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第13話 嘘と誠

「だから……その『元』を奪ってやる」


 強気に言い放った僕を来贅は、鼻で笑って見ていた。


 僕の頭の中は、物凄いスピードで、僕が見てきたものを繋げていた。

 Fブロック……血液……瀉血。

 ……血で描かれた……喚起法円。


 来贅の心臓が圭の中にあるというのなら、ここにいる来贅には何も届かない。

 だったら、そこに流れるものに、繋がるものを取り戻すまでだ。

 絶対に繋げて……取り戻す……!


 もし……塔にいる圭に届くなら。

 いや……。


「届け……!」


 僕の手を伝って、網へと流れる力は、青と赤の線を鮮やかに光らせる。

 来贅へと伸びゆく網は、奴の体を這い巡り、絡み付いた。

「……ほう……成程な……」

 冷静にも来贅は、静かにそう呟いた。

 来贅の体に張り付く網は、まるで奴の体の中の血管を示すように巡る。

「切れば……止まる……か」

 続けてそう呟いた来贅は、この網の意味を理解しているようだ。

 来贅の体と来贅の心臓を繋ぐ網……そこに流れ始めたものを止めれば、来贅の鼓動は止まる。

 ただ……。

 僕は、貴桐さんをちらりと見た。

「……迷うな、一夜。圭の心臓は、お前の中だろ」

 僕の抱えている不安を察した貴桐さんは、そう言った。

 僕は、その言葉に頷く。

「取り戻すぞ、一夜。そして止めるんだ。この連鎖を。あいつがいる限り、人の命は道具以下だ」

「はい、止めます。止めて、取り戻します」

 僕は、不安を掻き消し、来贅を見据えた。


 『一夜……』

 圭の声が聞こえるようだった。

 僕は、地に描いた網を握るように手に力を込めた。

 長く息を吸い込み、目を閉じる。


 僕を中心に描かれたその印は、光を強めて風を巻き起こす。

 ボンッと空気が弾けるような圧を感じ、白い光が辺りをうっすらと包み込んだ。

「あ……」

 思わず声が漏れる僕だったが、はっきりと捉えられなかった事で、目を凝らした。


 ゆらりと揺らめく光の中で、圭の姿が見えたような……気がした。

 ……いや……。


「……圭……」

 夢でも幻でもなく、僕の目の前には圭がいた。

「圭っ……!」

 僕は、圭へと駆け寄った。

「一夜……」

 懐かしげに微笑む圭に涙が滲む。

 互いに伸ばす手の距離が縮まって。

 ようやくこの日が来たと安堵した。

 涙が滲んで、視界がぼやける。

 それでも僕は、伸ばされる圭の手を目指して、手を伸ばす。


「圭っ……!」


 あと一歩。

 ……もう一歩。


 踏み込む足が速かったなら。


 あと少し。

 もう少し。


 『この手が掴む事を出来たなら』


 空間を裂く程の爆発音が響き渡ると同時に、僕は吹き飛ばされた。


「う……」

 うっすらと開ける目には、貴桐さんが倒れている姿が映った。

「……貴……桐……さん……」

 地に叩きつけられた体に激痛が走り、それでもみんなの姿を這ったまま探した。

「……咲耶さん……侯和さん……みんな……嘘だ……なんで……こんな事に……」


 僕は何を見ているというのだろう。

 繰り返される残酷に、抗う術はないというのか。


 僕の耳元で足音が止まった。

 僕を見下ろしながら言う言葉は、僕が逃れられない呪いなのか。

 それとも……。


「半分……ではな。ふん……これも『ハズレ』か」


 血を吐きそうなくらいの苦しみは。

 体の痛みを超えた。


 冷ややかに降り落ちるその声は、僕の頭を踏みつけた。

 ……圭。

 嘘だろ……。


「残念だな…… 一夜」

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