3冊目 『キッチン』 吉本ばなな氏
3冊目です。よろしくお願いいたします。
『キッチン』 吉本ばなな氏
80~90年代にかけてベストセラーになった有名小説。
私と同世代の文学好きアラフォーは、半数以上が読了していることに賭ける!!
あらすじをざっと書かせていただく。
『祖母に死なれ、天涯孤独になった女子大生のみかげ。生前の祖母と交流があった大学生の雄一に誘われ彼と彼の親のえり子と同居と同居することになった。彼女は心の拠り所であるキッチンと優しい人たちとのかかわりで、少しずつ生きる力を取り戻していく』
高校生のころに最初に読んだ感想は、綺麗な小説だなという印象だった。書かれている内容は決してお気楽ではない。登場人物にはそれぞれ抱えているものがあり、どこか死の影がこびりついている。
しかし、それでも書かれている情景も相手を思いやる心も、そして文章もとてもとても美しかった。
私も数年前に父を亡くしている。すでに大往生と言われる年齢だったとともに自宅介護も10年を超えていた。そのため通夜や葬式の段階では、悲しみよりはやり切ったというのが正直な気持ちだった。
しかし、最近三回忌を迎えたが寂しくて仕方ない。ふとした瞬間にもう父に会えないという事実に茫然としてしまう。仏壇の前で、思わず泣いてしまう回数も増えた。
これは、私がようやく父の死を頭ではなく心で消化し始めたのだと考えている。
主人公のみかげも祖母の死を受け入れるのに、やはりしばらく期間を要している。大事な人の死は往々にして突然訪れる。
しかし、別れは決して突然ではない。
故人の生前の思い出を、残された人たちが想いに昇華させていく。そしてゆっくりゆっくり逝くのだろう。
話は変わるが、作中には何度も美味しそうな料理が出てくる。アサリの酒蒸し、バナナジュース、キャロットケーキ、etc.
特に続編『満月―キッチン2』の終盤に出てくるカツ丼の描写は、まさしく元祖飯テロだ。夜中に読んでしまった当時の私は、すきっ腹に涙にしながら次の日の登校のため布団にもぐりこんだ。
本書に関しての思い出をもうひとつ。
私が社会人になってしばらくして、読書に目覚めた妹からおススメの本を聞かれた。
「ラストがハッピーエンドで、ギャグやコメディじゃなくて悪人が出てこなくて、恋愛が主体じゃなくて、深く考えさせられる小説ない?」
ハードル高すぎだよ、と内心毒づきつつ高校生だった頃を思い出し本書『キッチン』を貸した。
妹は大変気に入ったようである。
「面白かった。また、おんなじような小説貸して~」
無茶を言うな妹よ。こんな奇跡みたいな物語、そんなにホイホイあってたまるか!!
エンタメや娯楽小説が好きなので、シリアス系のおススメ本のストックが少ないです(;^ω^)
精進します!
誤字脱字報告ありがたいです。
感想や星もぜひ!
それでは次作でお会いできるのを楽しみにしています(*^▽^*)