Save144 ピュイ!
さらにホワイトウェザードラゴンを詳しく見てみると、まだ主人登録がされていないことがわかった。
「カオリ、そいつの主人今いないぞ」
「え!? 私じゃないの!?」
「らしいな」
現実みたいに、初めて見たものを親と思うという仕様はないらしい。
「ど、どうすれば良いのよ?」
「ホワイトウェザードラゴンに認めてもらうんだってよ」
「方法は?」
「さぁ? 自分で考えろってことじゃないか?」
方法まで書いてくれればいいのにな。最悪力でゴリ押せばいけるだろ。
「う~ん、まずは餌付けからかしらね」
「それは絶対にやめた方が良いぞ」
俺やミライ、サクラが作った料理なら大丈夫だろうが、カオリが作った料理だと、良くて気絶&一切懐かないだが、最悪HP尽かして死亡するかもしれん。
「無難に撫でたりしてスキンシップを取ればいいんじゃないか?」
「それもそうだと思うけど……」
「けど?」
「時間がかかりそうじゃない」
「我慢しろよ」
少なくとも気絶させるよりましだろう。
「まぁ信頼関係はそう簡単に築けないってことよね」
「そうだ。頑張ってホワイトウェザードラゴンの信頼を勝ち取れ」
「頑張るわ」
カオリは張り切った様子で胸の前に小さく拳を作った。カオリらしからぬ可愛さだ。
「まずは名前からだな。何て名前にするんだ?」
「う~ん、どうしようかしらね」
ここでピーちゃんみたくふざけたような名前を付けだしたら、俺が餌付けして俺の獣魔にしよう。
「シロ……はどうかしら?」
はい俺の獣魔決定。
「ピュイ!」
と、思ったのだが、シロと名付けられたホワイトウェザードラゴンが、カオリがつけた名前に反応するかのように鳴き声をあげた。美しいソプラノボイスが俺達の耳で反響し、脳内に深く響く。
「やった! ウィンドウがでたわ!」
「おめでとうございます」
「……おめ」
「おめでとう!」
「「おめでとうございます!」」
「おめでとう」
「おめでとうです」
カオリの、予想以上に早く出たウィンドウに驚愕する声に、ミライ、サクラ、アンラ、ブルー、レッド、モミジ、シエルがおめでとうと言う。
早速主人登録したカオリが、ほくほく顔で家へ向かって歩き出した。俺達もその後に続く。
「明日はシロのレベル上げか?」
「それは私一人でやりたいわ。今まで温めてくれていたピーちゃんと一緒に」
「わかった。気を付けろよ」
「わかってるわよ」
今の俺達は、スレなどでプレイヤーを集めていたり、ドーターやサナ、カムイに頼んで少しずつ他のギルドを取り込んでいたりする。ネズミ算的にその量は増えて行っているが、大小様々なギルドが存在しているので、全部集めるのは大変だ。
だが、最近になってその速度が上がってきているような気がする。アンラやブルー、レッドが言うには、どっかの強すぎる四人組が現れたからだそうだ。
この話題をスレで見つけたブルーとレッドが一瞬で俺達だと気付き、それを発言したところ爆発的に参入プレイヤーが増えたのだそうだ。
最初は信じていなかったプレイヤーも、使用武器や容姿を言っていくうちに、疑う人も少なくなっていったそうだ。
こうして、俺達の計画は少しずつだが進んでいるのだ。
「じゃあ俺達はクレアシオンの所に行くか。もし嫌なら俺だけで行ってくるけど」
「勿論付いて行きます」
「……私も」
「「私達も行きたいです!」」
「わかった。お昼ごろに行こうか」
明日はそれぞれが別行動になりそうだ。まぁ、出かける奴以外は家でゴロゴロするだけなんだろうが。
家に入ってからは、ずっとカオリがシロと戯れていた。俺もミライとサクラと戯れていた。シエルがぶすくれていた。幸せな時間だった。
夜には俺が料理を作り、お風呂は久しぶりに俺、ミライ、カオリ、サクラの四人で入った。シエルが侵入してきたり、カオリがシロと水掛け合いっ子をして被害を食らったが、おおむね楽しかった。
俺達が入った後はアンラ達が一緒に入って、長時間楽しんでいた。
お風呂が終わったらみんなで雑魚寝だ。いつもは自室でそれぞれ寝るのだが、今日くらいは良いだろう。
左からレッド、ブルー、アンラ、サクラ、俺、ミライ、カオリ、シロ、シエル、モミジの順だ。ブルーとレッド、カオリとシロはそれぞれ抱き合って寝ている。シロなんかふわふわもふもふしてそうだから羨ましいんだが。俺もブラックウェザードラゴンを引くかどうか真剣に検討しようかな。
左にサクラ、右にミライ、腹の上にはあったかもこもこのなウェザードラゴンが乗っている。そんな状況になってみたい。これはもう両手に花どころではない。最強の布陣だろう。……今度ガチャを引こう。
そして夜は更けていった。同じ場所で寝ているにもかかわらず、ミライに襲われなかったのは奇跡かもしれない。まぁ俺が寝ている間の事は知らないんだけど。




