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Save29 ロリコンなのか!?

 こいつの事はもうわかったから、本題に行きますか。


「それで、なんで倒れてたんだ?」

「……追い出された」


 前言撤回。全然わからない。追い出された?


「追い出された?」

「……反対した」


 わからん。何に反対したんだ?


「あの、瀬戸さくらちゃんですよね?」

「……そう」


 ん? ミライ知ってるのか?


「隣のクラスの瀬戸さくらちゃんです。無口で口を開いても言葉足らずだったので、結構有名でした。身長も低いので、一部の生徒の間ではとても人気でしたよ」

「そうなのか」


 一部の生徒ってなんだ。ロリコンか? ロリコンなのか!?

 

 それは置いておくとして、今はこいつの事情を聞かないと。


「何に反対したんだ?」

「……クラン」


 クラン? あぁ、同じ森霊族(エルフ)同士でクランを作ろうとして、でもこいつはそれに入らないと反対したわけか。でもそれだけで追い出されるか? 普通。


「何で反対したんだ?」

「……自由主義」


 自由主義?……何かに縛られたくないから、クランに入らなかった、と言うこと?


「で、誰が作るクランなんだ? 森霊族(エルフ)?」

「……違う」


 違う? じゃあ、誰が?……いやそもそも、リアルの友達と同じクランに入るとつもりだったのか? でもクランに入る気はなかったんだよな? ヤバい。増々訳が分からなくなってきた。


 ここで今までの事を整理してみよう。


種族:森霊族(エルフ)

名前:サクラ

歳:16

倒れていた理由:空腹

ここに居た理由:追い出された

追い出された理由:誘われたクランに入ることを拒否した

拒否した理由:自由主義

誘われたクランを作るプレイヤー:不明


 この最後のやつが分かればいいか。


「誰が作るクランなんだ?」

「……神崎君」


 ……あ、あぁー、アイツかー。繋がったわ。一応ミライにも確認。


「なぁミライ、森霊族(エルフ)にも神崎溺愛者は居るか?」

「勿論。全ての種族に居るはずですよ? 色々サポートできた方が良いからーって理由で」


 まぁ、つまり。カムイが作るクランには当然神崎溺愛者がいて、そいつらはカムイ第一に考えて行動するためカムイに迷惑をかけるようなことはしない。

 となると、他のクランメンバーにもそれは及ぶわけで、カムイに迷惑を掛けそうなやつは矯正するはず。


 抵抗しようとしても、抵抗することを見込んで最大効率でレベル上げをしているからレベル差で勝てない。

 と、こんな所か? これなら『縛られたくない』の説明もつく。


「可哀そうに。カムイの被害者と言っても過言じゃないな」

「いやそれは過言よ」

「キラ君が過言と言ったら過言です」

「ミライ、あなたぶれないわね」

「……こいつ溺愛者?」

「こいつ? 今、キラ君の事を〝こいつ〟と言いましたか?」

「……言ってない」


 ミライ、脅しをかけるな。こいつ震えてるぞ?


「まぁ、ミライ、そこまでにしておけ」

「でも……」

「ミライ」

「……はい」

「で、お前はどうしたい?」

「……お前違う。……サクラ」


 お前じゃなくて、サクラって呼べってこと?


「サクラ、お前はどうしたい?」

「……ん?」

「これからどうするんだって聞いてるんだ」

「……何しよう」


 マジか。何も考えずにここに来たのか。……いや、追い出されたんだから何をするか決めてなくて当然か。


「とりあえず、【オーネスト】までは連れて行ってやる。その後は自分で考えろ」

「……感謝」


 本当は話を聞くだけにしようかと思ってたけど、カムイが関わってたから少し同情してしまった。同じカムイの被害者として。


「あ、そうだ。俺達と一緒に行くなら、綺麗にしないとな。 ———【洗浄(ソフトウォッシュ)】」

「……ん!?」

「少し我慢な。じゃ、乾かすぞー。 ———【温風(ドライ)】」

「……ん」


 俺は、汚れていたサクラに【生活魔法・洗浄】と【生活魔法・温風】を使った。効果は名前のまま。


 すると、色が分からなかった髪が、エメラルド色(種族ごとに髪の色が変わる)に輝き、肌はどちらかというと白に近い肌色になった。

 顔は、土や泥で汚れていたが、洗ったことによって、その顔の作りがはっきりとわかるようになっていた。簡潔に洗った後のサクラを見た感想は、『可愛い』しか出なかった。

 ……あ、あれ? 何故かミライの方から寒気が……。


 これ以上サクラを見てると、俺がどうにかなりそうなので、そろそろ出発しよう。


「そんじゃ、行きますか」

「ちょっと待とうか」

「……誰?」

「俺達か? 俺達は、盗賊NPCだ!」

「NPCって自分で言うんだ」


 【オーネスト】へ向かって歩き出そうとしていた俺たちの前に、数十人の男たちが現れた。気配は分かってたんだけど、面倒だから無視してた。

 そして、自分たちの事を紹介するときに『盗賊NPC』と言った時に、カオリがツッコんでいた。そのツッコミ、いる?


「そんなことはどうでもいいだろ! おい! お前! 何女三人も侍らせてんだ! 全部俺達によこしやがれ! たっぷり遊んでやるからよぉ」

「三人? ミライとサクラの二人じゃないのか?」

「キラ! そういうことは冗談でもやめて! 私泣くわよ!?ってかもう泣きそうよ!?」

「それは悪いことをしたな。ガチャ20回で手を打たないか?」

「30回」

「わ、わかった。30回な」

「ありがとう。キラ大好き」

「おう! お前ら! 俺たちの前で何イチャイチャしてんだこら!」

「そうですよ! 私を差し置いてカオリなんかとイチャイチャするなんて……」

「私なんかって何よ!」

「いやごめんってミライ。俺の彼女はミライだけだよ」

「ならいいです」


 ミライ……チョロい。


「無視すんなよ! もういい! お前ら! やっちまえ!」

「「「「おぉーー!」」」」

「はぁ、面倒だな。アーサー」

「はっ、お呼びですか?」

「あいつらを片付けろ。武器はこれ」


 そう言って俺はアーサーに【神剣・デュランダル】を渡した。


「これを使っても?」

「あぁ。だから早く片付けろ」

「はっ、承知いたしました」


 アーサーは俺にそう言うと、目にも止まらぬ速さで、盗賊たちに突撃していった。


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