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文化祭が終われば、2日後に夏期テスト。
そして、夏休み前に夏期テストの成績の順位発表になる。
今回の順位も同率1位は、前回と同じ名前で9人。
10位にシュンの名前。
ヌーは、少し順位を落として13位。
他の平民の子たちは順位を上げていた。
文化祭があったからって、成績酷すぎない?
簡単な問題ばっかりだったよ?
ノートを盗られたりしていたヌーさんが13位。
他の人たちは教科書もノートもあるんだから、負けて嫌なら勉強すればいいのに。
成績表を見終わり、夏期最後のHR待ちをしている。
誰もが「先生早く来て、挨拶を終わらせて」と思っているだろう。
「明日から夏休みですねぇ。殿下はいつ暇ですか?」
「僕はまたずっと領地だよ。収穫の手伝いをすることになっている」
「ルチル嬢も行くんですか?」
「私はアヴェートワ領で過ごしますよ」
「え!? よく殿下がオッケーしましたね」
だよね。ビックリするよね。
アズラ様に一緒にいたいって、ものすっごく言われたよ。
でも、夏休みは家族と過ごすって約束してるからね。
2週間かけて説得したよ。
がっつり話せるのは週末だけだからね。
長い攻防戦だった。
「ルチル嬢も行くのなら、ついて行こうと思ったのに」
「どうして私が行くのならですか?」
「また新しい遊びができそうじゃないですか。BBQも羽子板も楽しかったなぁ」
「楽しかったわね。ふふ。でも、私は夏もできるのよ。いいでしょ」
またマウントが始まるのか……
仲が悪いようで良いんだから。
「どういうことですか?」
「私、アヴェートワ領に1週間も遊びに行くのよ」
「ずるい! 俺も行きます!」
「落ち着いてください、オニキス様。アズラ様がいないのに、他の殿方を招待できませんでしょう」
「そうよね。無理よね。何をしたかは、休み明けに教えてあげるわ」
勝ち誇った顔をしているシトリン公爵令嬢に対して、オニキス伯爵令息は悔しそうに机を叩いている。
「殿下! 殿下も1週間アヴェートワ領に遊びに行きましょうよ」
「行きたいのは山々だけど、やることが多くて無理なんだよ。王宮みたいに直接転移陣が繋がっていたら、1日だけ行けたりするんだろうけど」
「ジャスはまた稽古とか言いそうだから、フローを巻き込もう! 男が2人いれば問題ない」
「残念だけど、フローは僕と一緒にガディオッホ領に行くよ」
「そんなぁ……」
フロー様は、アズラ様と一緒に行くんだ。
なるほど。
「僕が会えないのに、オニキスがルチルと会うなんてダメってことだよ。暇ならオニキスもガディオッホ領においでよ」
「……俺は王都で遊んでいます」
「来たくなったら、いつでも来ていいから」
「はい……ありがとうございます……」
そんなに落ち込まなくても。
「仕方ないですね。ジャス公爵令息を誘われて、一緒に来られたらどうですか?」
「ルチル嬢、ジャスはね、友達よりも稽古なんですよ」
「ですので、アヴェートワ領にいる間は、午前中ミソカと一緒にお祖父様の訓練を受けられてはいかがですか?」
「俺に死ねって言うんですか? 土日の殿下の訓練エゲつないんですよ。見ていた俺まで何回死ぬと思ったことか……」
「お祖父様、アズラ様には特に厳しいですから」
アズラ王太子殿下が空笑いをして、「だよね」と呟いていた。
落ち込んでいたオニキス伯爵令息には、「でも、遊びに行きたいのでジャスに聞いてみます」と別れる間際に言われている。
HR中ずっと考えていたそうだ。
「そんなに遊びたいのなら、伯爵令息が体験したことないだろう遊びを、来るならば提供してあげようではないか」と思った。




