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第21話 自呪 

 貴桐さんの目線を受け止める侯和さんは、苦笑を漏らした。

 「お前に隠し事って、出来ない訳か?」

 「気を見れば分かる」

 「気……か……お前も信じてるって事か」

 「信じるも信じないも、俺は元々なかったものを引き入れたからな。それが事実ってだけだ」

 「引き入れたって……なんだ?」

 侯和さんの問いに、貴桐さんは口元を歪ませて笑うと、こう答えた。


 「言うならば『呪い』ってヤツ。それで俺の知識体系は出来ている。まあ、それは一つの『契約』だ」


 「契約……? 貴桐……お前……」

 「ああ。どうやら柯上 圭は、知っていたようだな」

 「圭は……何を……? 何を知っていたって言うんですか?」

 貴桐さんが立ち止まる。僕たちも並んで立ち止まった。

 すると貴桐さんは、僕の胸元に手を伸ばし、服を脱がすように広げ、胸をはだけさせた。

 「ちょっと……貴桐さん……何を……」

 「思った通りだ。やっぱりあった『印』」

 「印……? あ……」


 『一夜。印を貰ってくれないか』


 僕の胸に痣のようなもの……。それは小さなものだったが、何かを示す図形のようだった。

 「これではっきりしたよ」

 「貴桐さん……?」

 「圭も俺と同じ『契約者』だって事がな。ただ同じ契約者でも圭と俺には差があるな」

 「差があるって、どういう事ですか? 契約者って…… 一体、なんの……?」

 「成程ねえ……『望む事、全て、思いのまま』か。侯和?」

 「……ああ」

 「侯和さん……? 貴桐さん……?」

 いま一つ理解出来ない僕に、貴桐さんが答える。


 「『彼』は、圭が呼び出した『精霊』だ」


 ……彼が……精霊……。

 貴桐さんが言葉を続ける。

 「人ならざるものの力を得るには『契約』が必要だ。その契約は自身の中にあるもので結ぶ」

 「貴桐……お前は何で契約した?」

 「俺? 『血』」

 「血だと?」

 「ああ。自身の血を使って、結ぶんだよ。だからまあ、自分に自分で呪いを掛けるのと一緒だな。その力を自分の中に取り込むんだから。正直、その苦痛に耐えるのは、半端なもんじゃない。自分の許容を遥かに超えるものを取り込むんだ、かなりのもんだよ」

 『彼』は、圭が呼び出した精霊……だけどその姿は、僕にそっくりだった。

 ……なんでなんだろ。


 「それにしても、侯和。お前、よくやったな?」

 「は……あそこまで持っていくのは、正直、賭けみたいなもんだった。見た時からどうも不思議に思えてならなかったからな。だが、確証がない。それに『彼』はそのものの姿を保っているだけで、なんの力も持っていなかった。不完全過ぎたんだ」

 「足りなかったか。呼び出す際に抜け落ちちまったんだな」

 「おそらく……」

 侯和さんの目が僕を見る。

 「呼び出す際に、圭がイメージした姿…… 一夜の存在がなんらかの形で干渉したのかもしれない」

 「僕の存在が……干渉?」

 「ああ。精霊の姿を誰も見た事がないのは、精霊と呼ばれるものがその姿を持たないからだ。それを目に見える姿で存在させるというのは、姿まで作り上げるって事なんだよ。それが実在する人物だったっていうんなら、同じイデアで繋がったと考えても不思議はないかもな」

 だから『彼』は、僕の中にあるものを分けてと言ったのか……。

 それで完成するって……。

 それが圭の作り上げるもの。


 「まあでも、侯和」

 「なんだ?」

 貴桐さんは、意味ありげにニヤリと笑って、侯和さんに言った。


 「とりあえずは叶ったんじゃないか?」

 「はは……やっぱり隠し事は出来ないか」


 「ああ。望む事、全て、思いのままに……な?」


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