Save60 奥義【昇竜剣】!
『お主ら、妾に何用じゃ?』
声が聞こえた方に体ごと顔を向けると、そこには幼女が立っていた。創造神は幼女ですか……
なんて言うか、倒しにくい敵だなぁ。だがまぁ、俺達はこいつを倒すために来たわけじゃないし、関係ないけど。
「お前が創造神か?」
『そうじゃ。妾が創造神じゃ。して、何用か、と問い掛けた筈じゃが?』
「家を作ってもらいに来た」
『……ほぇ? 家、とな?』
「あぁ、作ってくれるか?」
『家を創造することなど雑作もない故、やってらんことも無いがの。ただし、一つ条件があるのじゃ』
「条件?」
あれ? 戦闘はないのか? 龍神は戦闘したのに。
何か神の中でも階級みたいのがあるのか? 低階級のやつは問答無用に戦闘。階級が高くなるにつれ要件によって戦闘するかしないかが選択できる?
『そうじゃ。してその条件というのがの。なに、難しい事じゃないのじゃ。妾と戦い、妾を満足させればいい。ただそれだけじゃ。簡単じゃろう?』
いや、難しくないか、それ。戦って弱かったら殺されるし、負けなくても、満足するまで戦わされるってことだろ? なにが簡単なことだよ。要するに圧勝しろってことだろ。まぁ、やるんだが。
「仕方ない。いいぞ。戦ってやる。じゃぁ、どうやって戦う?」
『そうじゃの……これでどうじゃ?』
創造神はそう言うと、指を一回パチンと鳴らす。すると俺達と創造神を囲むようにして壁がせりあがってくる。
地面は、真っ白な床があるのかすらわからない感じから、砂が敷き詰められた少しクッション性のある地面に変わり、上も天井が出来て今までの上限が見えない白い空?が見えなくなっていた。
せりあがってきた壁は瞬く間に姿を変え、地面から数メートル上のところに席を幾つも作った。
そして、全ての動きが止まるとそこには、立派な闘技場が出来上がっていた。見た目はローマにあるコロッセオを修復した感じになっている。さすが創造神。一瞬でこんなに立派な物を創ってしまった。
『どうじゃ? 妾の自慢の魔法、【創造】は?』
「凄いな」
あ、これ魔法なんだね。……魔法なのかぁ。
『これで大丈夫じゃろ?ならが早速戦うとするかの。妾は……そうじゃのぅ、大剣でも使うかの』
「その見た目で、大剣……」
めっちゃロリロリしい創造神が大剣を使うとすっごく大剣が大剣に見える。この表現で分かるかな?
『一振りじゃちとつまらんのぅ。よし、二振り使うとしようかの』
そう言うとまたパチンとフィンガースナップ。創造神の目の前にさっき出したのと同じゴツゴツとした大剣が現れる。
……大剣が、二本。うん、すっごく大剣が大剣で大剣だなぁ。言い方を変えると、創造神めちゃ小さい。
『それでは戦うとしようかの。ほれ、そこの女子三人は観客席に行かぬか』
準備が終わったらしい創造神の言われるがままにミライ達は観客席に向かって行き、一番俺に近いところに座った。
「キラくーん! ちゃんと満足させてあげてくださいねー! 家がかかってるんですよー!」
「キラ! 負けんじゃないわよ!」
「……負けたら、ね?」
ミライとカオリの声援は嬉しいけど、サクラの『ね?』のところでニコッっと笑ったのが少し怖かったのは秘密。
さて、アッチが双剣ならこっちも双剣にしようかな?
よし。【しらゆり・くろばら】と【白百合・黒薔薇】にしよう。神剣はあまり使わないようにしたいからね。
何故かって? だってピンチの時にそういう強い武器って使いたいじゃん!? そう思うよね?……ね!?
『ほぅ。二刀流、かの?』
「あぁ、そっちが双剣ならこっちも双剣じゃないとフェアじゃないだろ?」
『如何にも。ならばさっそく始めるのじゃ。早く戦いたくて妾の体がうずうずしてるのじゃ』
「なら行くぞ! 先手必勝! 【神足通】【居合】!」
『ふん。遅いわ! 【居合】!』
小手調べとして【居合】を使ってみたが、軽く迎撃されてしまった。ならば──!
「【電光石火】!」
『【神足通】!』
「チッ!」
まさか【電光石火】が避けられるなんて……予想はしてたけどな。
『今度は妾から行くのじゃ! 奥義【昇竜剣】!』
まって! それアウトじゃない!?
ギリギリのところで躱し、いったん距離を取る。あれは、アウトじゃ、ないのか……? いやまぁ、技のエフェクトはまさしく剣に竜が巻き付いて、そこからの切り上げ攻撃だから昇竜だけどさ!
『よく躱せたのぅ』
「当たり前だ! 一気に片を付けさせてもらうぞ!」
もともと、この勝負はフェアじゃないんだ。相手は俺の事を倒してもいいのに対し、俺は創造神を倒したらダメなのだ。
ゲームから脱出しようとしているなら躍起になって倒すべきだろうが、今はまだ俺達はここから出ようとしていない。だから倒しちゃいけない。ほらな? 俺、縛られてるだろ?
だが、それもすぐに終わらせればいい。満足されるかは分からないが、勝てばいいのだ。
『ふん。そんな簡単に片を付けられては困るので、本気を出すとするのじゃ』
「は?」
『【神力全開放】!』
創造神がそう唱えた瞬間、創造神の姿が──消えた。




