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ミライside 2

「大丈夫か?」

「!……いやぁ、こないでぇ……」


 私は諦めモードに入ったつもりだったが、全く入れていなかったらしい。小さくかすれた声だが必死に抵抗しようとした。声だけなのでどれくらい抵抗出るのかはたかが知れてる。つまり、抵抗できない。


 やっぱり諦めないと。そう思った時、信じられない言葉が聞こえた。


「大丈夫だ。何もしない。朝倉たちが探してたぞ?」


 何もしない? 本当に? いやそんなことじゃなくて。薫が探してくれている? じゃあこの人は? いやそんなことはどうでもいい。だって、だってだって!


「!か、薫……?」


 薫が探してくれているってわかったから。よかった!私は救われる! そう私は浮かれていた。それだけじゃない。


「ああ、クラスの皆がお前の事探してるぞ」

「み、皆が……」


 なんと、クラスの人たちも私を探してくれていた。とても嬉しかった。嬉しくて嬉しくて——————緊張の糸が切れた。それと同時に、今までの事がフラッシュバックした。怖かった。とても怖かった。

 いつ襲われるのかビクビクしながら周りを警戒していた。それももう、終わり。そう思ったのと同時に、私は感情を吐露しながら泣き出してしまった。


「怖かった……怖かったよぉ…………」

「わかった。わかった。よく頑張ったな」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああん!」


 私は相当大声で泣いてしまっていただろう。でも、私を見つけてくれたこの人は遠くに離れるでもなく、アタフタ慌てるでもなく、宥めるでもなく。――優しく、とても優しく、抱きしめてくれた。


 それから私は彼が泊っている宿に連れて行ってもらった。もう、彼になら何をされてもいいと思った。チョロいと思われるかもしれないが、私をあの場所から助けてくれた彼に私は—————惚れてしまった。だから、もう何をされても構わないと思った。勿論、あんなことやそんなことも。


 宿についてから彼———キラ君は、私に何があったのか聞いてきた。キラ君は私を連れてくるときに自己紹介をしてくれた。正直、宿についてからでもいいと思う。


「……ログアウトが出来なくなったの」


 そう伝えるとキラ君はとても驚いていた。それもそうだと思う。いきなりログアウトが出来ないなんて言ったら本当かどうか疑う。それから私はキラ君にすべてを話した。話すことは少ないけど。

 ……それと私の事をミライと呼んで貰うようにした。名前呼びは夢だった。しかも好きな男子と。本当は未来が良かったけど、ゲームの中だし、このゲームから出た時のお楽しみにする。


 その後は私がどこに泊まるのか聞かれた。私がお金がないことを伝えると、キラ君が出してくれるといった。でも私はキラ君と一緒に居たい。だから思い切って言った。


「私は……キラ君と一緒に居たい!」


 キラ君はとても驚いていた。それから自分は男だぞ。一緒に居てもいいのか?と聞いてきた。勿論、構わない。と言うより、私が一緒に居たい。


「うん。キラ君になら、その……え、エッチなことされても、いい、よ?」

 

 するとキラ君は少し怒気を孕んだ声で、


「ふざけてんのか?」


 と言ってきた。勿論ふざけてなんていない。だから言い返した。


「ふざけてなんかないよ! だ、だって、今まで一人だったし怖かったから、誰かと一緒に居たいの!」


 そしたら『なら明日、朝倉が来るからもう平気だな。今日は仕方ないから、一緒に寝るか』、と言われた。薫と会えるのは嬉しいけど、嬉しいけどっ……!…………もう少し、反応してくれてもいいと思う。


 その後、ステータスを見せて一緒にレベル上げをする約束をした。でも、その後にもうログアウトすると言われた。もう少し一緒に居たかった。けど、それだとキラ君に迷惑が掛かるから言わないでおく。



 キラ君がログアウトした。このゲームはプレイヤーがログアウトしてもアバターは残るから、寂しくはない。でも、キラ君ともっと話したかった……


「でも、明日になったらまた会える!」


 そう気合を入れ直し、備え付けられているお風呂へと向かった。



「ふぅ……」


 お風呂から上がり、部屋に戻るとキラ君のアバターが目に入った。


「別に、大丈夫だよね……」


 少しドキドキしながらもキラ君のアバターに抱き着いた。


「はぁぁ……キラくぅ~ん♡」


 多分、こんな私、薫どころか家族にすら見せたことないと思う。それくらい私はキラ君に惚れていた。



 

 翌日、目が覚めるとキラ君がログインしていた。過去形なのは、目が覚めたらキラ君がいたから。その後に、誘惑してみたけど、ダメだった。あのオーラは怖かった……そういえば今日は薫が来るんだっけ……


 あれから移動して、今は【始まりの街】転移水晶前広場に来ていた。ここで待ち合わせらしい。キラ君と少し話していたら薫が来た。薫は初日も一緒に遊んだからプレイヤーネームは分かる。カオリ。これが薫のゲームでの名前。うん、本名はどうかと思う。……私も同じようなものだけど。


 カオリの姿はリアルと変わらない。とても可愛いと思う。キラ君は渡さない。先手を打っておかないと。


「一夜を共にしました」


 きゃー! 言っちゃった! 恥ずかしい!……コホン。さて、カオリはどう出る?


「えぇ~! 未来……ミライか。ミライはもう大人になっちゃったんだね」


 え? もう少し慌てたりしないの?……よく考えてみれば、カオリがキラ君の事好きかどうかもわからのに何言ってんだろう、私。さっきとは別の理由で恥ずかしい。


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