no.5
ユキが融けていって、気が付くと、かわいらしい緑の葉っぱが芽吹いた。
そう。ハルって言う季節になったんだ。
ハルの柔らかな風が、僕の鼻先をくすぐる。
甘い、花の匂い。
ねぇ、ユナ。
気持ちのいい季節だね。
お日様はぽかぽかしていて、
僕の黒い毛なみも、ほこほこの太陽の匂いになる。
僕は寝そべりながら、ふわぁっとあくびをした。
おかーさんはお布団を干し終わると、
「いい天気ね」と言って、僕の頭を撫でた。
そう。
とっても、とってもいい天気。
だけど、
僕はちょっと寂しかった。
ユナはショウガッコウって所から、
チュウガッコウって所に毎日行くようになった。
その、チュウガッコウって所に行くようになってから、
ユナの帰りが遅くなったんだ。
ガッコウから帰って来たら、僕との散歩の時間だった。
でも、最近はおかーさんが連れて行ってくれる。
おかーさんも、おとーさんも好きだけど、
僕の一番はユナ。
だから、ユナと遊べなくなって、僕はちょっと寂しい。
ガッコウなんて、行かなければいいのにって思う。
でもね、
僕、
お休みの日ってのがあるのを知ってるんだ。
その日はいっぱい遊んでくれるって、僕は知ってる。
だから、
僕はお休みの日を、とてもとても楽しみにしているんだ。
ユナが
「ライン、明日お休みだから、いっぱい遊ぼうね」
って言うと、僕は尻尾を思い切り振る!
僕はユナのこと、大好きだよって!
僕も明日が楽しみなんだよって!!
いっぱい、いっぱい遊ぼうって!!!
ユナ。
ユナ。
ユナ。
僕の頭の中は、きっとユナでいっぱい。
だって僕、ユナのことが、すごく大好きなんだもん!!
大好き! 僕の大切なユナ!
ねぇ、僕といつまでも、一緒に居てくれる?
僕、ユナのこと、すごく大切で、大好き!!!
――でも、ユナは僕のこと、どう思ってるのかな?
ハルの終わりを告げる、
爽やかな夏の風が、僕のひげを揺らしていった。