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週明けに学園に戻ったルチルは、1年D組に来ている。

眠ってしまったせいで、お茶会ができなかったことを謝りに来たのだ。


昨日の夜に寮のルチルの部屋で、シトリン公爵令嬢が教えてくれた。


「あなた、ピャストア侯爵令嬢とスペンリア伯爵令嬢と予定があったの?」


「はい。部屋に招待していたのですが……眠ってしまいましたので……すっぽかしてしまいました……」


「心配しなくていいわよ。私が説明しといてあげたから」


なんと!

丸くなったと思っていたけど、あたしの失態をケアしてくれるまでになっていたとは!?


「ありがとうございます。気分を害されていませんでしたか?」


「ピャストア侯爵令嬢は心配していたわね。でも、スペンリア伯爵令嬢は、何も言わずに去っていったから分からないわ」


ということだった。

ルチルからきちんと謝罪をと思い、朝からD組を訪れている。


まだ来ていないようなので待っていたら、前回と同じように先にカイヤナ侯爵令嬢が登校してきた。


「おはようございます。カイヤナ様」


「おはようございます、ルチル様。お加減はいかがですか?」


「もう大丈夫です。元気いっぱいです。魔法の練習をしすぎてしまったようで、魔力枯渇になっていたそうなんです。お恥ずかしい限りですわ」


「まぁ! そのような理由でしたのね。大事がなくてよかったですわ」


「ありがとうございます。部屋に招待しましたのに、そんなことになってしまい申し訳ございませんでした」


「そのようなことよろしいですのに……でも、謝罪を受け入れますわ」


「ありがとうございます」


そして、こちらも前回と同じで、カイヤナ侯爵令嬢と話しているとスペンリア伯爵令嬢が登校してきた。


「スペンリア伯爵令嬢、おはようございます」


肩を上げて、恐る恐る見てくる。

こちらも全て、前回と変わらない。


「先週は体調不良により、約束を守ることができず申し訳ございませんでした。お部屋に来てくれたんですよね。聞いた時は、本当に嬉しく思いましたわ。この前のお詫びというわけではありませんが、本日の夜にリベンジさせていただきたいのです。もちろんカイヤナ様もご一緒に」


「またお誘いいただいて光栄ですわ。今夜、楽しみにしております」


「はい。今夜こそは女子会を楽しみましょう」


カイヤナ侯爵令嬢の「女子会?」という声は聞こえないふりをして、頭を下げてD組から去った。


あたし、なに女子会とか言っちゃってんの。

そんな言葉、この世界にないから。


まぁ、突っ込まれても「女子だけで集まるお茶会のことです」って説明はできるけど。

気をつけないと、そのうち大事故勃発しそうだわ。


気をつけようと思っていても、すぐに気を抜いてしまうのは、前世のおばちゃん時代の名残だろうか……誰にも分からない。


D組に来たついでに、E組にも寄った。

ヌーの様子を確認するのと同時に、E組の生徒を牽制するためだ。


E組の入口から少し大きな声で「ヌーさーん」と呼ぶと、登校していた生徒全員が顔を向けてきた。

ヌーは、慌てて駆けてくる。


「ルチル様、どうされましたか?」


「石鹸をお渡ししようと思いまして」


「いいいいいただけません」


「試作品だから小さいので気にしないでください。皆様の分もお渡ししておきますね。ヌーさんから配っておいてください」


「ルチル様、本当にいただけません」


ルチルは笑みを深めて、ヌーの鞄に無理矢理入れた。

ヌーが慌てふためている姿は、ゴシェ伯爵令嬢も顔負けだ。


「もし、この石鹸のせいで何かあったら、すぐに言ってくださいね」


「あ、はい。荒れたりしないかとかですね。感想書きます」


「そちらもお願いしますが……まぁ皆様、潰されたくないでしょうから、何もされないと思いますが」


悪い笑みを携えて、教室の中を見渡した。

ほとんどの生徒が盗み聞きしているのだ。

効果は抜群だろう。


ルチルの意図に気づいただろうヌーに別れを告げて、颯爽とA組に向かった。

ヌーは廊下に出て、ルチルに深く頭を下げていた。


A組に入ると、何人かのクラスメートに囲まれた。

心配してくれていたようで、みんな「よかったです」と顔を綻ばせてくれる。

クラスメートに心を配ってもらえたことが嬉しくて、「今度お茶しましょうね」と約束をした。


アズラ王太子殿下は少し耐性を付けたのか、土曜日のキスの後だというのに、真っ赤になるだけで目は逸らさず逃げずにいてくれた。


ニヤニヤし出したオニキス伯爵令息の口が「イジろう」と動いていたが、何も見ていないことにした。






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