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体育祭(5)

公開設定を一日ずらしていました・・・私の手違いです。申し訳ありません・・・


まあ以前2話同時公開したので、話数はあってるのですが・・・同じミスを繰り返すという情けなさに泣きそうです。

久しぶりの感覚だった。体力がギリギリになるまで、なんて、久しく走っていなかった。


それなのに、飯島たち3人を焚きつけて。後ろには、僕を信じて何も言わずについてきてくれている野島がいる。


夕には駅伝の方が合っている、なんて、姉に言ったことがあったけど。


この湧き上がる気持ちを考えると、僕も意外と駅伝をやってチームのために走ると言うことも嫌いじゃないのかもしれない。


でも何より。


走るって言うことは、それだけで、なんて自由で、楽しいことなのだろう。


「朝陽!頑張れ・・・!頑張れ・・・!!」


14キロ過ぎ。女子の4−5区中継地点を過ぎたところで、姉の声が聞こえる。


今朝までは、進路のことや美織のことで随分と怒っていたのに、ちゃんと応援してくれているらしい姿に、思わず笑いそうになる。


認めよう。


僕の親愛なる姉は、いつだって僕よりも才能があって、憧れだった。


でもそれ以上に、僕は彼女の応援を背に走ってきたのだ。いつだって、その声援に力をもらってきた。


通り過ぎた今もこっちを見ているだろう姉に見えるように、片手を突き出して、親指を立てる。


「・・・さあ、野島行こうか。後、5キロだ」



ーーーーー




『残り7キロとなる中継地点を越えてから、先頭の陸上部3人はペースが落ちました。もちろん、この斜度の大きな上りと言うことも大きいでしょうが、何より後方とは2分近く離れていますから、この3人での勝負という意識でしょうか』


夕は中継地点で朝陽の姿を見送りながら、ラジオ放送を聞いていた。もう、雫は6区の中継地点に向かっているのでここには居ない。


でも、彼女のことだから、この上りの頂上にある中継地点でラジオ放送を聞いているのだろうけど。


「頑張れ、朝陽」


誰にも聞こえることのない声援を、もう一度こぼす。私の声援が届いていたのは、朝陽のサムズアップを見ても間違いない。


いろいろな事があって、お互いギクシャクしたままだけど。でも、私は朝陽の走る姿が大好きだ。彼は、私のレースを見て、最後まで諦めず前を追うところが好きだって言ってくれたけど。


「・・・その走り方を教えてくれたのは、あんたよ」


いつだって、最高の結果を求めて立てた作戦を、豊富な練習量と、ここ一番の心の強さで実行してきた彼だから。そのレースに、何度も勇気をもらったから。


彼の今日の作戦は聞いていない。でも、考えそうなことはわかる。だから。その挑戦に、何度でも声援を送りたい。


「・・・頑張れ!」




ーーーーー




『・・・17キロ地点!まだ一波乱ありそうな気配が漂ってきました!』


『登坂口では2分近くあった、先頭と7組鶴見選手・野島選手との差ですが、見る間に詰まってきています!17キロ地点での差は46秒!・・・そろそろ、カーブのたびに前の選手が見えているかもしれません。土屋先生、鶴見・野島両選手の様子はどうでしょう』


『・・・鶴見くんは、これは野島くんを勝負の舞台にあげるために走っています。ここまで、地形も距離も関係なく、ペースがほとんど変わっていません。一度も野島くんに牽かせずに、です』


『ということは、頂上になる6区中継地点、19キロあたりまでに先頭に追いつこうとしている、ということでしょうか』


『そうだと思います』


『・・・ああ、こちらからも4番手の鶴見選手の表情が見えます!美しいフォームですが、ちょっと顔色、というか血色が悪いでしょうか』


『もう体力的に限界でしょう・・・』


『今回のレースは、もちろんペースメーカーを禁じるルールは設定されていませんが、まさか体育祭でここまで振り切った力走が見られるとは思いませんでした・・・!』


『・・・教育者としては、指導者としては。こんなレースをしちゃダメだと。叱らないといけないのでしょうが・・・行けるところまでやってみてほしいという気持ちも、ありますね』


『ただ、この様子を聞きつけた6区中継地点は、大きな盛り上がりを見せています!頂上まで、残り1キロ!その差は20秒!!』




ーーーーー




俺の前を、鶴見が牽いて走っている。もう、18キロ以上になる。


苦しいだろうに、一度も後ろを振り返らず、俺のペース配分まで完璧に制御して。


凄いやつだ。


こいつが、姉と比べられるってだけで、評価が低いなんて事が信じられない。


こいつは凄いやつなんだ、と叫んで回りたいくらいだ。こいつは喜ばないだろうけど。



ああ、頂上だ。


肩を叩かれた感触とともに、目の前が急に開ける。


ずっと前にいた鶴見が、道を譲ったのだと気付いたのは、3番手の選手に並びかけてからだった。


そうだな。ここからは、俺が。


俺は、鶴見を真似て、後ろは振り返らず親指で激励を送った。




ーーーーー




『・・・頂上地点、ついに追いつきました!これが、予定通り!4番手の鶴見選手は、野島選手の肩をポンと叩いて、少しフラッとしましたが、大丈夫です!スローダウンしましたが走り続けます。・・・変わって4番手に上がった野島選手ですが、サムズアップで鶴見選手の健闘をたたえ、すぐに下りの戦いに身を投じます。・・・一気に行きます、3番手に上がりました!!』


追いついた。自分のことながら、まさか本当にここで追いつけるとは思わなかった。


思い返せば、飯島たちが前半にかき回して先頭が疲弊したこと。


瀬下の機転で、12、3キロ地点で一息つけたこと。


野島が僕を完全に信頼して19キロという旅路を一緒に来てくれたこと。


それらすべてが、この大博打の成功に一役買ったと思う。どれか一つでも欠けたら、達成できなかった。


何より、沿道の声援。中継地点を通るたびに、クラスメイトだけでなく、みんなが大きなサポートをくれた。あれだけ、背中を押されたら、頑張らなければという気持ちになってくる。


でも、これでお役御免だ。あとは、2キロ弱の道のりを、道に沿って、下るだけ。


そう、思っていたのに。


「鶴見くん!ゴールまで、あと、ちょっとだよ!!」


耳に飛び込んできた雫の声に。そうだ、ゴールしなきゃ、なんていう当たり前の気持ちが湧いてくる。もう、作戦は遂行したから、完走なんて諦めていたのに。


6番手は、まだ2−3分は後方だろう。もうクタクタだけど、1キロ1分食いつぶしていいなら、順位キープなら出来るかもしれない。夕にも、大量にポイントを稼いでくるなんて言ってしまったし。


・・・そうな風に、諦めない理由ばかりが積もってきて。


もうちょっとだけ、足掻いてみようと思った。


お読みいただきありがとうございます。励みになりますので、ブックマークやコメント・ご指摘など、よろしくお願いします。感想などもいただけましたらぜひ参考にさせていただきます。

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