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Save146 カオリであってカオリではなかった。

 予想外に時間を使ったが、俺も無事にあの卵を入手することができた。お金も少なくなったので、レベル上げついでに稼いでこよう。


「んじゃ──【発熱(ヒート)】──【時間操作(タイムコントロール)】っと」


 【生活魔法】と【概念属性魔法】を使って卵の孵化を早めさせる。すると、すぐに卵にひびが入った。


「キュウ!」


 生まれてきたのは一匹のドラゴン。光すら反射させない漆黒の羽毛に身を包み、シロと同じように小さな羽が背中から生えている。大きさも生まれた時のシロと同じくらい。


「よし、お前はクロだ」

「キラ君も安直な名前を付けるんですね……」

「まぁな」


 色が黒いからクロっているのもあるけど、カオリがシロだから対となる存在としてクロにしようと思っただけだ。安直なのに変わりはないな。


「帰ったわよ~」


 外はもう日が暮れ始めていた。窓から差し込む陽光は橙に染まり、恐らく空は何色かに分かれているのだろう。藍色かもしれないし、橙かもしれない。茜色かもしれない。

 ガチャに時間を使いすぎたようだ。クロのレベル上げは明日にしよう。


「おかえり、カオ──リ?」

「おかえりなさ──い?」


 リビングに入ってきたカオリに「おかえり」というため、彼女の方を向いた。が、そこにいたのはカオリであってカオリではなかった。


「あの、どちら様?」

「私は私よ!」

「詐欺の方はおかえりください」

「サギでもトキでもないわよ。私はカオリよ」

「いや、カオリはもう少し馬鹿さがにじみ出ていると言うか、バカが具現化した姿というか……」

「キラ、いい加減しばくわよ?」


 額に怒筋を浮かべたカオリらしき人が、一歩踏み出す。それだけでいつものカオリに戻った。


「あ、カオリだ」

「だからそう言っているでしょう」


 さっきのカオリは、いつもより大人びていたのだ。姿は変わっていないのに、纏う雰囲気が俺と別れるときのカオリとは別格だった。


 首には真っ白なマフラーのようなものを巻き付けていたので、それも雰囲気を変えるのに一役買っていたのかもしれない。


 そのマフラーはカオリが動いたのと同時に主の下から離れ、今さっき生まれたばかりのクロに飛び掛かっていった。どうやらシロだったらしい。あの手のひらサイズだったのが首に巻きつくことができるほどにまで成長したのか。


 とりあえずクロが倒されたら俺の努力が無駄になるので【威圧】を微力で放ち近付かせない。「ピッ!?」と鳴いてクロから離れていった。俺も早くレベリングしてあげないとな。


「どうだった?」

「シロはやっぱり後衛で支援の方が向いていそうね。だからこれからは私のサポートとして戦ってもらうわ」

「もうサポートいらないかもしれませんけどね」

「それを言っちゃあおしまいよ?」

「魔法は?」

「魔法は使えるわ。攻撃も支援も両方できるけれど、支援の方が効力とかその他諸々上ね」


 後ろで魔法を放ちつつ、仲間の状態を見て適切に援護する典型的な後衛タイプか。普通に使えるな。俺達には必要ないかもだけど。


「キラもガチャで引いたのね。さっき引いたにしては生まれるのが早いような気がするけど?」

「魔法使ったからな」

「まぁそうよね。明日からレベリング?」

「ああ、いろんなところを転々としながら殲滅してこようかと。NPCにはレベル制限ないし」

「わかったわ。明日も私シロのレベリングするから朝にはここ出るわ」

「りょーかい」


 ということは、明日ここに残るのはミライ、サクラ、アンラ、ブルー、レッド、モミジの五人になるわけか。シエルは結構前に新しい世界の方に移されたので、今ここには居ません。


 翌朝、カオリは既に出て行ったようで、リビングには俺を含めた六人しかいない。


「「あの、創造神の所に連れて言って欲しです」」

「……わかった。なら俺と一緒に出ようか」

「「ありがとうございます!」」


 いやな予感しかしないんですが。俺は本当にこの子達をクレアシオンの所に連れて行っていいのだろうか。

 でも引き受けた手前、そんなことを言っても意味がないので、出る準備をして二人を玄関の外で待つ。


 数分後、二人は出てきた。背中に大きなリュックを背負っている。背負っているとはいえ、彼女たちの身長を超えるほどの大きさのパンパンに膨らんだリュックの中には何が入っているのか気になる。


 というのも、いつの間にか彼女たちはオリジナルの装備を作ることができるようになっていて、高額アイテムとして存在している【異空間収納庫】というアイテムを軽く凌駕する代物を作ってしまったのだ。


 一度作ることができれば二人曰く簡単に複製できるらしいので、俺達は勿論、サナやドーター、カムイが持っていたりする。


 そんなアイテムがあるのに。更にいくらでも作れるはずなのに外付け装備のリュック(恐らく空間拡張機能付き)を背負っている時点で、ものすごい量のアイテムを持っているということになる。マジで俺この子達をクレアシオンの所に連れて行きたくないんですけど。


「「さぁ行きましょう!」」


 いつもの創造する時よりもさらにキラキラ度が増した瞳で、俺を見つめてくる。俺に跳んでくる流れ星を幻視できそうだ。


「──【転移(テレポート)】」


 俺は覚悟を決めてクレアシオンの所に【転移】した。


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