Save17 火よりはマシだよね
「んで? さっきから無視してるけど、この子たちは?」
「さあ? 俺にもガチャの景品だとしかわからない」
意図して無視しているわけでは無いのだが、やはり気になっているのかカオリが聞いてきた。でもなぁ、俺にもわからないんだよなぁ。何でNPCとか出てくるの?
「私はキャラ識別番号001番“アーサー”でございます。★は10です」
「ウチはキャラ識別番号009“アハト”です!ウチも★10です!」
「だ、そうだよ?」
うん。正直自己紹介してくれて助かったかな。調べるのも面倒だし。【完璧鑑定】を使うのにもMPは消費するからね。節約大事。
「“アーサー”に“アハト”……統一性がないわね」
「女ですか?」
ミライさん、今すぐ何よりも迅速にあなたの身体から出ているどす黒いオーラを消滅させてください。……そもそもあんなエフェクトあったのか。……『俺的本当にあったいらないエフェクト』二つ目だな。一つ目は宿のエントランスでミライを褒めた時の『頭から湯気が出るエフェクト』だ。
「種族は【人】と【吸血鬼】か?」
「はっ、その通りでございます!」
「違います! ウチは【混血吸血鬼】です!」
「【混血吸血鬼】? なにそれ」
「え、キラ知らないの? 人と吸血鬼の間に生まれたこのことを【混血吸血鬼】って言うのよ」
「へ~そうなんだ」
「女が二人も……渡さない。キラ君は渡さない……」
ミライは早くこっちの世界に帰ってこような。
「さて! 私も引いてみようかしら!……一回だけ」
「それしか引けないんだろ?」
「うるさいわね!」
「さっさと引いたら?」
「言われなくても引くわよ!……えいっ!」
カオリがガチャを引くと、カオリの前に魔法陣が出現した。その魔法陣は白色に発光し、次第に輝きを増していき———
「出たわ! これよ!」
「お、おう?」
「カオリ……」
カオリが引いたモノ、それは手のひらに収まる程のコンパクトなサイズで、棘のような固い毛が生えた———たわしだった。……カオリ、どんまい。
「何でたわしなのよー!」
「「……」」
「二人とも何か言って!?」
「「……」」
「……」
「そ、その、ご愁傷様?」
「キラ! 私泣いていいわよね!? 1万賭けて、たわしよ!? この世界だと200Gもしないやつに1万よ!?」
「カオリ……残念でしたね」
「ミライまでー!」
「カオリ、まだ引きたいか?」
「もちろんよ! でもお金が……あっ!」
「そうだ。今回のアップデートで魔物からGが出るようになった。つまり……?」
「魔物を倒しまくる! よーし! 頑張るわ!」
「おー、一人で頑張ってー」
「えっ一人!?」
当たり前だろ? つか何でカオリまだいるの? ミライの様子を見に来ただけでしょ?
「よーしミライ。【荒れ果て荒野】行くか!」
「はい!」
「私も連れてってよー!」
「主殿。私もお供します」
「ウチも行きます!」
あー、アーサーとアハトもいたんだっけ。ま、大丈夫か。瞬殺だし。
さてさて、やってきましたのは【荒れ果て荒野】! この世界の七大危険地域【龍神山】麓に位置しているそこは、とても危険だ。……俺たちは例外。
「んで? なんでカオリがいるの?」
「いちゃいけないの!?」
「そのうちどっか行けよ?」
「考えとくわ!」
「強制だから」
「無慈悲!?」
「さて、さっさと終わらせるかー」
「キラ! どっかーんとやっちゃって!」
「はいはい。 ———【火災旋風】」
俺が魔法名を唱えると、突風が吹いた。その風は俺たちの周りで渦巻くと、一つの大きな竜巻となった。そこにどこから来たのか火が飛び込み、竜巻の風によってどんどん熱量を増し、遂には竜巻が赤く染まった。
俺たちの周りにできたそれは、どんどん大きくなっていき、最後には周囲を火の海にして消え去った。
【火属性上級魔法・爆炎+風属性上級魔法・竜巻 上級合成魔法・火災旋風】。途轍もない威力を持った炎を纏った竜巻で相手を蹂躙し、最後は辺りを火の海にする魔法。
この魔法は封印かな。
火は【水属性初級魔法・創造・水】で消しといた。……今度は巨大な水たまりが出来たけど。火よりはマシだよね。
「どれくらい上がった?」
「10です」
「10よ」
「10でございます」
「10です!」
「皆同じ、か……これがお知らせにあったレベル制限?」
「多分そうだと思うわ。それよりも! 早くガチャ引きましょ!」
「そうだな。これ以上ここに居ても意味ないし。じゃ、俺に触れてくれ。……よし ———【転移】」
俺の視界が暗転した。……言ってなかったけど、俺この感覚苦手だわ。なんか一瞬だけ浮遊感があるんだよな。その感覚が、ね。
「んで、帰って来たはいいが、……いくらゲットした?」
「えっと……30万Gくらいでした」
「私は25万Gくらいよ!」
「私のは主殿の方に渡っております」
「ウチのもです!」
「そうか。ありがとう」
結構貰えるんだな。……あそこだから?
「てか、なんで聞いたわけ?」
「ん? あぁ、俺が倒してミライたち倒してないだろ? それでもパーティー組んでりゃG貰えるのかなって」
まぁ、あれだけ強い魔物をたくさん倒した割には俺のゲットしたGが少なかったから想像は付いてたけど。
「あぁ、そういうことね……あれ? 私たち、キラのヒモ?」
違うぞカオリ。カオリたちが俺のヒモだと?
「アーサーとアハトは俺の従者だろ? だから給料でお金を渡す」
「その通りでございます」
「そうです!」
「で、ミライは俺が養うって決めてるから、嫁?みたいな感じでヒモじゃないだろ」
「よ、嫁!?」
「わ、私は……?」
「まごうことなきヒモだな」
「やっぱりヒモじゃない!」
そうだな。カオリだけヒモだな。