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第24話 迷闇

 「生き残りって……そんな……」

 「あなたもご存知でしょう。今、呪術師と呼ばれる者は、呪術医になれなかった程度の低いペテン師だと。まあ……そうは言っても、僕たちからしても同感ではありますけどね……呪術師と呼ばれる、というより、わざわざ名乗っているだけでしょうから。呪術師など誰も信じる者がいないと意識づける為でしょう。貴桐さんのように本物の呪術師としての能力を持っていても、貴桐さんを信じて頼る者など現れはしない……そういう意味の排除の仕方もあるという事です」

 ……悲しい目だった。

 その思いは、僕にも分かる。

 そして、この人たちがどんなに貴桐さんを慕っているのかも。


 「どうだ? 咲耶(さくや)、何か手掛かりになるようなもの、あったか?」

 貴桐さんが、僕と話していた男にそう呼び掛けた。

 「いえ……まだ分からないですね」

 「そうか……何か分かるものがあればいいんだが……」

 貴桐さんの視線が僕に向く。

 「目が覚めたか、一夜」

 「手掛かりって……何を探しているんです?」

 僕がそう聞くと、貴桐さんは真剣な目で僕をじっと見た。

 「体はどうだ?」

 「あ……だいぶ慣れてきたというか……まだ鼓動が響く感じは強いですけど」

 「そうか」

 「あの……」

 貴桐さんの手が僕の髪へと触れた。

 「……白いな」

 「貴桐さん……? 僕は……別に……」

 「一つ……話しておく。頼むから、落ち着いて聞いてくれよ」

 「……貴桐さん」

 「いいか?」

 「……はい」

 なんだか怖かったが、聞かなくてはならない事なのだろう。

 貴桐さんの真剣な目が、そう伝えてる。

 「お前の中にある圭の心臓……それは圭が『契約』の為に差し出したものだ」

 「契約の為にって……貴桐さんが血を使ったように?」

 「ああ」

 「なんで……なんで……? なんでそんな事を……?」

 もう……頭がおかしくなりそうだ。

 落ち着いて聞こうと思って、覚悟はしていたけど、こんな事……。

 圭が何を思って、そこまでの事をしたのか、理解出来なかった。

 どうにもならない感情が込み上げて、涙が零れ落ちてくる。

 「落ち着いて聞けと言っただろう。まだ話は終わっていない」

 「……はい」

 「それがお前の中にあるんだ。理解しろ」

 「理解って……何をですか……」

 「契約に差し出したものを、お前が持っているんだぞ」

 「それって……」

 僕は、貴桐さんの言葉に『彼』の言葉を思い出す。


 『僕からも一つお分けします』


 「『彼』が僕に分けたものが……圭の心臓……」

 「ああ。俺が知る話じゃ、契約に差し出したものを誰かに渡すなんて聞いた事がない。ましてや『彼』はお前によく似た精霊だ」

 「……貴桐さん……」

 「まだ言ってなかったな。お前が気づいていない事……」

 「あ……」


 『持っていかれてる』

 『白くなってるよ、髪』

 『お前、気づいていないんだな』


 「一夜……お前、本物の『宿』だ。お前の中にいたのが『彼』なんだよ」

 僕の中に……『彼』がいた……?

 それを圭が……?

 「圭は、お前の中に宿っていた『彼』を呼び出したんだ」


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