第46話 混
「圭が……何処かに隠した……」
それを見つければ、継承出来る……。
そういえば……。
あの時、主様と呼ばれていた男も『圭は何処に隠した』と言っていた。
そして圭に必ず呼び出させろと。
咲耶さんにそれを伝えると、咲耶さんは少し考えた後に、答える。
「構築した知識体系……それを彼はあなたと分けたのでしょう。同じ知識体系なら、可能な事です。あなたになら、柯上 圭が構築した呪法が分かるはずです。彼が他に何を使って、綺流を呼んだのか。それを探しましょう。あなたの胸の印は、間違いなく契約の印でしょうから……。確か……貴桐さんはあの時、差があると言っていましたね……」
「咲耶さんにもあるんですか? 痣」
「僕にはありません。僕は契約した訳ではないですから」
そっか……これも宿自身が精霊を持つのと、契約者になって精霊を持つとの違いか……。
「おーい、一夜、戻って来れないか。手が間に合わない。咲耶、貴桐の方を手伝ってくれ。等為と可鞍も手がいっぱいだ」
「分かりました。直ぐに行きます」
侯和さんの呼び声に、話は診療が終わってからと診察室に戻った。
流行病が収束すれば、またこの扉を閉じなければならない。そして呪術医には再度、選択を迫られる事になる。扉を開けた呪術医は、そこで行った事を全て報告し、塔に属すかどうかの選択をする。属さないというなら、今回のような事になった時は、塔が定める術式のみの使用許可を申請し、許可を得た者だけが呪術医として診療を行う事が出来る。新たな術式、呪法があった場合、塔に属さないと答えを出した者は、その術式、呪法を塔に渡す。結局はどちらにしても、塔の支配下だ。
だが一度、その扉を開けた呪術医は、これが機会と独自の呪法を確立させようとした。それは密かに行われていた。当然、今回の事で新たな術式、呪法を使った者がいたとしても、それを報告する呪術医などいるはずもなかったが。
塔の許容もあって、以前の生活を取り戻したような錯覚がしたが、貴桐さんたちは勿論、綺流に似ている僕の存在を塔に知られる事を隠す為、隣町にある圭の両親の知り合いだった呪術医に、彼の診療所として開かせて欲しいと頼んであった。
「一夜。なんだ、話って? 何か気づいた事でもあったか?」
診療後、診察室の片付けをしていた僕に、貴桐さんから話を聞きに来てくれた。咲耶さんが伝えてくれたのだろう。
「あ……そうなんですが……契約者と言っても貴桐さんと圭には差があるって言ってましたよね。それってどんな差があるって事ですか?」
「そうだな……まあ、呼び出した精霊の能力の大きさ……それは何となくは感じたんだが、それよりもなんか……混ざってるっていうか……」
「混ざってる……? どういう事ですか……?」
「うーん……そもそも、精霊と契約するのに使う呪法は一つなんだけどな……その混ざっているっていうのが、呪法……それは呪術目的は同じものなんだが、思想観念っていうのか、分けて言うならば統御と懇願ってとこだな」
「統御と懇願……ですか。思うように支配しようとする思いと、そうなって欲しいという思いという事ですよね」
「ああ、それが混在している。まあそうは言っても、明瞭にするという事は今となっては出来ないのかもしれないが……今の呪術にそれが混ざるのは、既に確立されていた呪法を使いに使った結果だよ」
「それは医術と呪術が統合されたからですか?」
「そういう事だな。まあ、俺から言わせて貰えば、目的は同じでも、種類が違うって事」
「種類……」
「圭はどっちに重点を置いて使ったんだろうな」
「え……どっちにって……?」
貴桐さんは、僕を横目で見ながら、僕に圭の心を読んでみろというような顔を見せた。
考え始める僕に、貴桐さんは言葉を続ける。
「俺は、目的が同じものなら、使う呪法は一種類だ。俺が使うとするならどっちだ? 分かるだろ?」
……貴桐さんなら……。
「……統御」
「あはは。よく分かってる。正解だ。それなら圭の事も分かるはずだ」
僕は、圭の心を読むように、圭の姿を頭に浮かべる。
……圭なら。
分かった、と僕は、貴桐さんを見る。
貴桐さんは、ニヤリと笑みを見せて言った。
「それが『差』だ」




