Save164 同行組
いつの間にか外が暗くなっていた。おかしいな。俺の記憶ではまだお昼ごろのはずなのに。
「キラ君が死んだ目をしています……」
「正気に戻りなさいよ」
「……だいじょうぶ?」
「すまない」
心なしか肌がつやつやしているミライ、カオリ、サクラ、クレアが俺に声をかける。やっぱりみんな可愛いな~あははは。
「うわ、キラ、その顔は気持ち悪いわよ」
「壊れてしまったのでしょうか?」
「……そんなに、イヤ、だった?」
「……すまない」
少し心配そうに見つめられる。
……そろそろ正気に戻らないともう戻れないような気がする。
「キラよ。やはり妾のわがままのせいかの?」
「……そんなことはない。大丈夫だからそんなしょんぼりするな」
クレアの頬に触れ、頭を撫でる。それだけでクレアは笑顔になってくれた。うん、クレアには笑顔が似合う。
「どうにか戻ったみたいね」
「いつものキラ君です」
「……おかえり」
「張本人たちがそれ言う?」
俺をあんな風にした犯人たちがまるで人ごとのように……流石に四人相手は無理だよ。死ぬかと思った。
「……ねぁ、キラ? 今、夜よね?」
「? そうだな」
「夜に夫婦がやることと言ったら?」
「……夫婦の営み?」
「そうね。私の言いたいこと、わかるわよね?」
「わかりたくない」
俺、そんなにカオリに恨まれるようなことした!?
……過去に弄りまくったから根に持ってんのかなぁ……。
「ま、冗談よ」
「心臓に悪い」
まったく、皆ノリノリでやるんだもん。俺の身が持たない。もう少し限度というものを勉強した方が良いと思う。
「二ヶ月も何もしてなかったのですよ?」
「……そそ」
「お前らそんなにアレだったっけ?」
俺の中のイメージと合致しないんだが。
「わ、妾は初めてだった故、その……」
「クレアは良い。クレアは」
初めてがアレって言うのもどうかと思うが。……そもそも高校生でやることじゃないよね。
「とまあ冗談はここまでにして。クレア、いつ移る?」
俺の一言で全員の顔つきが変わる。先ほどまでのニヤニヤした表情から、キリッとした真剣な顔つきに。
「うむ。妾はいつでも大丈夫じゃ」
「わかった、じゃあ明日には移ってくれ。それを確認した後に俺達も落ちる」
「わかったのじゃ」
「ミライ達もそれでいいか?」
「大丈夫です」
「わかったわ」
「……わかた」
明日クレアがパソコンに移ることが決まり、今日はゆっくりすることになった。
え? 続きはしないのか? するわけないじゃん俺斃れるよ?
そして日が昇り、朝を迎えた。
昨夜はみんなで一緒に寝た。俺の隣にミライとサクラがいて、その隣にカオリとクレアがいた。しかし、朝起きてみると、何故かクレアが俺の上に乗っていた。それほど重くはなかったので数十分間はそのままにしておいた。
クレアの寝顔を見れたし、ずっと頭を撫でていたりしたので暇だったわけじゃない。
んでミライが一番早く起きて、俺の上にクレアが乗っている状況を見た。それからミライは俺の上からクレアを落とし、自分が乗ってこようとした。
が、そこでクレアが目覚め、カオリが目覚め、サクラが目覚めたために俺も起き上がった。なのでミライの野望は打ち砕かれた。滅茶苦茶落ち込んでいた。
朝食は俺が作り、クレアが創ったイスとテーブルで食べた。
その後は世界神を呼んできた。少し頼みたいことがあったからだ。
「あ、そう言えば」
「どうしたんですか?」
「カオリ、お前のパソコンにも容量あったよな」
「あるわよ?」
「シロ、どうする?」
「どうする、って……できるの?」
「やろうと思えばできるんじゃないのか? どうなんだ、クレア?」
「恐らくできるのじゃ。世界神、手伝ってくれるかの?」
「あいわかった」
クレアができるのならば、シロやクロもできるはずだ。
カオリはバルコニーに行き、大声でシロを呼んだ。
「シロー!」
「じゃ、ちょっと行ってくる」
俺は【探査】でクロの場所を探し、【転移】でその場所に向かった。
クロがいたのは城の庭だった。今は肉を食っている。ご飯中だったようだ。
「クロ」
「キュウ」
クロの名を呼ぶと、返事をしてくれた。大急ぎで肉を食べ、俺の所に向かって飛んでくる。
「キュウ!」
「よしよし、じゃ帰るぞ」
【転移】を使い、元の場所に戻る。
戻った時にはカオリもシロを抱えていた。
「世界神、どうだ?」
「……ふむ、二匹とも一緒の所に行けるのぅ」
「カオリ、クロを頼んでもいいか?」
「わかったわ」
「キラ君、私もいいですか?」
「ん? いいぞ」
「では、シエルの場所を教えてください」
「ちょっと待って」
【探査】を使って調べてみると、かなり遠いところにいた。二十年も経っていたら住む場所くらい変わるか。
「連れてくるな」
【転移】でシエルのところまで移動する。
シエルがいた場所は森の中だ。朝ということもあって霧が発生している。
この世界でも普通に魔物が出現するらしい。森の中に入った俺に次から次へと襲ってくる。
軽々と処理しながら探すこと数分。森の中を歩いているシエルを見つけた。
「シエルー!」
大声で呼びかけると、シエルがこちらに振り返った。
「キラさん!?」
ダダダダッと駆け寄ってくるシエル。俺は勢いを殺すように足を撓ませ、シエルを受け止めるために抱きしめた。
「もう会えないかと思ってましたぁー!」
涙を浮かべながら俺の胸に顔をこすりつけるシエル。俺はシエルの背中を撫でて落ち着かせつつ、【転移】で戻った。




