その15
「座標位置Hの八十三。シールドを飛ばします! 彼方、にっちゃん、あとお願い!」
「OK!」
「一班、シールド展開します!」
彼方と城ノ介が天井へ飛ばされた半透明のシートを両サイドのクレーンからキャッチして引き延ばす。ほどなくしてシートが消えドーム型スクリーンに画像が映し出される。
「え! は、早い!」
笹西が慌てている間に天井のドーム型スクリーンへ綺麗な深緑の湖畔が浮かびあがった。
『殺人物質ノ相殺ヲ確認シマシタ』
人工頭脳が無機質な声で結果を伝えてくる。
「くっ!」
笹西が悔しげにうめくのが聞こえたが、文句を言うより先に七海が抱きついてきた。
「やったね! 瑠璃ちゃん!」
「うん。ありがとう、みんな!」
創作ポットから降り七海や彼方たちとハイタッチしていると、高須磨の声が聞こえてきた。
「一班、見事な結界と展開でした。新しい試みを続けるのはより良い結界を展開するのにもいいことです。これからもがんばってください」
『はい!』
高須磨の賛辞が嬉しく声を揃えて首肯していると、向かいの創作ポットから降りてきた笹西が怒鳴ってきた。
「何よ! あんなのまぐれよ! 本番ではそうはいかないわ。相手が機械だったから目新しいことをされても対処できなかっただけよ!」
言いがかりも甚だしいことを言われ瑠璃はむっとする。
「それなら機材自体がフリーズするはずでしょーが」
高須磨の手前冷静に反論したが、笹西には通じなかったようだ。腕を組み厭味ったらしく鼻を反らしてきた。
「これに勝ったからっていい気にならないでちょーだい! どうせお父様に泣きついてこの機材を調整してもらっただけのくせに!」
「な! あんたねえ!」
瑠璃は目を剥いた。いくらなんでもそれはない。そんな情けない頼みを死んでもあの父にするものか。カッとなり手を振りあげる。だが次の瞬間、校内アナウンスが響いてきた。
「校内にいらっしゃる先生がたにご連絡いたします。至急、職員棟までお集まりください。繰り返します。校内にいらっしゃる先生がた――」
瑠璃はアナウンスに驚き腕をおろす。いったい何があったのだろう。緊急を要することだとは思うが。
「あ!」
瑠璃は昨日彼方が言っていた未知の反物質要素のことを思いだし、うめく。
(こんなバカに構ってる場合じゃないっての!)
勢いに任せて彼方を顧みると、彼方が深く頷いてきた。
「いくよ!」
「ほらほらみんな、とりあえずは落ちついてここに……。あ、こら! 小山内君! 待ちなさい!」
高須磨の怒号にも振り返らずシミュレーションルームをでると、文句も言わず複数の足音が後をついてくるのがわかった。




