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異世界。この物語の世界はいわゆる異世界である。細かな説明は不要だろう。誰もが知るあの異世界である。
ここに一人の女がいた。名をマナと言う。彼女は勇者に憧れる、どこにでもいる普通の娘である。否。ひとつだけ変なところがあった。それは、極度の魔物好きであった。本来であれば、魔物は恐ろしくて近づくのが怖い存在のはずなのに、彼女に至ってはそれが『可愛い』となる。なぜそうなるかは分からない。彼女が生来持って産まれた癖なのか、後天的に培われた癖なのか。真相は闇の中である。とにかくマナは小さい頃から魔物を愛していた。
無論、魔物に近づくのは危ない。怪我をするかも知れない。もちろん、命を落とす危険もある。だが、マナは諦めなかった。体術、剣術、魔法。全てにおいて誰よりも訓練し、そして誰よりも強くなってしまった。全てはそう、魔物と戯れたいがためである。