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第35話 部分と全体

 新たな器の材料。

 部品が正しく動くように修繕しているブリコルールだと……?


「亜央……やっぱりお前は……」

 侯和さんは、掴んでいた腕をそっと離した。

()()()()()()だな」

 侯和さんの言葉に、亜央はふっと笑みを漏らした。

 ようやく侯和さんを振り向く亜央は、顎を少し上げ、目線を侯和さんに落としながら答える。

「どんな手段だろうと、人一人助けられないお前に言われるセリフじゃないな」

「……亜央。じゃあ言うが、それはお前が描いていた、助けるの意味に合っているのか?」

「愚問だな」

 二人の目線が冷たく重なった。

 亜央は、冷ややかな目で侯和さんを見ながら、言葉を続けた。


「なあ……侯和。助けるって言うけどさ……俺はホーリズムって事で考えているから」


 ……ホーリズムって……その考え方はとても危険な考え方だ。

 人体を全体観で考え、その体の中にある臓器などを一つ一つの部分として見ていない。

 それは、それぞれの臓器が悪くなっているという事を考えていない訳ではないが、その考え方の相違は、部分の原因は全体にあり、全体が部分を侵食するという考え方であって、部分が全体を侵食していくという考え方ではない。つまり、全体が一つの病で、結果、それぞれの臓器を蝕み始める……何処かの臓器に問題があったからだとは考えていない。全体を診て病を認めているだけで、部分病理の追求はしないという事だ。


 新たな器……正しく動くように修繕しているブリコルール……。

 ホーリズムとして考えていると言うなら、そう答えたのも納得がいったが、そんな考えに頷く事は出来なかった。


「……なんだ。がっかりだな」

 僕は、そう呟き始め、亜央をじっと見た。

 僕の声に亜央の目線が、ちらりと向く。

 ……冷たい目だ。

 だが、呟き出した口は、止まらなかった。

「呪術医を集めて作った塔は、最も高い知識と技術、最も新しく、最もいい機材と人材を使っているのかと思っていた」

 皮肉に言う僕の顔を、亜央は冷ややかな目で冷静に聞いていた。

 僕は、亜央がどう思っていようが、構わず言葉を続ける。

「真逆じゃないか。古い、偏った知識に駆られて、一つも進歩していない。努力の欠片も見られない、自己の中だけの知識が最適だと閉塞している……まるで時が止まったような空間だ」

 僕の挑発的でもある態度に、貴桐さんがニヤリと笑みを見せたのが横目に映った。

 きっと、貴桐さんも僕と同じ思いでいたのだろう。そう思った。

 そして、血気盛んな丹敷は遠慮など見せずに、よく言ったと笑っていた。そんな丹敷に差綺は少し呆れていたが。丹敷の相手の感情を逆撫でし兼ねない笑い方に、ここで騒ぎが起きて欲しくないとも思ったが、僕も同じような行動だ。黙っている事が出来なかったんだから。


 亜央は何も答えず、僕に目線を向けたままだったが、髪をクシャクシャと掻くと、部屋に戻るように歩き始めた。

 亜央は、また僕たちを過ぎ去って行く。

「おい……亜央……! 話はまだ終わっていない」

 侯和さんが亜央を呼び止めるが、亜央は出て来た部屋の前まで進むと立ち止まり、僕たちを振り向いた。

 亜央は扉を開けると、僕に答えるように目線を向けた。


「じゃあ……君が言う、時が止まった空間……見てみるといいよ。どうぞ、入って」

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