表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/65

 ルベルはすぐにタークの元へ走った。騎士団へ報告して増員を呼ぶためである。拠点に戻ると、タークは戦闘の準備をしているところだった。


「ターク隊長! ルベルです」

「おお、ルベルか。マナはどうした?」


 タークはおおよその状況は把握しているようだ。緊張感で分かる。


「先輩は分体守護者のところへ行きました。結界の確認のためだと思います」

「そうか。よし、まずは住民たちの避難からだ。できる限りこの拠点に集めろ」

「了解致しました」


 ルベルはタークの指示で住民避難に向かう。が、一つ気になることがあった。


「ターク隊長。他の騎士団員は、どちらに?」

「今外に出てるのが五組、こちらで待機が二組。外の奴らは、この状況だ。あまり期待するな。待機のもう一組は奥で静養中だ。とは言え、二人共、とても戦闘ができる状態ではない。戦力にはならん」

「と、と言うことは……」

「そうだ、俺とお前たちだけしかいない。まあまあの絶望的な状況だ」


 タークは明るく親指を上に向ける。ルベルはとんでもないことを聞いてしまった。てっきりみんなで力を合わせて戦うものだと思っていた。


「心配するな。まずは前線で俺がある程度食い止める。お前は後方で住民避難を頼む。ここの住民たちはタフだ。訓練もされている。避難が終わったら助けに駆けつけてくれたらいい」

「わ、分かりました」


 ルベルは住民避難が終わったあとのことは考えないようにした。先のことはどうなるか分からない。とりあえずここは住民避難に専念しようと心に決めた。


「ルベル、分かったな。ならさっさと住民避難に向かえ!」

「りょ、了解致しました!」


 ルベルは拠点を出て、街の広場へ向かった。有事の際はまずは広場に集まり、騎士団が用意した避難所へ向かうことになっている。広場にはもう既にかなりの住民が集まっていた。


「遅くなりました。騎士団の者です!」


 ルベルが広場で住民に声をかけると、思ってもみない声が返ってきた。


「騎士団だと? たった一人で何ができる? 他の団員は何をやってるんだ!」

「そうだそうだ、俺たちの高い税で暮らしてるんだから、こういう時に役に立たってもらわないと困る」

「あの魔物たちは何だよ? お前たちがしっかりと守らないからこうなるんじゃないか! お前たちの責任だ。お前たちで何とかしろよ」


 よく見ると、声を上げているのは反対派の集会をしていた奴らだった。この期に及んで、騎士団批判とはおめでたい奴らだ。まずは自分の命を優先するものではないのか。騎士団を批判しても魔物は帰ってくれない。そんなことも分からない奴らのために、自分たちは命をかけて戦っているのかと思うと、馬鹿馬鹿しくなる。


「うるせぇー!! 命が惜しけりゃ、まずはその口を閉じろ。騎士団はもう俺しかいない! 分かったか。これが現実だ。それに今魔物がこっちに来ないよう、戦ってる騎士団も一人だ。お前たちのクソみたいな頭でも分かるだろう。絶体絶命ってやつだ! 分かった奴からとっとと避難を開始しろ! 万が一にも生き残れたら、このルベルがお前たちの話を聞いてやる!」


 ルベルが叫ぶと、声を出していた者たちが静かになり、住民たちは雪崩れるように避難場所まで走り始めた。


「押すな! 子供もいるんだ。子供たちを優先しろよ」


 ルベルは、住民たちが一人残らず避難したのを確認するまで誘導を続けた。最後の住民が避難を終えると、一気に疲れが押し寄せてきた。


「ったく。人間ってのは馬鹿ばっかりだな」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ