第28話 選ばれた者と選ばれなかった者
選ばれた者と選ばれなかった者。
僕は、その中にある深い意味を感じていた。
選ばれた者は選ばれた余韻に浸る時が過ぎれば、失う時を怯え始める。
自分の力不足を感じる時が来たら、そう恐れを抱くのだろう。
ようやく掴んだその瞬間を、維持する為に使う精神力は、常に恐れとの闘いなのだろう。
それでも手にしたいと願うのは、自分の限界を越える為に必要な事なんだ。
手に掴んだ枝が撓う。
どのくらいの力を込めれば折れるのだろう、どれ程の力を使えば敵うのだろう。
触れる事さえ叶わない相手に挑む決意は、不安など抱えている暇などない。
生きるという意味を証明出来るのは、自分自身の意思にあって、目的を達成する為の動力は決意にある。
その思いが幾つも重なって、満ちていく。
一人じゃ出来ない事も、みんなの力を合わせれば……。
『思いの強さを知りたいのです』
……綺流。
そんなに僕を試したいなら、試せばいい。
僕の思いは変わらない。
来贅を倒す。
誰もが平等に生きる事を許されて、治る病も治るという希望を捨てさせはしない。
例え治らないと分かっている病でも。
僕は……。
『治せないものは治せないんだよ』
延命治療を否定しない。
それでも生きていて欲しいと願うのは、その姿を大切に思っているからなんだ。
そして奇跡が起きたなら。
その神秘に縋っても、最善を尽くしたといえるのだろう。
「全ての宿木を……倒す」
貴桐さんの声と、彼の手に力が加わったと同時に、僕たちの手にも力が入った。
だけど、たった一人の力だけを頼るより、そこに集いし者たちの力を合わせたら……。
枝は、折れる。
弾け飛ぶ光が辺りを包んで、真っ白な空間を作った。
僕はその真っ白な空間の中で。
僕とそっくりな顔の……綺流を見た。
静かな笑みを見せる綺流の口元が、僕に何やら呟いたが、その言葉は聞き取る事は出来なかった。
僕に重なるように、綺流の姿が視界から消えていく。
「…… 一夜……」
圭の声にハッとする僕は、僕に視線を向けるみんなの顔を視界に映した。
一瞬、真っ白な空間に包まれた事で、周りにいたみんなの姿を見失っていた。
僕の手に握られたままの宿木の枝に、宿木の枝が折れた事を改めて意識する。
だけど……。
「え……」
最終的に枝を折ったのは、僕だけだった。
「一夜」
貴桐さんが僕の肩に手を置いた。
驚いている僕に貴桐さんは、笑みを見せて答える。
「……髪……伸びたな」
「貴桐さん……」
「本当に……そっくりだ」
貴桐さんが言うその言葉に、綺流が重なる。
僕の髪は半分だけでなく、もう片側も伸びていた。
「僕は……」
そうであるだろうという思いが、僕の頭の中で理解していたが、言葉として吐き出す事が重かった。
だってそれは……。
そんな僕の思いを貴桐さんは、笑みを見せて言った。
「お前は選ばれたんだよ」
「……貴桐さん」
色んな思いが複雑に絡んだ。
選ばれた者と選ばれなかった者。
選ばれた者は選ばれた余韻に浸る時が過ぎれば、失う時を怯え始める。
だけど僕は。
「失わせやしない、俺たちが力になる。だから恐れるな、一夜」
貴桐さんの言葉に深く頷いた。
守り続けるのは、僕だけじゃない。そう分かったから。
僕の中で囁きが聞こえた。静かに、微かに。
何度も聞いた言葉だ。
それは僕の本心なんだ。
『望む事、全て……思いのままに』
緩やかな風が流れ、僕の長く伸びた髪をそっと揺らした。
僕の中に。
綺流がいる。




