no.7
うれしい!
嬉しい!!!
僕は公園を跳ね回った。
ユナはそんな僕を見て、目を細める。
ユナ! 僕、すごく幸せだよ!!
少し薄汚れてしまった、僕のお気に入りの黄色いボールを
ユナは空へ投げる。
ボールはゆるい放物線を描いて、飛んでいく。
僕はボールを追いかけて、
風のように走り出した。
早く。
一秒でも早く、ユナにボールを届けるために。
僕はユナと久しぶりに遊んだ。
ジュケンって言うのが終わって、
ハルヤスミって言うのになったんだって。
ユナは毎日僕と遊んでくれる。
僕は嬉しくて、嬉しくて。
楽しくて、楽しくて。
ユナに名前を呼んで欲しくて、
頭を撫でてもらいたくて、
大好き! って判ってもらいたくて、
いつもよりたくさん尻尾を振る。
僕のこの、ユナへの気持ちが
きちんと伝わるように。
ユナは僕の名前を呼んで、
まるで子犬の頃のようにきゅっと抱きしめた。
「忙しくて、あんまり遊べなかったね。
ごめんね、ライン。
私、ラインのこと、大好き!! 」
ほんと?
僕のこと、大好きなの?
僕は嬉しくて、ユナのほっぺたを舐めた。
尻尾も、さっきより勢いよく振った。
ユナが僕のこと、大好きだって!!
僕もユナのこと、大好きだよ!
あぁ、なんて素敵な日だろう!
僕、ユナのことが大好きで本当によかった!!
僕、この日のことは絶対、絶対忘れないよ!!
僕がもし、ヒトだったら、
きっと、嬉し涙を流すだろう。
あのときの、ユナみたいに。
昨日より、暖かくなった風が、
僕らの傍らを通り過ぎた。
もうすぐ、何度目かのハルの季節になる。
――ねぇ、ユナ。
本当に、僕のこと、今でも好き?