持つべきものは親友(恭平視点)
適当ギャグ回です。
「助けてくれ!親友!」
俺は、そう叫びながら「ツインズ」の扉を開く。
前回の試験で赤点を食らったため、放課後1時間の強制補修となっており、さらに部活にも出られないため、相対的に早い時間に学校を出た。
しかし、出がけに演劇部の顧問から、「次赤点だったら三者面談」という恐ろしい通告を受け、試験一週間前のこのタイミングで、親友であるところの朝陽に助けを求めにきたのだ。
朝陽は、面倒見がいいので、忙しい仕事の合間にも、なんだかんだ勉強を見てくれる。
去年も、テスト前の数日は何度となくお世話になった。
「いらっしゃいませ・・・なんだ、恭平か」
「なんだとはなんだ!勉強教えてください!」
「まずは注文をしてください」
「ブレンドコーヒーとタコライスで!勉強教えてください!」
「・・・お料理承りました。カウンター席でお待ちください」
「勉強教えてください!」
・・・朝陽がすごくめんどくさそうな顔でこちらを見ている。
いや、これはいける。経験上、壊れたラジオのようにあと20回ほど頼めば、注文した料理分の勉強は教えてもらえる。そのためにわざわざ比較的単価の高い料理を注文したのだ。
「・・・恭平、お前、なん手慣れてきたな」
「当たり前だ!何度頼ってきたと思ってるんだ!勉強教えてください!」
「わかったから、あんまり騒ぐな。お客さんいるんだから、迷惑だろ」
そう言われてあたりを見渡すと、常連のおばちゃん(吉田さんと古川さん)がニコニコしながら、「仲がいいわねえ」なんて手を振ってくる。
あのおばちゃんたちは優しいから好きだ。こっちも思わず手を振り返す。演劇部仕込みの、英国王室式お手振りだ。
どうやらウケたらしく、おばちゃんたちがニコニコからウフフフ状態に変わった。もうちょっとネタを続けると、オホホホ状態に進化するのだが、今日はやらない。
ある程度の反応に満足した俺は、さらに店内を見回す。すると、この店にしては若めの四人組が目に留まる。
「おい、朝陽」
「なんだ」
「あれ、橘さんたちじゃん」
「ああ、最近、勉強を見てるんだ。俺のせいで赤点になっちゃったみたいでな」
この男はどうやら、俺の知らないところで、女性陣とよろしくやっていたらしい。
「かーっ、学年一位はモテていいですなあ」
「いや、そういうんじゃないから」
「でもよ、俺誘ってくれてもよくね」
「でも恭平勉強嫌いじゃん」
「嫌いだけど!女子との勉強会は別じゃん!」
「勉強会だろ」
「違うじゃん!お前そういうとこだぞ!わかってんのに気を回さねえから友達いねえんだぞ!」
「お前以外には気を回してるよ」
「俺にも回せよ!親友だろ!」
「親友って、言わなくても通じるもんだろ」
・・・ヤバい、ちょっと心が揺らいだ。朝陽が親友って認識してくれてることとか、不意打ちずるい。なんなんその笑顔。惚れるぞ。
「・・・そ、そうだよな!親友だもんな!」
「ソウダネ」
あ、違うわ、こいつすぐに目から光消しやがった。あしらわれただけだわこれ。
「・・・全く、お前ってやつは。俺じゃなかったら友達やめてるとこだぞ!」
「え、やめんの?店が静かになって嬉しいけど。お帰りはあちらです」
「やめないけど!なんだお前!」
なんでこいつは俺といる時だけこうなのか。普段はクールな感じなのに、たまに全力でボケ倒してくる。
まあ、だいたいそういう時は機嫌がいい時なので、今日はかなり機嫌がいいんだろう。
というか、ここ最近ずっと、朝陽は機嫌がいい。多分、学校でもようやく鶴見姉と話せるようになってきたからだろう。
なんだかんだ言って、こいつは鶴見姉のことをすごく気にかけている、いい弟なのだ。
「はあ・・・恭平、で、勉強だっけ」
「おう!勉強教えてください!」
「悪いが店がちょっと忙しいんだ。母さんが帰ってくるの遅くなるみたいでな」
お、そうなのか。まあ確かに常連だけで満席ほどではないとはいえ、客は多いし、今日は忙しいのかもしれない。
「ちょっと待ってろ」
出直すか、と考えていた俺を置いて、朝陽は橘さんや鶴見姉のテーブルに向かっていき、何か話した後、すぐに戻ってきた。
「よし、話をつけてきた。今日は夕と関さんが教えてくれるらしい」
「・・・あなたが神か」
「お前んちキリスト教だろ」
「めっちゃ勉強するわ」
「おう、そうしろ。夕に変なことすんなよ」
「しねえよ!したらお前に殺されんだろ」
「おう」
「・・・マジのやつじゃん、こえーよ。まあ、いいや。ありがとな!」
そういって、俺は鶴見姉の元に向かう。正直、あまり話したことはない上に、ちょっと高嶺の花なので気後れするのだが・・・。
「あら、伏見くん、いらっしゃい。いつも朝陽と仲良くしてくれてありがとうね」
「お、おう。いや、こちらこそ。勉強、よろしくな」
「ええ。朝陽の頼みですもの。ああ、それと。ずっと言いたかったことがあるんだけど」
「お、なんだ?」
意外と気さくに話をしてくれる様子に、ちょっと安心する。他の3人も、にこやかに迎え入れてくれ、橘さんが椅子を追加してくれる。
「朝陽にエッチな本貸すのやめてくれる?」
「・・・ぅおんっ!」
おい、鶴見姉!いきなり何を言い出すんだ!痛い!他の女子の視線が痛い!橘さんと関さん、なんかちょっとイス引いて距離取らないで!
「いや、あれはなんというか、男同士の・・・」
「男の子がそういうのに興味あるのはわかるけど、伏見くんのチョイスはマニアックすぎると思うの」
はうぅっ・・・!なんだ、ずっとそっちのターンか!崔さんめっちゃニヤニヤしてる!やめて!いじらないで!ていうか朝陽!お前ちゃんと隠しとけよ!
あ、あいつカウンター裏に隠れやがった!そういうことじゃねえよ!出てこい!
ていうかなんだ!鶴見姉弟、俺に対して対応雑すぎない!?
「流石に、じょそ・・・」
「勉強教えてください!あ、飲み物いりますか!自分ご馳走します!」
言わせないぞ!もうバレてるけど、俺のちょっとした性癖をバラされたらたまったもんじゃない。いいじゃねえか、ちょっと興味本位で買っただけなんだ!
4人分の飲み物は痛い出費だが、まあ勉強を教わる代金と思えばいいし、話がそらせるなら・・・って、アレェ、橘さん俺がいう前からメニュー見てたよね?鶴見姉に至っては既に注文決めて朝陽を呼んでるし。なんなの君らの連携。
あ、やめて!その無駄に高いコーヒーはやめて!あなたたち香りとか味とかわからないでしょ!
お読みいただきありがとうございます。励みになりますので、ブックマークやコメント・ご指摘など、よろしくお願いします。感想などもいただけましたらぜひ参考にさせていただきます。




