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どこのお店が可愛いとか、あそこのデザイナーの腕がいいとか、アクセサリーはどこのお店が流行りになりやすいとか話が弾んでいる。


生地の話にもなり、アマリン子爵令嬢も楽しそうだ。

サヌールヴォ子爵夫妻のシルク生地は絶大な人気になっていて、昔みたいに陰口を叩く人は少なくなっている。


「みんな、本当お洒落大好きだよねぇ」とお茶を飲んでいると、1人少し俯いていることに気づいた。


1年G組エンジェ・ポニャリンスキ辺境伯令嬢。

曙色の髪に赤橙の瞳。

今食べているパンケーキのように体も髪もふわふわだ。

触ったら、絶対気持ちいいだろう。


「エンジェ様、どうされました? お腹痛いとか気分悪いとかありますか?」


ルチルはお茶会の挨拶の後に、名前で呼んでもいいかと提案し、みんな受け入れてくれていた。


「え!? いえ、元気です。大丈夫です」


「でしたら、よろしいのですが……」


「エンジェ様は、どこでよくお買い物されていますか?」


少し落ち着いてしまった空気を盛り上げようと、ガーネ侯爵令嬢が声をかけた。

先程から話を明るく色んな人に振っている姿を見る限り、アンバー公爵令嬢が言うように、とても素直で可愛らしい子だ。


「あの……それが、恥ずかしいことに、私お洒落が得意ではありませんの。こんなですから、お洒落しても似合いませんし」


とても明るく言ってくれたが、誰も言葉を発することができないようだ。


エンジェ辺境伯令嬢は、ぽっちゃりさんだ。

それも、めちゃくちゃ可愛いぽっちゃりさんなのだ。


こんな風に自分を卑下するということは、過去にぽっちゃりが原因で虐められたことがあるのかもしれない、今現在、何か言われたりしているのかもしれない。

今日渋めのワンピースを着ているなと思っていたが、そういう事情があるのかもしれない。


でなければ、お洒落に興味がないでいい。

似合わないなんて卑下する必要はないのだ。

まるで誰かに言われる前に、予防線を張ったみたいじゃないか。


まぁ、「そんなことありませんよ。可愛いですよ」と言ってもらいたいがための「私なんか」と言う子もいるだろうが、その場合分かりやすいお洒落をしているもんだ。


どこからどう見てもエンジェ様は、わざとらしいタイプではない。


「ええ!? エンジェ様、ものすごく可愛いじゃありませんか。癒し系ですよ。私、癒し系に憧れているんですよねぇ」


なにせ吊り目なもので。

ほんわかする顔が羨ましいんです。


「癒し系?」


「癒し系とは、心を穏やかにほっこりさせてくれる顔や雰囲気のことを言いますの」


「わた、私は、そんな大それた者では!」


あわあわとする姿にもほっこりする。可愛い。


他の人たちは、癒し系の意味が分かったらしく頷いている。


「私、ルチル様が仰ることが分かりますわ」


「カイヤナ様も分かりますか。可愛いですよね。触ったらきっと気持ちいいでしょうしね」


「さわ、さわ!」


真っ赤になるエンジェ辺境伯令嬢を、みんな温かい眼差しで見ている。


「きっと淡い色が似合われると思いますよ」


「私もそう思いますわ」


「え……ですが……」


「今まで落ち着いた色が中心でしたのなら、いきなり服の色を変えるのは恥ずかしいかもしれませんわね。アクセサリーから少しずつ変えていかれたら、抵抗が少ないかもしれませんわ」


自分なんてと思っている心を変えるのは大変だ。

何かきっかけがあれば吹っ切れるかもしれないけど、きっかけなんて早々落ちているものでもない。

少しずつ意識改革できればいい。


「アクセサリーなら淡いピンク色がお似合いになると思いますわ。機会がありましたら、一緒に買い物に行きましょう」


うんうん、みんなが仲良くなってくれるのも嬉しい。


「エンジェ様は、ご趣味はありますか?」


「私は、恥ずかしながら食べることが好きでして。アヴェートワ商会のカフェが大好きなんです。ですから、ルチル様にお誘いいただいた時は、本当に嬉しくて。いつかお話できたらと思っていましたから」


なんて可愛らしい子なんでしょう。

こういう子、おばちゃん好きよ。


「ありがとうございます。お祖父様もお父様も喜びますわ。それに、私も食べることが好きでして、私が食べたくてスイーツ開発を色んな方に手伝ってもらっているんです。エンジェ様の言葉、本当に嬉しいですわ」


空気が和んできて、ここからはスイーツの話になった。

どのスイーツが好きだとか、このスイーツの違う味が食べてみたいとか、ルチルにとっては市場も知れて、とても有意義な時間になった。


お茶会も終わりの時間になり、お見送りのためにルチルも玄関ホールに向かう。


用意しているお土産は、石鹸だ。

透明の石鹸に本物の花が入っていて可愛い。

こちらの販売予定は、来年の年初めになっている。


昨日渡したシトリン公爵令嬢からは、大絶賛されている。

お茶会のメンバーからも喜んでもらえて、大成功でお茶会1日目は終わった。




お茶会2日目は、既に学園を卒業した人たち20人。

お茶会のテーマは、避暑地に行く時の服装。

料理のテーマはお弁当。


湖の畔で食べられたら風情あっていいですよね。


お茶会場所は、池の周りにパラソルを立てて、幾つもの丸テーブルを用意した。


ルチルが全てのテーブルを周り、挨拶と会話をしていく。

テーブルの組み合わせは、結婚しているしていない、働いてる働いていないなどで分けた。


学生時代の話とかをしてもらいながら、将来の役に立ちますという体で現状の話も聞いていく。

過激な人はいないが、社交界の噂話は色々教えてくれた。

情報収集ができて満足だ。


今日のお土産も昨日と同じ石鹸で、とても喜んでもらえ、2日目も大成功で終わった。






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― 新着の感想 ―
この時点で思いますに、ルチルも派閥作りを決めたようですし、ヌーについても、何らかの形で庇護下に置いていると周知できたら良いですね。 例えば、ルチルの家で騎士に叙任するなど。 当人の希望も有るのでしょう…
[一言] いつも楽しく読ませていただいています。 ヌーちゃんの虐めはどうなったのでしょうか? 成績が下がったのも気になります。
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