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とばりの魔術師と太陽の少女  作者: 小此木シオ
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少女と探検

おさなごにありがちな突飛な行動を書き連ねていたら2000字になってしまった

 少女ーーーシエルはごくりと喉を鳴らした。冷や汗が首を伝う。じめじめとした空気は昨日の雨のせいだろうか、それとも。


 彼女は今、森の前で立ち尽くしていた。右手には灯の消えたカンテラ、左にはシャベル、背中には大きなかばん。緑色の外套はニュイのお手製で頑丈だ。赤らんだ頬には土がべったり。まるで熟練の冒険者の様相である。そんな彼女の顔は、今にも泣きそうであった。


 話は数日前に遡る。


 突然家を飛び出したかと思えば数時間後に満身創痍で帰ってきた娘を見て、ニュイが仰天したのは言うまでもない。


 シエルが突然どこかに飛び出していくことはよくあったので気にしていなかったが、今日はなんだか様子が違う。


 もちろん養母は心配し、幼い娘に何があったのか聞き出そうとした。


 しかし、シエルは青年との約束を曲がりなりにも守って、気になる蝶々を見つけてつい飛び出してしまった、町外れで見失ってしまった、などと言ってニュイを言いくるめてしまったのである。少女はやはりしたたかであった。


 そうは言ってもニュイは聡明な女性であったから、シエルが何かごまかそうとしているのはなんとなく分かっていた。


 それでもシエルは同年代に比べて分別のある子供だと知っていたため、しばらく様子を見ることにしたのであった。


 この寛容さが後に国を左右することとなったのだが、それはまた別の話である。



 数日すると、シエルは家の手伝いが終わるなり例の探検家セットを携えて森に向かうようになった。


 神殿の森までは実はそこまで遠くない。シエルの家は郊外に比較的近いのだ。


 計画的に行けば子供の足でも安全に向かい、安全に帰れるのである。


 初日、シエルは綿密に計画を練り、意気揚々と青年のもとに向かった。なんだか迷ってしまった。そんな日もある。


 次の日、気を取り直してお土産のクッキーなんかをこっそりリュックに詰めたりして、少女はうきうきと歩みを進めていた。


 が。  


 いつまでたっても、何回向かっても森には入れなかった。


 厳密に言うと森の中には入れる。しかし、青年と会った場所に何度行こうとしても、気付いたら森の外に出ているのだ。


 これは由々しき事態である。まさか、青年はもう一度来たら話をしてあげるなんて言って、体良くシエルを追い出したのではないだろうか。


 無駄になったクッキーを噛み締めるついでに少女は歯噛みする。


 なんとまあ、青年の誠実そうな物腰にすっかり騙されてしまった!2度とクッキーなど持って行ってやるものか。


 したたかとはいえまだまだ幼い少女は憤慨したが、3回も森の外に追い出されてしまうと威勢も尻すぼみになってくると言うものである。


 でも、どうやってそんな芸当ができるのだろうか?やっぱり本当に神様なのだろうか……。


 いや、まさか。あの時差し出してくれた手はほんのりあたたかく、ニュイのふくふくした手の温度に少し似ていた。


 でも、神様だって手はあたたかいんじゃないかしら……。


 シエルは森の入り口でぼんやりと考え込んだが、はっと気を取り戻した。こんなところで立ち止まっている場合ではない。


 少女は一息つき、汗を拭った。


その背後に黒い影が忍び寄っているとも知らずにーーー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 少女は全速力で走っていた。突然後ろで唸り声がしたかと思うと、右肩を何かが掠ったのだ。


 訝しげに振り返ると、そこに居たのは、


 ふかいふかい闇だった。


 生き物のように唸りを上げているが、そこにあるのはただのくらい闇だった。この国の夜空なんて比じゃない、ほんとうの黒。森の入り口にポッカリと空いた穴のような何かが、目もないのにこちらを見ているのが分かった。


 シエルは反射で走り出した。何が何だか分からなかった。何も分からない。でも、あれに捕まったら、きっと死んでしまう。そんな最悪の勘だけが彼女を突き動かしていた。


 彼女が動揺のあまり街の方角でなく森の方へと駆け出してしまった事は、頭上に広がるむらさきの空だけが知っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 暫くして何故か唸り声からは逃れられたものの、シエルはにっちもさっちも行かなくなっていた。足が棒のようだ。


 普段から動き回っているから体力には自信があったが、こんなに走ったのはいつぶりだろう。なぜか今回に限って森の奥深くまで来れてしまっていた事なんて、今のシエルにはどうでもよかった。


 唸り声が聞こえる。近づいてくる。もうだめかもしれない、幼心にそう思う。こんな事になるならニュイにちゃんと森に行くと話せばよかった。


 少女は嘆息した。ごめんなさい。シエルは悪い子です。もう勝手な行動はしません、神様助けてください。


 ごくりと喉を鳴らす。冷や汗が首を伝う。じめじめとした空気は昨日の雨のせいだろうか、それとも。


 祈りも虚しく闇が目の前に躍り出て、見えない目でシエルを睨め付けた。目も耳も腕も何もない、ただの空虚な穴だが、殺意だけがどろどろと漏れ出して少女を呑み込もうとし、少女は目を瞑り、闇から凶刃が繰り出され、


 ()()()()を貫いた。


 しばらく経っても来ない衝撃にシエルが目を開けると、目の前には息を切らしたあの青年がいた。


 闇が仕留めたのは彼の外套だったらしい。


 後ろ姿しか見えないが、うすい色をした髪がはらりと肩に落ち、しなやかな腕がシエルを庇うように伸ばされる。


 「ああもう、何だってんだよ!!!!」


 青年は慌てたように叫ぶ。


 シエルは場違いにも、やっぱり神様みたいだなぁ、と思った。

もうだめ全然話進まないけど私が楽しいんでもういい気がしてきた いや良くないですね ここまで読んでくださった方もはやいるかもわからないけどほんとうにありがとうございます おにロリ魔人頑張りますので感想などいただけたら嬉しいです

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