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25

夕食を食べ終え、部屋でチョコレート片手にルチルは悩んでいた。


ヌーさんを取り巻く環境は分かった。

E組に平民はヌーさんが1人。

さぞかし辛い日々だろう。


新しいノートの予備はある。

あげたいけど、あげれば誰かに聞いたと丸分かりだしな。

それに、新しいノートがあっても、また盗られたら一緒だもんな。

あげるだけでは解決にはならない。


バザー品に関しては、E組がバザーをすると聞いたけど大丈夫? という風に押し付けてしまおう。

でも、あたしがあげたとなると、更に風当たりが強くなるかもしれないしなぁ。


たらこ唇みたいに、持ってこられない人たちは全員提供するよってなればいいけど、E組でもないのにそれはおかしいし。

それこそ、他のクラスも手伝ってほしいことはあるかもしれないし。


はぁ、ハゲそう……うまく立ち回れたらいいのに……


とりあえずバザー品は見繕っておこうと、金曜の夕方、家の中を物色した。

倉庫になっている部屋で持っていってよさそうな物を探していると、弟がやってきた。


「お姉様、何をしているんですか?」


「文化祭に出すバザー品を探しているの」


「くみ紐じゃなくなったんですか? 僕、買いに行こうと思ってたのに」


「バザーをするクラスはヌーさんのクラスよ。あげようと思っているの。それに、ミソカのくみ紐はミソカの好きな色で作るわ。買わなくていいからね」


「嬉しいです! ありがとう、お姉様!」


うん、可愛い顔をありがとう、弟よ。


弟が一緒に物色しはじめた。

「懐かしい」と言いながら楽しそうにしている。


「ねぇ、ミソカ。遠いところで問題が起こっていて、解決したいけど自分はそこには行けないの。あなたならどうする?」


「なぞなぞ?」


「違うわ」


「違うなら簡単ですよ。解決できる人を行かせればいいんです」


「解決できる人を行かせられない時は?」


「んー、問題が起こっているところで、解決できる人を見つけます」


「解決できる人は、どうやって探すの?」


「周りに聞いてみたり、話せるなら話してみたりですかね」


「とてもシンプルだったわ。ありがとう」


「どういたしまして」


E組の問題は、E組で解決できる人間を探すこと。

そして、その人にお願いする、か。

でも、今はE組だけでも同じことが違うクラスでも起こるかもしれないわね。


「解決できる人間は多い方がいいわね」


「そんなに難しい問題なんですか?」


「え?」


声に出してしまってた。恥ずかしい。


「そうね。解決できる人が多くいたら嬉しいわね」


「ふーん。じゃあ、探す時にまとめて探したらいいんですよ。で、まとめてお願いするんです。1回で済みますよ」


なるほど。他のクラスにも潜ませておけばいいのね。

でも、どうやって探せばいいんだろ?

オニキス様に聞く?

さすがに難しいか。


家同士の繋がりもあるだろうし、お祖父様やお父様に聞いてみる?

でも、社交界での繋がりもあるだろうし、お母様が詳しいかな?


もういいや、夕食時に聞いてみよう。


「お姉様」


「なぁに?」


「夏休みは一緒に遊んでくださいね」


「分かっているわ。約束したじゃない」


「はい、楽しみにしています」


春休みは構ってあげられなかったからね。

お祖父様にも、家族で過ごすんだって約束させられたしね。

夏休みは、いっぱい遊びましょうね。


でも、事件が起きる日だけはごめんね。

その日は事件現場に行かなきゃだから。


夕食時に「学園で仲良くするなら誰がいいとかありますか?」と尋ねると、祖母と母に「やっと王太子妃としての自覚が芽生えたのね」と喜ばれた。


2人に喜ばれている理由はよく分からなかったが、父が「学園の成績と社交界での評判、性格を纏めた一覧表を数日中には用意する」と言ってくれた。

そこから自分で探せということだろう。


これで常識的な人を探せればいい。

折角のたった3年しかない学生生活なんだから、貴族とか平民とか関係なく楽しめるようになってほしいと思う。


土曜日は王宮で過ごし、日曜日に家に帰ると貴族令嬢の一覧表が用意されていた。


仕事早すぎる……そして、何枚あるの?


一覧表は、在学生と在学生以外があり「あれ? これって学生関係なく仲良くしろってこと?」と、悪手を選んでしまったと後悔した。


そうかー、これって自分の味方を増やすってことだから、派閥作りなのかー……

側近候補を選ぶってことかー……選びにくい……


一覧表には、貴族派・王族派・中立派が色分けされており、「これ重要なのか……」と頭を悩ませた。

又、一口メモがあり、趣味や好きな物等が書いてあった。


そして、悲しいことに「E組に良さそうな人がいない」ということが発覚した。

「社交界に足を踏み入れるという代償を払ってしまったのに、得る物がないってどういうことよ」と、人知れず泣いた。






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