Save79 美しい天使
俺達が転移された場所は、さっきまでいた場所。だけど違う場所だった。
そう、このギルドバトルの舞台は──別ディメンションの【始まりの街】だったのだ。
と、周囲を確認したところで、目の前にウィンドウが表示された。
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<ルール>
・アイテムの使用は一部制限有の無制限
・制限アイテムは回復アイテムのみ
・回復アイテムの使用は1人につき3回まで(他者に使用した場合、使用者の制限が減る)
・制限時間は無制限。どちらかのプレイヤーが全員倒れた瞬間終了
※ここでHPが尽きることはありません。安心して戦ってください
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ということらしい。HPが尽きないのは、全力で戦って貰うためだろうか?
「さぁ、始めようか──」
そして、俺達の戦いは始まった。
まず俺達がしたのは、NPCの召喚だ。このギルドバトルは、回復アイテム以外のアイテム使用の制限はされていない。つまりNPCは使えるってことだ。だって元はアイテムだもんね。
なので俺は今まで使ってこなかったミカエル、ラファエル、ウリエル、ガブリエル、ヘラ、バステト、アテナを出した。
ミライは天照大御神、伊弉諾、伊弉冉、月読、素戔嗚尊、ルシファーを。
カオリはゼウス二体と阿修羅を出した。俺も天使たちを二体ずつ持ってるけど、状況を見て出していくつもりだ。無暗に相手に手札を見せるのは愚行だからな。
サクラはオーディンと不動明王、フレイヤにトールだ。
総勢20体のNPCが出揃った。これで相手が何人で来ようと負けはしないだろう。……フラグじゃないよ?
「凄いねぇ。よくこんなに集められたね、排出率低いのに」
「それがな、引くたびにNPCが出てた時があってだな……」
「あ、聞きたくないから言わなくていいよ」
そっちから聞いてきたくせに。
勿論俺達が出したNPCは最大レベルだ。それと、俺が今回天使達を選んだのには理由がある。それは、とある特性がとても使い勝手がいいからだ。そしてその特性というのが……。
「ミカエル、ラファエル、ウリエル、ガブリエル。天使を召喚しろ」
「「「「はっ」」」」
そう、この天使達は、自分に生えている翼の数だけ天使を召喚できるのだ。
ミカエル達は、大天使と言われることが多いがこのゲームでは【熾天使】らしい。その証拠に全員翼が三対六翼ある。
ただ、例外としてミライが召喚したルシファーだが、堕天使になる前の設定のようで、六対十二翼の翼をもっていて神々しく輝いている。
召喚される天使達は、レベルの概念がなく、受けたダメージに関係なく10回攻撃されたら消えてしまうらしい。戦闘性能は召喚した天使によって違う。今回は全員が最大レベルなので、性能も最高だ。
「よし、お前ら、行ってこい。敵は倒して構わない。遠慮なくやれ。ただし死ぬことは許さない。必ず帰ってこい」
「「「「はっ」」」」
威勢よく返事をして、天使達は空に飛び立っていった。空飛ぶ機能はデフォルトです。
「ヘラ、バステト、アテナ。お前らはアンラ達を守れ。絶対に死なせるな」
「「「はい!」」」
「えっと、皆も好きなように散って敵を倒してください。それと、必ず帰ってきてくださいね」
「「「「「「了解」」」」」」
俺に続きミライもNPCに指示を出した。このギルドバトルではNPCを使った物量作戦を考えた。数が多い相手ならこっちも数を多くすればいいってことだ。
そして、俺とミライのNPCで敵を倒し、カオリと俺のNPCでアンラ達を防衛。サクラのNPCで遊撃と、こういう組み合わせになっている。
「安全なところまで行こう」
「わかったわ。多分ギルド周辺が【始まりの街】の中心付近だから、そこが見えるところの方が良さそうね」
カオリの案内で、俺達は安全そうなところまでの避難を始めた。
キラ達が避難しているころ、キラのNPCであるミカエルは空を滑空していた。目指しているのは敵の本拠地。
「さて、敵は一体どれくらいだ?」
ミカエルは独り言を呟く。素早く空を飛んでいるが、それは魔法を使っての敵勢反応を効率よく探すためだ。そうしている間にも、敵がたくさん集まっている場所を特定した。
「発見。敵の数、およそ30。平均レベルは……45程度か?」
予想よりも遥かに低レベルすぎるため、ミカエルは小さく溜め息を吐いた。
「挨拶くらいしておくか」
これから正々堂々戦う相手なのだ。挨拶くらいするのが礼儀だろう、ということでミカエルは敵の本拠地に突っ込んだ。
ギルド【ゴットギャラクシー】のギルド長であるプレイヤー、カムイは、これからの戦いに思いを馳せていた。
「(このギルドバトルに勝てばあの子達のギルドと併合し、よりこのゲームをクリアしやすくなるだろう。さらにキラやミライ達も仲間に入ってくれるかもしれない。一緒に戦ってくれる仲間の為にも、この勝負は絶対に勝たないと、だな)」
と、その時。屋内に隠れていたカムイとその仲間達に、眩い光が注いだ。その光に驚き一人のプレイヤーが外に出て行った。すると、今度はそのプレイヤーの仲間を呼ぶ声がした。
その声を聞き、カムイとその仲間達は外に出た。外に出た先にいたのは、神々しい後光が差し、三対の翼を広げた美しい天使だった。




