あなたのために言っているのよ
僕は本が好きだ。
本に携わる仕事に就きたいと思っていた。
高校生になった。そのころには既に夢も出来ていた。
作家になることだ。本が好きなあまり、本を書きたいと思うようになった。だから毎日ノートPCを立ち上げ、小説を書いた。
いつかの事だ。
父親に言った。
「父さん、本屋さんでバイトしたいんだけどいいかな」
「いや、君にはな、人と関わる仕事をしてほしいんだ。例えば飲食店とか」
「本屋さんも接客とかするよ?」
「いやいや、あんなの全然しないだろう。接客業の方が将来役に立つよ」
「でも……」
「君のために言っているんだから」
僕はこれ以上踏み込もうとはしなかった。
ある日、母親に言った。
「母さん、僕小説家になるよ」
「無理なことを……」
「大丈夫だよ」
「そんなこと言ってないで勉強しなさい」
「……」
僕は知った。親は、子供の夢なんて応援していないと。ネットとかで見るのは、恐らくごく少数の人間なんだろう。
表面上では応援しているように見せかけても、中身はなにも応援していない。
子供がやりたいといったことは、否定する。可能性を狭めている。
安定する職。なんだそれは。やりたくもないことに何故やろうとしなければならない。
夢とはなんだ。それは夢に過ぎないのか。実現できないのか。では何故夢がある。
生き辛い世の中だ。
親は絶対。子供にはかなわない。だから、何も言い返さない。
僕は、台所から包丁を取り出し、親の前まで来た。
そして、それを首元に……。




