その1
「内線と校内放送よりメールのほうが早いとは思わなかったねえ」
「当たり前じゃないか。一斉送信だもんさ」
感心したように携帯を眺める七海へ瑠璃は肩をすくめてみせる。
「けどすぐに思いつくってとこがさすが俺の小山内だよなあ」
「あんたのじゃあない」
馴れ馴れしく肩へ触れてくる城ノ介の手を叩き落とすと、城ノ介が悲鳴をあげた。
「いてっ!」
「大丈夫か、城ノ介? 腕にヒビ入ってないか?」
彼方が淡々とした声音で城ノ介の手をとり確かめる。
「ああ、なんとか……」
「あんたたち、あたしをなんだと思ってんのさ」
わざとらしく手を擦る城ノ介を睨んでいると、七海が割って入ってきた。
「まあまあ。それより瑠璃ちゃん、これからどうするの?」
「どうするもこうするも、あとは先生たちに任せるしかないじゃないさ」
腕を組んで七海を見ると、七海が不満げに眉根を寄せる。
「えー、なんか瑠璃ちゃんっぽくない」
「本当だ。なんか変なもん食べたか?」
「違うよ、お腹空いてるんだよ。頭痛のせいで朝から何も食べてないんだから」
城ノ介が心配げな様子で顔を覗き込み、その横で彼方も小さく吐息した。
「ちーがーうー!」
瑠璃は目を吊りあげて三人を見る。すると七海が顎に人差し指をあてながら、でも、と首をかしげてきた。
「らしくないのは本当でしょう?」
「瑠璃、何か考えてるなら話してみなよ」
どうやらこれ以上隠していても無駄なようだ。
「あんたたちはまったく! しかたないなあ」
瑠璃は組んでいた腕をほどき三人を見回す。人差し指をくるくる回しながら慎重に口を開いた。
「あの物質要素がなんなのかはまだ不明だけど、人体に有害なのは明らかさ、そうだろう?」
「そうだね」
「それで?」
彼方が頷き、城ノ介が先を促してくる。瑠璃は回していた指をとめ、三人の顔をひたと見据えた。
「あたしの見たところ、今までの配色じゃあうまく相殺できないと思うんだ。もっと別の特別な色、たとえば反物質要素が入ってる石から抽出された色のシールドで殺人物質要素を包まないとさ」
「確かに」
まだ曖昧なままの考えをどうにか告げると城ノ介が同意してくれる。内心でほっと息をついていると七海が訊いてきた。
「でもどうするの?」
「わかんない。けど、とにかく行動してみないといけないと思ってさ」
瑠璃は再び腕を組み七海の問いに答える。
「具体的には?」
冷静な声音で尋ねてきた彼方を前に、瑠璃は一瞬沈黙した。バラバラになっていた思考をまとめ結論を告げる。
「つまり、早い話が外へ出ちゃって自分たちで探そうってこと」
「それって、まさか……」
想定外のことだったのだろう。瑠璃は目を見開く三人にくすりと微笑み、大きく頷いた。
「そう! 宇宙へいこうって話だよ!」




