その9
「こら! あまりはしゃぐなよ」
鳥越から睨まれて瑠璃は舌をだす。
「わかってますってば。それより先生、もう掘っちゃってもいい?」
背中からピックアックスを取りだすと、鳥越が慌てた声をあげた。
「待てまて、きちんと確認してからだ。おい、無事上側まできたがどこを掘ればいいんだ?」
鳥越が彼方へ指示を仰ぐ。返答はすぐにあった。
『お疲れ様です。掘る地点ですが、下を見てピンク色の光が多く集まっているところがありますか?』
彼方の言葉に瑠璃は城ノ介と下を見おろす。
吸い込まれそうな星空の中から、すぐ間近に薄桃色の輝きが点在していた。
(すごーい!)
浮かれて飛び跳ねていると、城ノ介も同じように興奮した様子で笑いかけてきた。
「すげーな、これ」
「うん」
大きく頷くその横で鳥越の声が響く。
「右斜めの中間あたりに集まってるな。あそこを掘ればいいのか?」
『はい』
「わかった。ほらお前たちふざけてないで。掘るぞ」
了解の意を示した鳥越が不機嫌そうな声音で告げてきた。
『ほーい』
城ノ介と二人で答え、今度こそピックアックスを取りだす。ピンク色の光が集まる場所まで行き掘りはじめた。だが、隕石は思った以上に硬い。なかなか掘り進めることができず、次第に手がしびれてきた。
「かったーい! なんなのさ、これ!」
「文句を言うより手を動かせ!」
つい口にでた不平へ鳥越の激が飛ぶ。本気じゃないのに、とむくれていると、黙々と作業していた城ノ介がおもむろに顔をあげた。
「鳥越先生、俺なんかやたら暑く感じるんだけど」
「暑いのは俺も一緒だ」
「そうだよ、あたしだって暑いんだから」
慣れない重労働でスーツの中が蒸れていて暑苦しい。帰ったらシャワー浴びたいな、などと思いながら手をとめて城ノ介を見ると、鳥越も顔をあげてきた。
「力仕事をしてるんだ。あたりまえだろう。……って、ん? 待てよ?」
「え?」
突然固まった鳥越の視線を追う。
(へ?)
太陽がいつの間にか先刻より近くなっていた。




