佐々平左衛門・再
前書き長いですが内容とはあんまり関係ないので飛ばしても大丈夫です
景虎の死後、実は史実ではあと二年ぐらいだらだら乱の続きをやっていたらしいです。
御館の乱終結から新発田の乱まで全部1579年の話だと思っていたら全然違いました。
書いていて自然な流れだったので全く気が付きませんでした。何で景虎を倒すまでよりその後の方が長いんだ……
むしろ史実通りにすると景虎自刃の後、二年ほど黒川清実と戦う話を挟まないといけなくなるのでこのまま行きます。
参考までに史実時系列です
1578年 謙信の死、乱勃発
1579年3月 景虎切腹 ←ここまで同じ
1580年8月 顕元の切腹 このころ柴田勝家らが加賀一向宗を制圧
1581年3月 黒川清実降伏 北条城(北条景広の城)落城
1581年6月 新発田の乱
1581年9月 直江信綱・山崎秀仙刺殺事件 (←本作ではここまで1579年)
1582年 武田滅亡→上杉絶対絶命→本能寺の変
1583年 新発田攻めにて景勝敗北(放生橋の戦い)(←1582年?)
1579年だと柴田軍はまだ加賀にいるのによく新発田家まで勧誘したなと思ってたら、あと二年後なので実は大分近くまで来ていたようです。
あと、すでに月岡野の戦い(神保長住が越中に戻って来た戦い)が終わっていてびっくりした。これからやろうと思っていたのに。
五月二十五日 新発田城
独立から一週間ほど。新潟の築城や春日山城の方の情報収集に明け暮れていた。そんな中、佐々成政から先ほど送った書状の返書がやってきた。今度も例によって佐々平左衛門が使者である。
「このたびは賢明なご決断いただき感謝しております。上杉家の内情は広く諸国に知れ渡っており、もはや長くはないものかと思われます。もし上杉についていかれるようでしたら織田家の者としてではなく一個人として止めようかと思っておりました」
そう言われると俺としては苦笑するしかない。
「織田家はいつ話を聞いても順風満帆で何よりだ」
「それはごく最近の話ですよ。それまでは……いえ、話すと長くなります。まず、同盟の件ですが結んでいただいたお礼をいたします。現在我らは加賀を侵攻しておりますが、越中の神保長住殿とも通じております」
神保長住というのは富山城主である。越中はざっくり分けると西の一向一揆、中央の神保氏、東の椎名氏という三勢力に分かれており、神保と椎名は常に対立していた。謙信時代も片方が謙信につけば片方が自立する、ということを繰り返して結局現在は椎名氏が謙信につき、一向一揆も謙信と和睦して上杉家の越中支配は実現していた。
敵の敵は味方という通り、神保長住は謙信と敵対した織田家の元を頼っていたらしい。昨年、御館の乱の間に織田家の支援を受けて越中に舞い戻り、増山城や富山城などかつての城を奪還している。
「そのため、もし景勝が新発田へ兵を進めるようであればその隙に神保殿に松倉城を攻撃させます」
「なるほど」
上杉領はすでに越中東側に限られており、春日山城からであればすぐに救援に行ける距離にある。だが新発田は越後でも東側にあり、新発田攻め中の景勝が越中にとって返すとなると数日を要する。戻らなければ越中での求心力を失うことになる。かといって返還命令の出ている新潟港や三条城を引き渡さない俺を放置するはずはない。というか放置するぐらいなら素直に恩賞として与えるだろう。
「次に新発田殿が開発したという農具ですが、実はすでに拝見させていただきました」
「確かに。我が領の農家であれば誰でも持っているものだからな」
冷静に考えると見られた以上献上するもしないも、複製するのは自由である。
「とはいえ、一応図面や工程を記録した物がある。持っていっていただきたい」
「それはありがたくいただきましょう。次に船大工の件ですが、新発田殿はどのような運用を考えているのでしょうか」
「新潟から酒田、十三湊、蝦夷への交易を最終的には考えている」
平左衛門は俺の計画にも大して驚きは見せなかった。織田家は南蛮の物なども輸入していたと聞くから蝦夷など大したことはないのかもしれない。
「では軍船としては使用されないと?」
「いや……実はどこかでの佐渡進出も考えている」
「ほう……とはいえ、ここから佐渡でしたら近距離。さして大がかりなものである必要はないということですな」
「そうだな」
「分かりました。もし大人数を搭載する安宅船を、と言われたら困るところでしたが商船でしたらどうにかなるでしょう」
その後ひとしきり俺たちは情報交換や近況報告などを行った。それが一段落したところで俺は切り出す。
「さて、そろそろ夕食にしようか」
「夕食までご一緒させていただいてよろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。実は平左衛門殿が来てから支度をさせていてな」
すぐに用意させていた夕食が平左衛門の前に運ばれてくる。本来なら豪勢なものを用意して織田家に媚びるべきなのかもしれないが、敢えて普通の献立にした。一応おかずだけはとれたての新鮮な物を用意したが、それぐらいである。
平左衛門も敢えて俺が夕食を共にすると言ったからにはすごいものが出てくると思ったのか、拍子抜けした顔をしている。それでも出来るだけ平静を装いながら食事を進め、白米に手をつけた。そして表情が変わる。そう、この白米を際立たせるためにあえて普通のメニューにさせたのだ。
「このお米は?」
「当家で品種改良したものだ。山海の珍味は織田家の者であれば食べ飽きていると思い、当家でしか食べられぬ物を用意させてもらった。ちなみにコシヒカリという」
俺はしれっと嘘をつく。コシヒカリの品種改良に携わった皆様本当にすみません。でも織田家相手にマウントをとれるものなんてそうそうないからな。ふう、雪のおかげで織田家に舐められずに済みそうだ。
「何と……新発田殿は農業に精通しているのですね」
「そうだ。よろしければ一袋持っていかれるか?」
「はい、是非」
俺はとれたてのコシヒカリを一袋プレゼントしたのだった。船大工を送ってくれるのと釣り合うのかは不明だが。




