなかった。


結果、懇願をしまくってアヴェートワ領への遊びは、どこに行くのも絶対数人で行動することを約束に承諾をもらえた。

快諾ではなかった。


後日、フロー公爵令息とジャス公爵令息も事件を聞いたようで、お見舞いに来てくれた。

アヴェートワ領には予定通り行けることを伝えると、「気分転換になっていいかもですね」と言われ、「そうだよね」と遊びたいという気持ちの後ろめたさが減った。






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読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

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