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Save85 比べるものがおかしいのは気のせいだよ

「じゃあ、僕がキラに勝ったら教えてくれないか?」

「あぁ、いいぞ。勝てたら、だがな」


 そう言って俺達は、相手に切りかかった。


 カムイの剣を左手に持った剣で受け止め、右手に持った剣でカムイを切りつける。

 それに対しカムイはバックステップで回避。そのまま逃がさせるわけにはいかないので【縮地】を使い一気に距離を詰め、横薙ぎに二閃。少し時間差をつけて攻撃する。


 しかしカムイは、軽い身のこなしで跳んだかと思うと、振り切った直後の俺の剣の上に一瞬着地し、また跳んだ。反応速度異常だろ、こいつ。


 ただ、跳んでくれたのはありがたい。着地地点を計算し、そこに向かう。

 着地地点に着くと同時に上を見ると、数センチ先にカムイの剣先があった。顔を少しずらしクリティカルだけは免れ、お返しとして俺も二振りの剣を合わせ真上に突き刺した。

 カムイはこれも凄まじい反応速度で躱し、ごく微量のダメージを貰うだけで地面に着地した。


「反応速度どうなってんだよ。何で避けられるんだ?」

「それはこっちのセリフじゃないかな? どうして一秒未満のクリティカルへの攻撃を躱せるんだい?」

「お前異常だわ」

「そっくりそのままお返しするよ」

「「「「「「「「「「(両方とも異常だよ……)」」」」」」」」」」


 軽く言葉を交わした後は、両者無言での鍔迫り合い。刃の部分からギリギリと聞きたくない不快音が聞こえてくる。

 いくら俺が手加減してるからって普通はこんなに戦えないぞ。どうなってんだよ。


「キラ、教えてあげるよ。僕のレベルは67。他のメンバーは45~50くらいだけど、僕だけはレベルをたくさんあげた。寝る間を惜しんでまで。それは単に、このギルドバトルに勝つためだ! そしていち早くこのゲームをクリアして皆を開放したいからだ!」

「あそう。別に俺には関係ない」


 俺なんて普通に寝る間あったけど。一瞬で上がったけど。なんならもう上限突破してるけど。


「関係あるさ。キラがこのギルドに加担している限りは」

「関係ない。そもそも、全員が全員早く脱出したい訳じゃない。現に俺がそうだ」

「それは君の事だろう? 僕が言っているのはその他全てのプレイヤーの事だ。全てのプレイヤーの望みはこのゲームから出ること。それに協力して欲しいだけなんだ」

「そうか……」

「わかってくれたかい?」

「あぁ、分かった。理解した」

「良かった。じゃあこんな無益な戦いはやめよう」

「だが、それに賛成するわけじゃない」


 俺は皆の為だろうが関係ない。自分勝手にこのゲームをプレイしていく。それに、俺が言ったように全てのプレイヤーが帰りたいと思っているわけじゃないはず。そう思っている人の方が多いのはわかってるけど。


 そもそも、カムイはこのゲームをクリアすると言っているが、もしクリアして帰れたとしたら、残ったプレイヤーはどうするつもりなのだろうか。最後にクリアするなら話は別だが、その時は多分クレアシオン級の強さを持った神が残っているだろうから、かなりの犠牲を出すと思うが。


「キラ、自己中心的な考えはやめてくれ。これは、全プレイヤーの事なんだ。その一人として、皆のために行動してくれ。頼む」


 皆の為。そう言えば俺が納得すると思っているんだろうか。もしそうなら、ただの馬鹿だ。こんなにも頑なに拒否しているのに、まだ希望があると思っているのだろうか。

 

「断る」

「……そうか。もし帰れなくなっても僕は知らないからね」


 何を言っているのだろうか。俺の本気がこの程度なわけがない。本気を出してしまったら一瞬で決着がついてしまう。それくらいの差があるのに、何故そんなことを言われないといけないのだろうか。

 大体、帰りたければ既に俺は帰っている。龍神なりクレアシオンなりを倒して。


「じゃあ、この勝負勝たせてもらうね」

「できるものならどうぞ。【威圧】」

「!?」


 俺がやったことは単純。スキル【威圧】を使って相手の行動を一時的に不能にしたのだ。

 このスキルは、相手に行動不能の状態異常を付与し、その効果時間は相手とのレベル差によって変わる。一つ欠点があるが。

 今の俺は【武神】で力を下げているからそこまで長くないが、カムイを倒すだけならば十分足りる時間だ。


「くっ ●●●◆──【水球(ウォーターボール)】!」


 そして、この欠点というのがこれ。動くことは不可能なのだが、魔法を使うことは可能なのだ。そして、カムイが魔法を使ったことによってカムイの職業が確定した。【剣士】【魔法使い】【魔法剣士】だ。


 【魔法剣士】は、通常杖が無ければ魔法を使えないが、剣を使って魔法を使えたり、杖を使って相手を切りつけたりすることができる職業だ。

 ただし、剣で魔法を使うときは魔法の命中率と威力が、杖で相手を切る場合は威力とクリティカル率が下がる。


「【魔力放射】」


 カムイが魔法を使ったのに対し俺は、スキル【魔力放射】を使った。

 このスキルは、相手が魔法を使うのに使ったMPの量の倍以上のMPを消費して、使われた魔法を消すスキルだ。

 消せなくても、魔法の威力を弱めるために使われる。というかほとんどの使い方がこれ。俺の場合は【魔力放射】使わなくても【賢者】で消せるんだけど。それも効率的に。


「ははっ、でたらめじゃないか。そんなの使われたら勝ち目がない」

「敗者に勝者から一つ教えてやるよ。俺の強さは今お前らが束になって掛かってきても勝てないほどに強いと思っておけ。信じられないなら実演してやるが?」


 そう言って俺は周りを見渡す。あ、丁度いい奴を見つけた。


「カオリ」

「ちょ、私!?」

「とサクラも」

「……わかた」


 この二人は、【愛縁】のお陰で強くなってはいるが、所詮はステ値二倍だ。俺の【身体強化】の十倍には及ばない。比べるものがおかしいのは気のせいだよ。

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