Save7 なにあれ!
「はぁ~。仕方ない。どんなやつなんだ?」
「えっとね。【始まりの森】にあるオークの巣を調査又は攻略、だって」
「それってこの前見つけたやつ?」
「そだよ」
「はぁ、仕方ない。やるか」
「いぇーい」
アンラが面倒くさいクエストを受けてきたので、仕方なくやることにした。……俺だけなら3秒くらいで終わるのに……。
「そういえば、アンラのステータスってどうなってる?」
「えっ!? お、教えないとダメ?」
「ん? 別に教えなくてもいいけど、なんでそんなに驚いてんの?」
「い、いや~、何でもないよ? ホント、ホント。夜更かしとかしてないし~」
「へ~。夜更かししてるのか~。ダメって言ったはずなんだけどな~」
「な、何故バレたし!?」
「アンラ。ステータス、見せてくれるよね?」
「うっ、……はい」
アンラが快くステータスを見せてくれたので、どれくらいの強さなのか見てみようと思う。
アンラ
女
種族:人
状態:正常
Lv.13
HP:10,200
MP:2,400
体力:1,000
攻撃力:980
防御力:790
魔法攻撃力:1,300
魔法防御力:800
俊敏:990
運:34
〈スキル〉
[コモンスキル]
・MP自動回復量増加Lv.5 ・水属性魔法Lv.6 ・光属性魔法Lv.4 ・風属性魔法Lv.3 ・解体Lv.7
・棍棒術Lv.2
[耐性]
・物理攻撃耐性Lv.5 ・魔法攻撃耐性Lv.5
〈称号〉
・βテストクリア者
〈所持金〉
100G
「え?」
「驚いた?」
「ああ、驚いたよ。こんなに強いとはな」
「【βテストクリア者】のお陰だよ」
「そこ。何でその称号持ってんだ? まさか、本当にクリアしたの?」
「クリアしたんだよ。キラがログアウトしたのって、サービス終了の30分前くらいでしょ?」
「そうだったかな……?」
「うん。それでね、キラはソロでクリアしたけど、私はパーティでクリアしたの」
「マジか。ってことは、この称号を持っているプレイヤーがまだいるってことか」
「そうだね。でも結構ギリギリだったなー。パーティメンバー全員がHP残り数ドットだったからね。よくキラはソロでクリアできたよね」
「俺はレベルカンストしてたからな。弱く感じたよ。何レべで挑んだの?」
「えっとね……確か、最高が22で、最低が18、平均が19くらい、かな?」
「よくそれでクリアできたな。レイド?」
「1パーティだよ」
「プレイスキルが高いんだな」
「キラに言われたくないよ……」
「そうか……? アンラ、ついたぞ」
俺とアンラが談笑していると、いつの間にかオークの巣まで来ていたようだ。
数は、オーク18、オークソルジャー4、オークアーチャー5、オークソードマン7、オークメイジ3。そして、オークキングがいた。
「これ規模デカくね?」
「だね。どうしようか……」
「アンラが突撃する」
「人任せ過ぎない!?」
「アンラが勝手に受けたんだろ」
「うっ」
アンラは軽く呻いた後、オークの巣に向かって歩き出した。
すると、アンラは杖を取り出し、詠唱を始めた。魔法を使うようだ。
「●●●◆──【水球】」
アンラが魔法名を言った次の瞬間。
ドゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオン!!
とても大きい爆発音とともに、水飛沫が飛び散った。
しかし、全てのオークを倒せたわけじゃない。現に、オークキングがまだ生きている。しかも軽傷。それに加え、再生までしていた。
「嘘……」
アンラが驚いたように声を上げた。それほど今の一撃が本気たっだということだろう。
「大丈夫そうか?」
「む、無理ぃ」
「わかった。見てろ」
アンラがギブアップしたので、俺とバトンタッチだ。
どうやって倒そうかなぁ~。ま、あれでいいか。
俺は杖を取り出し、詠唱を唱え始めた。
「●●●◆――【水球】」
使うのはアンラと同じ【水球】。ただし、威力は10倍で留めてある。
俺が放った【水球】が巣に着弾したのと同時に、周りを無音が支配する。続いてやってきたのは衝撃。コンマ数秒遅れて音が来た。
「な、なにあれ!」
アンラは驚いていた。その顔をスクショして将来見せてやりたいくらいだった。
「じゃあ、また一緒にクエスト受けようね~」
「あぁ!」
俺はアンラと別れて、始まりの街のスラムの方へとやってきた。……【水球】について追及されなかったのか? ……想像に任せる。
閑話休題
俺が始まりの街のスラムへ来た理由は、未来探しだ。本来は明日からなのだが、暇だし、明日の探す分が少なくなればいいな~、的なノリでやってきた。
何故、スラムなのか。それは、おそらく未来はお金を持っていないだろう。持っていたとしても、そんなに長く宿に泊まれるかはわからないので宿に泊まり続ける、ということはないと思う。
そして、お金を稼ぐことだけど、それはたぶん無理だと思う。だって、フィールドはたくさんのプレイヤーがいるし、魔物とのバトルでもおそらく神崎がやってて、後方支援だけじゃないかと思う。
……交流がないだけでちゃんとプレイスタイルは把握してるからね?
なので、戦闘能力の低い未来が野宿するとも考えにくい。よって、ここスラムに行きつくわけだ。
「さて、居るかな?」
俺は始まりの街のスラムを見回ることにした。
「居た……」
見回り始めて3分ほど。俺は未来を発見した。──路上に倒れた姿で。