Save74 何も、言えなかった
そして時は流れ夕方、と思われる時間。
「き、キラ……本当にトリカラートルマリンって出るんでしょうね……!?」
「あ、あぁ、出るはずだ」
「ならなんで一個も出ないのよ!」
「知るかそんなもん!」
もう何時間も採掘続けてるのに一つも出てこなかった。レア度少なさすぎじゃね? 物欲センサーは発動しなくていいんですよ?
「キラ……この採掘ってステータスにある運に依存してるって考えていいのよね?」
「多分そうだと思う」
「なら、運を上げる魔法ってないの?」
「……ある。──【幸運】」
「最初から使いなさいよ……!」
こんなに時間がかかると思ってなかったんだよ。許してくれ。
「早速掘ってみるわね。……トリカラートルマリン出た!」
「ま、まじか……」
なら最初から使っておけばよかった! 無駄な努力だった! 鉱石はたくさん集まったけども!
「よし! 目的のものも取れたし! 夜景を見に行きましょう!」
「よく見る気になれるな……」
俺はもう疲労困憊だ。あぁ、パト〇ッシュとネ〇が手招きしてる……もう疲れたよパトラッ〇ュ。
「さ、天使が来る前に【マジエンスシティ】に行くわよ! さぁ早く【転移】使って!」
「人使いが酷くなってきてないかねカオリさんや。あと思考読むな」
結局カオリに説得されて【マジエンスシティ】まで【転移】で移動してきた。
「で、今は夕方だが夜まで何をするんだ?」
「私はちょっと買い物をしたいわ。だから夜になったら集合するところを決めましょ」
夜に集合する場所か……普通に転移水晶前広場で良くないか? それならわかりやすいし。
「じゃそこ集合で。時間は8時くらいでいいわね」
「それで? 見たら帰るのか?」
「それもいいけど、折角だしレストランとかで食事をしたいわ」
「わかった。予約しておく」
「ありがと。それじゃあね、またあとで」
カオリはそう言うと、人混みの中に消えていった。
よく考えればここって転移水晶前広場だったな。移動するのも面倒臭いし、ここで作業でもして時間を潰すか。
俺がする作業は、とある物を作る作業だ。
できるのか?って思うかもしれないが、魔法に【簡易鍛冶魔法】というものがあって、簡単な合成や分解はできるようになっている。
本職が鍛冶師とかならスキルとしてあり、性能や効率がいいので、急遽必要になった場合に使われる。この魔法を覚える人は少ないだろうけど。
あれから少しの時間が経ち、視界にタイムウィンドウを表示させると、まもなく8時、というくらいの時間だった。
「やべぇ……」
何がヤバいって、作業に集中しすぎてレストランの予約忘れてた。今からとれるか?
……何とか【マジエンスシティ】内でも高地にあるレストランを予約を取ることができた。何でも、予約してた人が、急にキャンセルしたそうだ。良かった。
「キラ、お待たせ。さ、行きましょ?」
「わかった。それでさ、カオリ。何故か【マジエンスシティ】は綺麗な星も見れるらしい。そこに行ってみよ?」
「星? なんでこんな明るそうなところから見えるのよ」
「魔法の力」
「万能そうね、その言葉」
大体魔法の力で説明が付くもんな。……さて、今日が勝負か?
集合場所の転移水晶前広場から少し歩いて、高級感あふれる巨大な建物の前に俺達はいた。
俺が予約を入れたレストランはここなのだが、そのあまりの大きさに開いた口が閉じなかった。カオリは本当に口開いてたけど。
でも、いつまでもここに居るわけにはいかないので、荘厳な扉を開いて店の中に入る。
中に入ると、見るからに豪華な装飾品が沢山置いてあった。
しかし、綺麗に配置されていて、装飾品による圧迫感は感じず、とても広々している。
完全に個室のようで、周りに他の客の姿はなく、スタッフが忙しく動き回っている様子が見えないどころか、その姿すら見えないので、本当に営業しているのかと思ってしまう。
店の中に入って数秒後、奥から男性スタッフが出てきた。
「ようこそいらっしゃいました。ご予約はされていますか?」
「はい。キラ、で予約してます」
こんな豪華な所で、丁寧な対応をされたものだから、俺も丁寧な言葉遣いになってしまう。隣でカオリが笑いをこらえるように肩を震わせている。あとで【電撃】食らわせようと思う。
「キラ様ですね。かしこまりました。こちらへどうぞ」
スタッフに案内された個室に入ると、部屋の外とはまるで違っていた。
外が洋風なのに対し、室内は和風で、床の間に生け花が生けてあったり、その後ろに掛け軸がかけてあったりと、全体的に和を感じる。
ただ、アンバランスなのが窓。そこから外の風景が見えるのだが、ここが高地にあるためか空中に浮かんでいるような印象を受けるのだ。
……普通に窓際から夜景が見える、普通のレストランで良かったと思う。何でこんな不思議な感じにした。
それから1時間くらい食べていたと思う。料理はどれも和食で、俺がレベル10【料理】で作る料理よりも数段美味かった。
今はデザートを食べながら話をしている。
「なぁカオリ、お前たちがクレアシオンに貰った【愛縁】っていうスキルあるだろ?」
「えぇ!? あ、あるわよ……?」
何をそんなに驚いてんだ?
「あれって、どういう効果なんだ?」
「えっと……言わなきゃ、ダメ?」
「できれば教えて欲しい」
「……わかったわ。【愛縁】の効果は、ステータス値を倍にし、武技、魔法の威力を上昇させ、さらに被ダメージ量を軽減する、という効果よ」
「それって結構すごくないか?」
俺のスキルと比べると霞んでしまうが、それだけを見るととても強いスキルであることがわかる。
でも、今日のカオリとデュラハンの戦いを見ると、その効果が受けられていないように感じる。なんでだ?
「カオリ、そのスキルって、何か効果条件があるのか?」
「……あるわ」
「教えてくれ。俺にできることなら何でもする」
俺にできることなのにしてなくて、それが原因で死なれたら、俺はずっと俺を責めるだろう。
「……プレイヤー又はNPCと結婚し、せ、性行為をする。これが条件よ」
「……」
何も、言えなかった。




