Save39 使うんじゃねーかよ
「よっと」
そんなことを考えながら歩いているうちに、魔物の包囲網から抜け出せた。普通は付いてくるところだけど、俺が【聖属性上級魔法・結界《侵入》】使って【神護】と【結界《侵入》】の間に挟んで出れなくしたからね。出れなくて当然だよね。
「さて、ミライー! カオリー! サクラー! 終わったかー?」
「はい! 終わりましたー!」
「終わったわよー!」
「……終了」
サクラの声は聴き取り辛かったけど、コクリと頷いてくれたので終わったということは分かった。
「じゃあ、こっちに来てくれー!」
俺が呼びかけると、そこまで離れてなかったのもあり、すぐに集合した。
「レベルどれくらい上がった?」
「私は10レベル位です」
「私もそれくらいね」
「……20」
お、サクラはもう終わったか。一桁台だったからすぐ終わるとは思ってたけど。あとはミライとカオリだけか。あ、結構重要なこと聞くの忘れてた。
「ダメージは?」
「私は大丈夫でした。アーサーたちのお陰で一撃も食らってません」
「私は一撃だけ掠ったわ。キラのNPCがいなかったらあそこで死んでたわね」
「……ない」
カオリが少しダメージを受けたみたいだが、それだけだった。ミライにダメージを与えなかったのはいい仕事をしたな。アーサーを選んで良かった。
サクラは、自分のNPCがいるのと、俺から白虎と朱雀を貸したから、ノーダメージなのは当然の結果だろう。サクラの場合、掠っただけで致命傷だからね。
「よし。じゃあ、ミライとカオリはこいつらを倒してレベルアップな」
「はい」
「わかったわ」
「……私」
「サクラは俺と一緒に散歩」
だいぶサクラが言いたいことが分かってきたような気がする。今のは、『私は何をするの?』と言っていたのだろう。
「散歩、ですか? その間私たちは危険では? 守られてる立場ですから文句は言えませんが、少し怖いです」
「ああ、ミライたちには、引き続きNPC貸す。それと、ミライは玄武を出してもいいぞ。それで大丈夫だろ?」
「……はい。でも、すぐに帰ってきてくださいね?」
「わかった」
ミライが微笑んでいる。けど、何故か凄まじい圧と、寒気がする。何故? 俺何か間違えた?
ミライとカオリと別れ、俺達はあまり離れすぎないように歩いていた。俺がサクラを連れて歩いているのは、何もただ暇だったから、と言う訳ではない。……それも理由にあるけど。
「なぁ。サクラは、森霊族だろ? やっぱり弓とか使うのか?」
「……偏見」
「やっぱり?」
「……使う」
「使うんじゃねーかよ」
俺が聞きたかったこと。それは、『森霊族を選ぶくらいなんだから、弓を使っているのか?』だ。
だって気になるじゃん? 異世界だったら弓の名手ということで有名な森霊族だぜ?
「……だから森霊族選んだ」
おぉ! 初めて長い言葉を聞いたような気がするぞ! 意味はさっぱりだけどな!
「だから?」
「……遠距離」
「遠距離?」
「……後衛のみ」
何となくわかった。つまり、『(他のゲームでは)遠距離専門だから森霊族を選んだ』ということだろう。
後衛職には、弓や魔法で攻撃するタイプと、回復をするタイプの二つのタイプがある。この場合、前者がサクラで、後者が俺に出会う前のカオリだろう。アイツ今はアタッカーだもんな。回復もできるけど。
でも、森霊族だから弓が得意とかあるのかな? ステータスが変わるってことは知ってるけど、スキルとかは知らないからな。ミライに聞いたらわかるかな?
さて、結構時間を潰したし、そろそろ戻ろうかな。
「そろそろ帰るか」
「……ん」
サクラの了承を得て、俺達はミライとカオリの下へと帰った。
ミライとカオリのところに帰ってきた俺とサクラだが、俺達が散歩に行く前に見た光景と、今目の前にある光景の差に愕然とした。何故なら、一面真っ白だったから。おいおい、何使ったんだ?
「お、お前ら、何使った?」
「私は何もしてないですよ?」
「何言ってんのよ!? ミライが全部やったんじゃない!」
え? どっち?
「私がやりました」
なら最初から言えよ。
「キラ君を驚かせたくて」
「驚いたけどさ」
「何したと思いますか?」
「これ、【氷属性魔法】だろ」
「当たりです! やっぱりキラ君なら何でもお見通しですね!」
いや、何でも見通す性能(特に心!)に関してはミライが一番上だと思うぞ?
「はぁ、これ後始末どうするんだよ……」
「キラ君ならできますよね?」
ほらね? 見通してきたでしょ?
「できるけどさ…… ———【焔陣】」
俺がしたことは単純。まず【焔属性魔法】で凍っていた場所を溶かす。そしたら水ができるからそれを蒸発させた。ただそれだけ。でも周りが木だから燃えないようにしたけどね。
「流石ですキラ君!」
「流石ね」
「……凄い」
皆が俺を褒めてくれた。嬉しい。と、その時。
ヒュン
風切り音がした。——————ミライの後ろから。