Save19 私を甘やかしてよー!
「だ、大丈夫か?」
「私、もう立ち直れないわ……」
「そうか。じゃあな」
「ちょっと待ちなさいよ! 女の子が落ち込んでんのよ!? 慰めるとかないの!?」
「え? 別にどうでもいいし」
「私また泣くわよ!? キラに酷いもの見せられたーって言いながら【始まりの街】と【始まりの草原】を走り回るわよ! いいの!?」
「どうぞ? この世界全体の洗脳なんて朝飯前だぞ?」
もちろんハッタリである。できてもせいぜい【始まりの街】全体にしか出来ない。
「と、とにかく! 私を甘やかしてよー!」
「今までの会話の中にお前が甘やかして欲しいなんて言ってたか!?」
「今言いましたー!」
「はぁ、仕方ない。NPCも増えたし、家でも買うか……」
「家!? 私、居候するわ!」
「堂々と言うなよ……」
「キラ君、私もいてもいいですか……?」
「何聞いてんの? 当たり前じゃん。……もう運命共同体みたいなもんだし」
「嫁……!」
あれ? 冗談で言ったつもりなのにな……ミライなら本気で信じてそう。あとミライ? 嫁じゃないからな?
でも家か……どこで買おうかな?
「なぁ、どこに住む?」
「私は【オーネスト】一択ね!」
「【オーネスト】か……」
「【オーネスト】ってどこですか?」
「この世界で二番目に大きい街だよ。だから地価が高いんだよね。最低でも1億Gは持っておかないと」
「そんなに!?」
「ああ、家は7000万G位あればいいんだけど、日用品とか、家具とか買うとしたらそれくらいは欲しいかな」
「そんなにお金ありませんよ?」
「なら稼げばいい」
「……どうやってですか?」
「そんなのカラダに決まってるじゃない!」
「馬鹿かお前は……魔物倒せばいいだろ」
「それじゃあ時間がかかるじゃない」
「俺が稼いでくるから、この宿で待ってろ」
多分俺一人で行ったら、2,3日くらいで1億いけるかもしれない。……ガチャでG出ないかな?
ガチャでGが出て欲しいな、と思いつつやってきたのは【荒れ果て荒野】! いつものところですね。違うところは俺一人だけ、ってことかな。ここでGを稼ごうかと思ったんだが、ここに来て思い出したことがある。
俺達、職業選んでなくね……? と。
でも今の俺達だと誤差だと思うしな……。あ、職業によって変わるから誤差だとは限らないんだっけ。ま、後で考えればいいか。
「さてと、殲滅しますか。———【天変地異】」
【水属性最上級魔法・大洪水+風属性最上級魔法・竜巻+土属性最上級魔法・大地震 最上級合成魔法・天変地異】。
三つの最上級魔法を合成して放った最上級合成魔法。その効果は、エリア内にある水源から水を溢れさせ、渦巻く突風が出現してエリア内を蹂躙し、震度7強程の強い揺れがエリア全体を襲う。
溺死、転落死、圧死等でエリア内の全魔物を駆逐する魔法。これは(使用者以外の)プレイヤーもダメージを受ける。水が溢れ、地面が捲れ、大地が割れるその様はまさに天変地異。
「マジか。MP表示されてる……」
さすがに、MP:Errorでも限界はある。この魔法を使ったら、残りMPが表示された。残りMPは5000程だった。……これでもミライやカオリと同じくらいってさ……
「考えるのはやめだ!……えーと、いくら入った?」
所持Gの表示を見て、俺は固まった。何故なら、そこにはこう表示されていたから……
〈所持金〉
254,375,865G
二億超えてやがる……! 何で ?皆と来た時は合わせてもこんなに貰えてなかったじゃん。……あっ、こいつのせいだと思う。〈討伐記録〉(メニューの中にある)を見てたら怪しい奴を見つけた。
〈討伐記録〉
・ゴールデンスライム×24
・飛竜×346
多分こいつらだよね。でもまだこんなにGを貰えた原因の魔物がいるに違いない。探すの面倒くさいから見ないけど。
どうしよう。2,3日かかると思ったのに、一日で、しかも一時間掛からず終わった。……移動の時間もあるし、別にいいんだけどさ。
【小鳥の囀り亭】に戻り、取得Gを教えると、とても驚いていた。それはもう、写真に撮って永久保存したいくらい面白い顔になってた。……なんでAWOにはスクショ機能が無いんだ。
それから、今後のことを話し合って、明日から【オーネスト】に向かって出発することにした。
増えすぎた従者だけど、アイテムになることもできるようになっていてとても便利。……アイテムの中に入れるっていうのだと、ポケ○ンだよね。
只今の時刻は、午前11時頃。予想以上に早くGが集まったため、旅に必要な道具の買い出しに来ている。……もとから大体揃ってるけど。食料とかがメインかな。
ここは港町【ポートタウン】。故に海の幸が至る所で目に入る。鮪みたいなやつとか、カジキみたいなやつとか、鮫みたいなやつもある。勿論それだけでなく、海で取れた珊瑚や貝を使ったアクセサリーもある。
逆に、山の幸はないことはないけど、とても少ない。恐らく、ここの住民が海の幸が主食になっていて、態々高い金払って山に幸食べるより、安くて新鮮な海の幸を食べるからだと思う。




