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第20話 可能と不可能

 死を回避出来る術を持っている来贅に、どう挑んだって、僕たちに勝ち目はない。

 ただ抗って、対峙する時間を長く伸ばしているだけだ。

 現に奴は、それを楽しんでいるかのように、僕たちの反応を見ている。

 その間の僕たちは、ただ苦しみを与えられるだけで。

 それを返せる程の影響を、奴に与えられはしなかった。

 悔しさが滲み出て、歯を噛み締めるしかなかった。

 生かすも殺すも奴次第って事だと、簡単に飲み込めるはずはなかった。

 差綺がそっと僕に近づいて来た。

 差綺に問うのは、差綺の存在も綺流に似ていると思っていたからだった。

 それに差綺は、来贅の中から現れた……いや、戻って来たと言った方がいいのだろう。

「差綺……」

 差綺は、クスリと静かに笑みを見せると、口を開く。

「理屈ねえ……? 圭も一夜も僕が奴の中心を知っているって期待しているみたいだけど……どうなのかなあ……それはセオリーとロジックって事? というか、そうやって説明した方が一夜的には成り立つって事?」

「セオリーとロジック……」

 僕は、差綺の言った言葉を繰り返すように呟いた。

 言うなれば、知識体系と思考の流れ……か。

「まあそれでも、理解するには固定概念は外した方がいいな」

「そんな事は……分かっているけど……」

「分かっているけど、何? 一夜」

 差綺は、笑みを見せたままの表情で、僕を横目に見ながら、自分の首元の蜘蛛の印を指でなぞった。僕は、その差綺の動作に目を向けながら、言葉を続ける。

「いや……通常では考えられない事も、目にすればそれは現実に起きた事だと理解せざるを得ない。だけど、そこに起きる事は……」

 差綺の首元から離れる蜘蛛が、差綺の人差し指に乗った。

 差綺は、蜘蛛を見つめながら、僕の言葉を待っている。

「目に見える者が起こしている事で、でもそれは目にして初めてそんな力があった事を知る……だから……予測が出来ない」

「そうだね」

 僕と差綺が話をする中、貴桐さんたちも僕たちの周りに集まってきた。

 貴桐さんたちは、僕と差綺の会話を見守るように聞いていた。

 差綺は、蜘蛛に目線を向けたままだった。僕は僕でそんな差綺を見つめたまま、更に言葉を続ける。

「……知らないんだ、力量を。そしてそれは僕自身にも言える事だ……」

「だから、あるのは可能性だけって言ったの?」

「え……?」

 差綺の目線が僕に向いた。

「さっき言ってたじゃない。あるのは可能性だけって。保障は何処にもないって」

「いや……差綺……それは……」

「言ってる意味が違うって言いたいの? そんな事ないよ。同じでしょ?」

「差綺……」


「結果から導き出される答えには全て、セオリーとロジックで理解を求める。可能性も同じ事。だったらその可能性に行き着いた思考の流れには、知識体系が結び付いていて、その可能性が導き出した答えに僕がいる。保障なんて何処にもない……だけど僕には、そうするだけの可能性を持っていた……それが僕の結果であり、知識体系だよ」


 差綺の目線がまた指先の蜘蛛へと向いた。蜘蛛は差綺の指先で、もぞもぞと動いていたが、差綺に馴れている事を感じさせた。

「だけど……可能性って両極端でしょ……?」

 クスリと笑う差綺の赤い瞳が、キラリと光を見せた。


 毒を以って毒を制す。

 それは差綺の可能性で、結果に結び付いた。

 来贅の中に持って行かれてしまうなら、その可能性ごと来贅の中に溶け込んでやろうと。

 可能性といっても、いい意味での可能性と悪い意味での可能性がある。

 それは、来贅にとっての不可能になったという事だ。

「治らないものは治らない、治せないものは治せない……僕の知識体系は、来贅には一致しない。それはね、理解出来ないという事であって……」

 可能性は両極端……。


「拒絶したって事なんだよ」

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