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Save163 二十年

 場所を移して、クレアの自室に向かう。

 その途中で聞いたところによれば、世界神たちはやはり補佐としてクレアのそばにいるらしい。


 んで、俺たちのNPCを配下として優待し、軍の隊長だったりを任せているらしい。軍、といっても、戦争に駆り出されるのではなく、警察のような組織らしい。いくらNPCだけとはいっても意志があるために犯罪が起きることもあるようだ。


「長らくぶりじゃの、キラ」

「長らくって……二ヶ月だろ? 確かに長かったが」

「何を言っておるのじゃ? あの日からもう二十年も経っておるぞ?」

「へ?」


 二十年?


「もしかして、ここって時間の進みが早いのか?」


 俺達が二ヶ月間過ごすのに、こっちは二十年も経っていた。単純計算で百二十倍、か?


「キラたちの世界は知らぬが、妾は向こうの世界とあまり変わらぬと思うぞ?」


 クレアが言っているのはAWOの世界だ。俺が終わらせた方。

 そっちと時間の流れが変わっていないと言うことは、俺が目覚めた時に半年も年月が経っていたのはおかしい。半年もたつのならば、半年の百二十倍、つまり六十年もゲームの中で過ごさなければありえない。

 ということは、この世界だけ時間の流れが早いと言うことだろう。


「でも百二十倍って、俺達の体への影響はないのか?」


 百二十倍の世界で過ごすと言うことは、それだけ神経を使うと言うことだ。神経に直接つないでいるので、脳を酷使するかもしれない。大丈夫、だよな?

 てか一日だけって約束なのに百二十日もここにいられるぞ。


「ま、いいか。俺はクレアと一緒にいたいし、最悪死んでもいい」

「ダメじゃ。キラは死んではいけない。妾が死んでほしくない。妾の願い、叶えてくれるかの?」

「……わかった」


 ゲームの中だったらミライ達ともずっと一緒にいれて、全員と結婚できるからいいと思ったんだけどなぁ。


「それで、何をしますか?」


 ミライが話す。何を、か。ぶっちゃけ決めてない。俺の目的はクレアに会うことだから、その後に何をしようかなんてほとんど考えていなかった。


「なぁクレア。俺を構成するプログラムを読み込んで、俺のハードに接続することはできるよな」

「勿論じゃ」


 その方法でGMを助けたわけだし。

 簡単に説明すると、絞殺するための機能を破壊したんだ。精密機械だからな。どこか一つでも掛けるだけで壊れる。クレア曰く危険が最も少ないところを壊したから暴走してしまうことはないようだ。

 で、俺が提案しようとしているのは、


「じゃあさ、そこから俺のパソコンまで行けるか?」

「わからぬ。ちと待っておれ。…………ふむ、繋がることはできたのじゃ」

「そこにある空間に、クレアが入ることはできるか?」

「……出来なくはない。じゃが……かなりダイエットしなくては」

「どれくらい?」

「……恐らく、最低限の力を残して他の力を全て削ぎ落せば多少余裕があるじゃろう」


 つまり、俺のパソコンの中に入ったクレアは、力こそ使えないけど存在はできるってことか。ふむ……


「……うまくいけば、ずっとクレアと居られるかもしれない」

「本当かの!?」

「ああ」


 パソコンの中に入ることはできるみたいだし、上手くつなぐことができればスマホの中にも入れるはずだ。そうすればずっとクレアは俺と一緒にいることができる。

 さらに俺のスマホと繋がっていればミライ達のスマホにも行けるはずだ。全てが上手くいけば、だけど。

 今考えたことを全てクレアに話した。


「本当にそんなことができるのですか?」

「できなくはなさそうよね」

「……わからない」

「……恐らく、スマホが耐えられるのならば、可能じゃろう。じゃが……」

「? どうした?」

「……ないのじゃ」

「え?」


 凄く、すごーく小声でクレアが何かを言った。

 頬は紅潮し、耳まで赤くなっている。

 やがて、クレアは思い切ったかのように大声で言った。


「それではキラと……え、えっちができぬではないかっ!」

「は?」


 え? え? え?

 頭が混乱しているのがわかる。混乱している脳と、冷静な脳が同時に存在している、ような気がする。

 え、クレア今、俺とエッチができないって言った?


「ずるいのじゃ。そこの女子とは既にいたしておるのに、妾だけ二十年もお預けだったのじゃぞ。さらにそこにパソコンの中に入ればずっと一緒にいられると言われ……このままでは妾、ずっとキラと子作りできぬではないか!」


 いや、そんな大声で言われても……

 つか子作り言うなよ。なんか生々しい。


「情報塔に接続するとキラの世界には電動らぶどーるなるものがあるらしいではないか。最悪それを使って……とも考えた。が、やっぱり一度くらいはこの体でやりたいのじゃ!」


 う、うーん。別にやるやらないとか、そういうことじゃないんだけどなぁ。この会話は早く打ち切らないとおかしな方向になってしまう。


「いったん落ち着こう。な、クレア?」

「う、うむ。妾も声を荒らげすぎたのじゃ」


 そういって縮こまるクレア。

 うん、外見幼女のクレアがあんなことを大声で言っているところを見られたら俺の世界だと青い制服の紳士たちに捕まっちゃうからね?


「とりあえずそのことは後に置いておいて。これで俺の目的は終了。後はクレアにパソコンの方に移ってもらって、スマホの方に入れるかを確認するだけだ」

「私もクレアに会えればそれで目的は無くなっていたので、特にやりたいことはありません」

「私も同じね」

「……じゃあ、やる?」


 サクラよ、その手の動きをやめなさい。っておい! 指で作ったリングに指を出し入れする形がダメなんじゃなくて、それを意味する手の動きをやめろってことだからな!? 人指し指と中指の間に親指を入れる形もダメだから!


「こんな時間からですか? そうですねー、どうしましょう?」

「やるなら夜の方が良いんだけど?」

「い、今からかの?」

「……?」


 いや君たち。そんなことを言いながら服を脱いでるじゃないか。

 ……ふむ。


「──【転──」

「……【震牢】」

「【震牢】」

「!?」


 こいつら俺が逃げようとしたのに空間ごと遮断しやがった! つかなんでサクラが【震牢】使えるんだよ!?


「あ、や、やめっ──あー!」


 まぁ、うん。自主規制。


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