Save150 はじまりのまちにしゅうごう!
カムイ達が帰った後、俺達は装備の確認をしていた。
「もう一度聞くが、なんで俺だけ装備の質が違うんだ?」
「「何故か一つだけ滅茶苦茶強い装備ができたので」」
「それを何故俺に?」
「「なんとなく?」」
「……はぁ」
ミライ達が装備する防具や武器も、既にこの世界の枠には囚われておらず、どちらかというと新しい方の世界にこっちの世界の武器を持って行ってそっちで強化したら何故か強いのができてしまった。というのがこれらの装備の状況らしい。
「この装備の効果、知ってる?」
「「いいえ? 何故か見えないのでまぁいいかと……」」
「あ、そう」
俺には【完璧鑑定】のお陰で効果が見えている。
まず目を引くのがHP・MP自動回復だろう。この効果は他の装備にもついていたりするので珍しくはないのだが、驚きなのはその量だ。
「50%とか……」
両方ともに秒間最大量の50%が回復するのだ。二秒待てば全回復とか卒倒ものである。だが相手が未知だと言うのならば、この数値でも足りるかどうかわからない。
他にも目を疑うような効果があるのだが、省略。多すぎて全てを把握できない。
「護れ」
そう口にした途端、俺の周りに【神護】が展開された。
装備の新機能。詠唱短略化だ。【無詠唱】があるが、あれよりも展開速度が上がり、効力も上昇する。ただし、何を使うのかは設定する必要があり、その数は制限がない。
ここまでは良いのだが、設定したものを使うためには使うための言葉を設定しなければいけないし、それらは重複してはいけない。つまり記憶力がものを言うのだ。
なので俺はよく使うものだけを一応設定し、使いつつ慣れていこうと思う。
さて、ここまでが防具だ。因みに、今確認した防具はコートだ。手首まで覆う袖に、ひざ下まで生地が伸びている。色は俺が黒で、ミライ達が明るめのブラウンだったりダークブラウンだったり白だったりと色々。
お次は武器。これはミライ達のしかない。俺のは?
「「コートの機能にあるはずです」」
……確かにあった。【武装展開】。名前からして嫌な予感しかない。何だよ展開って。召喚とかなら分かるけど、展開って……。
ミライは極限まで消費MP量を削減し、最大限に威力を発揮できるように改造された杖。物理もいけるらしい。魔法職とは一体。
カオリは刀身がない細剣。自分のMPを、柄を通して具現化し、好きなように刀身の形を変えられるらしい。更に重量もほとんどなく、俊敏が強化されるような効果も複数付与されていた。
サクラは弓。一見木製の初期武器に見えるが、その性能は月と鼈、雲泥の差。形状は好きなように変えられるし魔法効率も高い。更に矢の自動装填機能もついている。ミライとカオリのいいとこどりをしたような性能だ。
アンラ達の装備もこれに匹敵するほど強化されており、どれもこの世界の理から外れている。
一応NPC用に量産型の装備もあるらしいが、そのうちの一つを見た限りグレードが数段下がっただけで強すぎるのに変わりはない。
クレアシオン達神様も強くなったみたいだし、準備は万全だろう。後はカムイ達の返事を聞くだけ。
翌日。早速カムイがやってきた。用件は昨日の事について。返事は一緒に動くと言うことだった。とりあえず中で待ってもらうことにした。
ほどなくしてドーター達が尋ねてきた。こちらも返事はカムイ達と一緒。いつでも動けるそうだ。
「よし、今日から動くぞ」
「……わかった。連絡する」
「おう、サナ、ギルメン全員に通達だ」
「わかった。はじまりのまちにしゅうごう!っと」
俺の指示に迅速に従い、各々のギルドメンバーに通達を入れる。そして数十分後、俺達の家の前にはたくさんのプレイヤーの姿があった。その数なんと、百名以上。
「予想以上に多いな」
「戦力は多い方良いだろう?」
「そうだな」
中にはどちらのギルドにも属していないプレイヤーもいるらしい。男性プレイヤーの方が多いが、女性プレイヤーの姿もちらほら見受けられる。
見回して観察してみると、全員が最大までレベルが上がっていた。【種族転生】を済ませているやつがほとんどだった。いつの間にこんなにもたくさんの人が【種族転生】をしていたのか。
目的地は既にわかっている。NPCがいなくなった【始まりの街】に【昇華】で効力を拡大させた【探査】を使うと、一人だけここにいないプレイヤーがいる。
いや? 表記はNPCだな。そう、この町の冒険者ギルドギルドマスターだ。
カムイ、ドーターを先頭に、沢山のプレイヤーが彼を目指す。俺達は一番後ろから付いて行く。目立たないように。息を殺して、気配を消し、陰に潜む。
この計画を立てたのはカムイとドーターという設定にしてある。その方が色々やりやすいのだ。けれど相手の事を俺が危険だと判断したらそんなの構わずに俺達が前面に出て戦う。
恐らくこの町は何も残らないだろう。それほど激しい戦闘になるはずだ。時間が経てば経つ程こちらが不利になる。その理由は後ほど話そう。
そしてとうとう、冒険者ギルドに到着した。
『控えよ』
そんな声が聞こえてきたのは、カムイが扉に手をかけたのと同時だった。




