Save37 流石馬カオリ
翌朝、俺は何故だか布団に包まって寝ていた。俺は昨夜、確かにベッドの上で寝た。しかし、布団の中に入ってはいない。そして俺の上にある温もりを感じる重み。
恐らく、いや絶対にミライだろう。俺の胸から腹にかけて感じる感触的に。まぁ、深夜か明け方頃にミライが起きて、俺を布団に入れた後に俺の上に被さったのだろう。
さて、朝なので、このままと言う訳にもいかない。しかし、ここで俺がミライを起こせない事が発覚。何故なら……
「ミライ可愛すぎかよ……」
寝顔が可愛すぎたから。いや、うん。だって、スヤスヤと気持ちよさそうに俺の上で寝てるんだよ? これが可愛くない訳ないだろ。
でもここは心を鬼にしてミライを起こさなければ。なぜ心を鬼にするか? 俺が甘やかしてしまうから、俺への戒めだよ。それくらい可愛い。
「ミライ、起きろ。朝だぞ~」
「ん……? ふぁ~~~……あ、キラ君。おはようです」
「お、おはよう」
ぐっ、寝起きミライ可愛すぎ……!
ミライは、寝起きの為、目を左手で擦っていた。それ昨日もやってたよね。癖かな?
癖と言えば、今日もミライは寝癖があった。ボサボサになるんじゃなくて、少しだけ髪が跳ねている。それはそれで可愛いと思う。でもミライは気にするかもしれないから教えてあげないと。
「ミライ、寝癖ついてるぞ?」
「えぇ!? またですか!?……キラ君」
「何だ? 水なら風呂場にあるだろ」
「ぶぅーぶぅー! 昨日みたいにしてください!」
「はぁ、仕方ないなぁ~ ――【水気】」
仕方ないと言いつつも、自分の頬がとても緩んでいるよな気がする。頼られて嫌な気分にはならないだろう。……人によるけど。ミライ、サクラは嬉しい方。カオリもかな。でもカムイは無理かな。絶対助けてあげない。土下座されても。
「はい、終わったぞ」
「ありがとうございます」
昨日はミライが自分で櫛を使って髪を梳かしていたけど、今日は俺がやった。何故かって? 俺もわからん。いつの間にか櫛を握っていて、しかも前には待っているように座るミライがいたから、やらない訳にはいかなかった。
「……おは」
「おはよう、サクラ」
「おはようございます、サクラちゃん」
「……ん」
さて、サクラも起きたし、そろそろレベル上げに行きますか。
……いや、まだカオリが起きてない。カオリは、昨日いた位置──机──に突っ伏して、涎を垂らしながら寝ていた。汚い。
「おーい。起きろ~。レベル上げ行くぞ~」
「……はっ! み、皆、おはよう」
「よし。それじゃあ俺につかまってくれ」
「私の朝の挨拶は無視!?」
「──【転移】」
カオリの挨拶を意図的に無視して【転移】で来たのはレベル上げの定番! 【荒れ果て荒野】!!
「……危険」
「あ、サクラちゃんは知らないんでしたっけ。私とカオリはレベル80越えですよ」
「……高い」
「因みにキラ君はわかりません!」
わからないのは俺も同じだけど、何故ドヤ顔?
「あ、今日は【荒れ果て荒野】ではレベル上げしないからな」
「なんで!? ここでいいわよ!」
「【龍神山】でレベル上げしようかと」
「だ・か・ら! なんでもっと危険な所に行こうとするのよ!」
「ちょっと神様が見たくて」
「神様?」
え、もしかしてカオリ気付いてないの?
「えっと、キラ君、どういうことですか?」
ミライもわかってないの!?
「……納得」
サクラはわかったようだな。普通に分かると思うんだけどな。流石馬カオリ
「何故だか今、前にもされた罵倒をされた気がするわ」
「ふ、フシギダネー」
説明した方が良いかな? でも名前のまんまだよな。
「はぁ、未だにわかってないカオリのために説明してやるよ」
「ミライもわかってなかったわよ」
「はいはい。で、俺が行こうとしているところの名前は?」
「無視はやめ———」
「【龍神山】です」
「私のセリフを遮らないで!」
「正解。じゃあ、この世界に居るって言ってた神様の名前は?」
「えっと、魔神、悪神、世界神、創造神、戦神、龍神―――あ、なるほど」
ミライもわかったようだ。あとはカオリだけだけど……。
「さすがに私もわかったわよ。【龍神山】には龍神がいるかもしれない、でしょ?」
「ああ、名前に使われている漢字が〝龍神〟と〝龍神〟で同じなのと、他にも〝七大危険地域〟と〝七柱の神〟。ただの偶然じゃないと思うんだよ」
「そう言われてみればそうね。じゃあ、キラは龍神に会いに行くの? それとも喧嘩吹っ掛けに行くの?」
「俺達が龍神の所に行ったら間違いなく強制戦闘だよな」
「そうね……」
まぁ、龍神にNPCと同じ完全自己学習型AIだっけ?があれば脅すだけだから簡単だよな。
「とりあえず、【龍神山】に行くか」
「き、キラ、私たちを守ってくれるわよね……?」
「死なれたら困るしな。絶対に守る。ってかゼウス使えよ」
「それもそうね」
「あっち行ってから出せよ?」
「わかったわ」
「それじゃあ ――【転移】」
実は【龍神山】近くまでは行ったことがあるので【転移】が使える。【天変地異】使ったときにぶらぶらしててよかったよ。
俺達が【転移】で降り立ったのは、とても巨大な山の麓だった。
周りには樹齢何百年の太い幹を持つ木がたくさん生えている。
俺達の前にあるこの山が【龍神山】で、俺はこの山の頂に龍神がいると思っている。いや、それ以外に選択しないよね。麓とかに居たら神じゃないもんね。
流石【龍神山】の麓なだけあって、そこら辺に危険な魔物が沢山いる。アイコンを見てみると、レベル150とあった。高すぎ……。【荒れ果て荒野】でも100行くか行かないかだぞ?




