Save83 シュパっとやっちゃって!
時を同じくしてサクラ&アンラペアも、一つのパーティーと対面していた。
「あれ~? サクラちゃん? 縛られたくないからギルドには入らないんじゃなかったの~?」
「……そう」
「じゃあなんで今は入ってんの!」
「……今だけ」
「今だけだろうが何だろうが自分の言ったことはしっかり実行しないと」
「……うるさい」
「はぁ!? あ~もうしらない。やっちゃお」
サクラが相対していたのは、かつてサクラをギルドに誘ったプレイヤー、コノハだった。
あまりにもサクラが素っ気なさ過ぎたせいか、痺れを切らし、襲い掛かってきた。しかし、それを止めるプレイヤーが。
「サクラさんと何があったか知らないけど! 私を忘れないでよね、っと!」
アンラだ。軽い身のこなしでサクラへの斬撃を見事に受け流し、綺麗に宙返りしながらサクラと二人で挟み込んだ。
「あれ~? いいの~? サクラちゃんって後衛でしょ~?」
「……こない、の?」
「っ……いいよ。やってあげるよ。皆はそっちをお願い」
「……ひとりで、いい、の?」
「っ……!っざけんじゃない! はぁぁぁあああああ!」
「……おそい」
「なっ、なんでっ!?」
切りかかってきたコノハに対し、サクラは冷静に弓を放ち、剣筋を逸らして回避するという芸当をやってのけた。さらにコノハの背後、アンラに攻撃しているプレイヤーまでもを打ち抜いて。
これは、サクラが【愛縁】のお陰でパワーアップしたことが理由だ。
システムで弓などの遠距離攻撃の正確さが増し、さらに攻撃速度までも上がっている。今のサクラが相手にできない前衛職は、現段階ではキラとカオリしかいない。カオリは言わずもがな【愛縁】のお陰だ。
「皆! やっぱりこいつ先に仕留めるよ!」
このままではサクラに完封されてしまうと考えたコノハは、全戦力をサクラに投入しようと考えた。だが、それは悪手も悪手、大悪手だ。
何故なら、放置することにしたプレイヤー、アンラは。レベルが低いが称号に【βテストクリア者】があるのだ。
注意を背けた瞬間、一閃。──クレアシオンに貰った武技、【天衣無縫】を使った一撃だった。
そのたった一撃で後ろにいたプレイヤー二人が倒れた。そのままアンラはサクラの元へ戻り、横に並んだ。
「……私が」
「わかった。シュパっとやっちゃって!」
「……シュパ」
気の抜ける掛け声と共にサクラは矢を打ち放つ。飛ばされた矢が描く残像は、一筋。しかし放った矢の数は、三本。それが一直線に一人のプレイヤーへと飛んで行った。
そして、命中。一発もずれることなくピンポイントへ当たり、クリティカルダメージを出す。
このゲームは、攻撃が当たった数舜の内にそこを攻撃するとクリティカルになる。その数舜が凄く短いが、それをサクラは成功させたのだ。勿論相手は倒れた。
「さっすが~! さぁ後二人もやっちゃって~!」
「……シュパ」
「一度見たら対応するよ!」
その言葉通り、コノハは横へステップ。少しずれることでサクラの矢を回避した。
さらにそれと同時にもう一人がコノハとは反対側に回り、サクラを挟んだ。
「どう? これなら攻撃できないでしょ?」
「……できる」
「なに、ブラフ? そんな手に乗るわけないじゃない」
「……」
サクラは少し怒ったのかデフォルトのジト目をさらにジトっとして矢を放った。空へ向かって。
これまた描かれる残像は一本。しかし、風切り音は無数に聞こえてくる。いったいどれほどの量を打ったのか。それは、すぐに分かった。
「……名付けて……【幾千の矢】」
サクラが言った通り、空から無数の矢が落ちてきたからだ。その恐怖すら覚える精密射撃による、空からの攻撃。当然自分には当たらないようになっている。もし、自分のところに逃げてこられても、対応できるように矢を番えておく。
そんなことをされては、もうなす術などなく、あとはHPが切れるのを待つだけだった。
※※※───※※※
ところ変わってこちらミカエルさん。勢い余って家屋に衝突してから少し時間がたっている。MPもある程度回復しているようだ。
「無理しすぎた。……っ誰!?」
ミカエルは、周囲を魔法で探る。するとすぐに反応があった。
「あら、気付かれちゃいました」
「お、お前は……?」
瓦礫の陰から出てきたのは1人の女性。しかしアイコンを見るにNPCのようだ。そのNPCは、抑揚のない声で、さらに続ける。
「わたくしはカムイ様の僕である女神、イシスです。以後、お見知りおきを」
「何の用だ」
「少々邪魔なのであなた方を排除しようかと」
「……誰に言われた?」
「自己判断です」
「それは───」
「お話はここまでです。ここであなたを倒させていただきます」
「っ……」
言うと同時に放たれた【光矢】を、ほとんど反射で転がるように躱す。
少しでも時間稼ぎをしなければ。時間を稼げば遊撃隊の援軍が来る。そう思いミカエルは、攻撃よりも回避に主力を注いだ。




