no.8
あれから、
季節はいろいろ移り変わった。
ユナはダイガクって言う所に、行くことになったんだけど、
ヒトリグラシってやつを始めなきゃならないらしい。
そう、ユナは教えてくれた。
僕は、そのとき、何もわかっていなかった。
ユナに頭を撫でられていた僕は、
そのことが嬉しくて、尻尾を振った。
ユナはそんな僕を見て、
寂しそうに微笑む。
ある晴れた日、ユナは大きなバックを抱えて、
僕の頭を撫でた。
「ライン。行ってくるね」
僕は「早く帰ってきてね」と、ユナの足の辺りに絡みつく。
ふと、顔を上げると、
ユナの目には、いっぱいの涙が浮かんでいた。
――そして、僕は知る。
ヒトリグラシって言うのは、
ユナがおうちに帰ってこないってことなんだって。
僕は、ユナを待った。
ユナがくるのを待った。
雨の日も、風の日も。
僕はユナのことを、ただただ、待っていた。
「ライン! ただいま! 」
そう言って、僕の頭を撫でてよ。
僕をぎゅっと抱きしめてよ。
そのあと、散歩に行って、色んな景色を見ようよ。
公園に着いたら、あの黄色いボールを投げてくれる?
僕は風みたいに速く走るから。
だから、
だからそう、
早く、早く帰ってきて!!
さみしいよ。
会いたいよ。
ユナ、どこに行ってしまったの?
僕を置いていかないで。
僕のこと、嫌いになったの?
それなら、僕にそう言って欲しかった。
僕は、ユナの匂いがすっかりなくなってしまったサンダルに
ユナの面影を求める。
辛いよ。
苦しいよ。
切ないよ。
いつまで待っていれば、ユナに合えるの?
でも、それでも、
それでもやっぱり僕は、
一番、
この世界で
誰よりも
ユナが大好き。
――ユナ、僕はユナに、もう一度会うことができる?