戦いの後には・・・
「「終わったー!」」
火曜日の午後。クラスには試験終了を祝うクラスメイトの声が響く。私は、両隣の鶴見姉弟の対照的な表情を横目で伺う。夕は、なんだか難しそうな表情。一方で、鶴見くんは、すごく落ち着いているというか、なんだかスッキリした表情をしている。むむむ、これは夕のコンプレックスが発動するかしらん。・・・などと邪推していると、珍しく夕から鶴見くんに話しかけた。
「朝陽、なんだかやり切ったみたいな表情じゃない。手応えあった?」
「ああ、夕か。そうだね、準備したことは全部やれた感じかな」
「じゃあ、今回は僕とも良い勝負になるかな?」
二人の会話を聞いていた石間君が話に混ざる。彼も去年はトップ10の常連で、鶴見君より少し上だったらしい。去年の成績だけで行ったら、このクラスの中でトップだ。どうやら彼は夕のことが気になっているみたいで、去年も何かと弟の鶴見君に絡みに行っていたと、おんなじクラスだった子達から聞いたことがある。
まあ鶴見君は、石間君のことは相手にしていないというか、あしらい続けていたみたいだけど・・・。
「そうだね、今回は本気でやったから。みんなの成績次第なところはあるけど、僕の点数だけで言えば、確実に過去最高点だと思うよ」
「それは、大した自信だな。ただ僕だって、平均で80点は堅いからな、また掲示板で勝負しようじゃないか。鶴見さんも、楽しみにしてますよ」
そう言って満足げに去っていく石間君を見ながら、私は鶴見君の発言を思い返す。
本気でやったから、最高点だと思う。
すごい。
成績が良いことが、じゃない。
この試験を本気で頑張ったことを隠さない。その上で、かえってくるだろう結果に絶対の自信を持っている。
むしろ、余裕があって落ち着いている。
私だったら、「そこそこ頑張った」、とか、「もしかしたら良い結果かも」とか、予防線を張ってしまいたくなる。
でも、鶴見君はそれをしない。
自分が頑張った分は、自分をちゃんと認めてあげる。その上で、結果を受け入れる覚悟をしている。
たかがテスト、だけど。そういう小さなところにも、彼の精神面が成熟していて、充実していることが感じられる。
「・・・やっぱりイケメンすぎるわ」
思わず漏れたつぶやきに、話を聞いていたのか涼子が「わかる」とうなずく。
「なんつーかさ、鶴見君、凄いよね。頑張るって、ちょっと恥ずかしかったり、特別だったりする気がしちゃうんだけど。彼、全然そんなこと思ってないみたい」
「そうだよね。多分、いっつも頑張ってるから、それが当然なのかも」
「どっちかってゆうとさ、まああたしの予想でしか無いんだけど、それがかえって頑張る秘訣なのかも。認めてあげないと、しんどいじゃん。頑張るのって」
なんだか、実感のこもった涼子の言葉にハッとする。
彼女は、割と内向的だった性格を変えようと、見た目だけじゃなくって自身の意識改革に至るまで、かなり頑張ったと聞いている。頑張る、っていうだけなら簡単そうだけど、その大変さを身を持って知っているからこそ、なのだろう。
そんなことを考えていると、鶴見君が夕と話している声が聞こえてくる。何気に、学校内で二人が話す最長記録なんじゃ無いだろうか。
「ちなみに、夕はどんな調子?」
「・・・まあ、朝陽に比べたらちょっとあれだけど、うん、悪くなかったわ。多分、結構いいともまで行けると思う」
言葉を選びながら、慎重に。でも、そこにはやっぱり頑張った自信も見てとれて。
「・・・そう。よかった。夕が頑張れたのなら、本当に」
そう言って笑う鶴見君の横顔に、私は思わず見とれてしまった。
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