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夕食を食べていると、祖父と父とミソカとミルクがやってきた。

元気なミソカの姿に、泣きながらミソカに抱きついた。


「お姉様が無事でよかったです」


「ごめん、ごめんね。私のせいでミソカまで危ない目に遭わせてしまって」


「大丈夫ですよ。むしろ僕が一緒にいられてよかったです」


ううっ……優しさが身に染みる……


祖父や父とも抱き合って、これから王宮で暮らすことを説明された。


祖父も父も抗議をしたが、アズラ王太子殿下が一歩も譲らなかったそうだ。

あんなアズラ王太子殿下は初めて見たと、2人共言っていた。


そして、捕えた誘拐犯たちのことも教えてくれた。


5人全員が共通語を話し、ポナタジネット国の言葉には反応しないそうだ。

それに、犯人たちはシトリン公爵令嬢を狙っていたと言ったそうだ。

お金が欲しくてやったことだと自供したそうだ。


全員が一語一句同じことを言い、これ以上の情報は得られないだろうとのこと。

ただ、どこからどう見ても騎士か傭兵なので、そこから調べていくと教えてくれた。


ミソカが聞いたから、ポナタジネット国語を話すのは間違いない。


捕まった時のことを考えて、口裏を合わせている辺り、後ろには大きな組織がありそうだということも教えてくれた。

でなければ、一語一句同じこと言わないだろうとのこと。


ルチルが狙われたのか、ミソカが狙われたのか、犯人たちが言った通りシトリン公爵令嬢が狙われたのか分からないが、今まで以上に身辺には気をつけるようにと口を酸っぱくして言われた。


それに、今回ルチルが狙われていたんじゃなくても火傷を治したことがバレている以上、これからは狙われる危険性もあるから心に留めておくようにと、こちらも散々注意された。


意気消沈していると、祖父が「離れて暮らすことになってしまったが、いつでも好きな時に帰ってきたらいい。転移陣は常に使えるようにしておくから」と、頭を撫でてくれた。


カーネはこのまま仕えてくれ、ミルクもこのまま王宮にいるそうだ。

学園が始まれば、金土日以外はカーネとミルクはアヴェートワ公爵家に帰るとのこと。


ルチルの行動一つで色んな事が変わってしまったことに、今日怒られたことは胸に刻み、今後はいつ殺されてもおかしくないと思って過ごそうと決めた。



その日、就寝前になってもアズラ王太子殿下が再度来ることはなかった。

オニキス伯爵令息に尋ねたら、「寝る間も惜しんで勉強中でしょ」と返された。


そうか。

アズラ様のベッドで先に眠っててもいいのかな?


「夜はアズラ様の部屋で寝ますから、もう下がっていいですよ」


「ルチル嬢、先に言っとくと、俺、ルチル嬢の命令は聞かないから。殿下が帰ってくるまでは殿下の部屋の前にいるよ。何かあったら大声で呼んで」


と、オニキス伯爵令息は手を振りながら部屋を出ていった。


あたしの護衛騎士が、あたしの命令は聞かないってなーにー!?

いや、命令を聞かせたから今回の事件が起こったわけで……


それに、オニキス様は同級生でお友達……

ああ、なんかややこしい……


カーネには下がってもらって、アズラ王太子殿下の部屋に入った。

ベッドの中に潜り込み、アズラ王太子殿下を待っていたのに、いつの間にか眠ってしまった。



昼過ぎまで眠っていたからか、夜中に目が覚めると温かい腕に包まれていた。

微睡みながら擦り寄ると、包まれている腕に力が篭った気がした。


「アズラ様?」


「ん?」


「ごめんなさい。起こしてしまいましたか?」


「ううん。眠ってなかったから気にしないで」


日中の怒っていた声ではなく柔らかい声色に、ルチルはアズラ王太子殿下の背中に腕を回して、首元に顔を埋める。


「首、痛くない? 大丈夫?」


「傷はもう指輪で治してるんで大丈夫です。包帯はカモフラージュです」


「痛くないならよかった」


もう逃げられないというほど、キツく腕の中に捕らえられる。


「腕の中にルチルがいる……よかった……怖かったんだ……居場所が分かっても、間に合わなかったらって……怖かった……」


ああ、あたしは何度、苦しくて痛い涙を流させているんだろう。

アズラ様の涙を拭う度に、もう悲しませないと決めるくせに守れていない。


馬鹿だ。大馬鹿者だ。


「ごめんなさい……これからは、最悪を考えて行動します」


「うん、そうして。ルチルがいなくなったら、どれだけ僕が、皆が悲しむか分かっていて」


「はい」


アズラ王太子殿下が、ルチルの髪の毛を弄るように触ってきた。


「短くなっちゃったね」


「カーネに切り揃えてもらったんです。短いと嫌ですか?」


「ううん、髪型なんてなんでもいいよ。ルチルに変わりはないんだから」


甘いなぁ。

この甘さに慣れてしまっているから、怒られた時は本気で怖かった。

優しいアズラ様、嬉しい。


「もう2度と火に飛び込むなんてしないでね。聞いた時、心臓止まるかと思ったよ」


「ごめんなさい」


髪の毛を弄っていた指が、首の包帯を撫でてくる。

擽ったくて、小さく笑ってしまう。


「悔しいなぁ。ルチルに触れた男を捕まえられなくて悔しい。死にたいと思うほど甚振るのに」


こっわ!

でも、低い声も素敵。

堕天使アズラ様、降臨。


「アズラ様、お願いがあるんですが……」


「なに?」


「上書きしてくれませんか?」


お昼のオニキス様の話を要約すると、アズラ様は嫉妬で我を忘れてもおかしくない状況だったということだろう。

それを、理性を総動員して止めていたと。


我慢しすぎたアズラ様が、ハゲそうで心配だわ。

本能のままも困るけど、いつか爆発されるのも困る。

ガス抜き大切。


「えっと……それは……」


「嫌ですか?」


「嫌じゃないよ……嫌じゃないけど……今日はやめよう」


「今日がいいです」


「うーん……いや、でも……」


「だって、アズラ様しか嫌なのに……あんなこと……忘れたいのに……」


卑怯だけど、女の武器、涙を使おう。

堕天使様が悪魔にならないよう、少し発散してもらおう。


「分かった。でも、もし暴走したら、魔法使ってでも止めるって約束して」


「分かりました」


止めないけどね。

勉強と執務と今回の事件の息抜きを、存分にしてもらいましょう。






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読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

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