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Save134 おかしいよこの親子

 サクラがドーターを起こし、意識が戻ったと同時に、ギルドマスター室の扉が勝手に開かれた。


「全く、うちの門番はこんなにも無能ではないと思ったんだがな……」

「会ったことがあるならまだしも、一度もないなら仕方ないんじゃないか?」

「それでもモミジちゃんみたいにできないものかね」

「あれは逆に警戒しすぎだろ」


 脳裏をよぎるのは、一人のケモミミ女子プレイヤー。アイツはもうちょっと人の話を聞いても良かったと思うんだ。


「おいおいおい、こそこそと何を話してるんだ?」


 ギルドマスター室の入り口に立っているのは、一人の男性プレイヤー。腰に高そうな一振りの剣を携え、体も見るからに高級そうな金属が所々に散りばめられた漆黒の革鎧をまとっている。

 その後ろには複数の見るからにして精鋭というような風貌のプレイヤーがいた。


 カムイには劣るが、普通に爽やかそうなイケメンで、後ろに控えているプレイヤーもほぼ全てが女性プレイヤーだ。

 マップで確認すると、数はこの男含め13名。【完璧鑑定】を使ってレベルを調べてみると、平均が94くらいで最高が109だった。その最高レベルが今俺達に話しかけてきたやつ。


「数は13。平均が94で最高が109だ。行けるか?」

「楽勝、だな」

「だよな」


 いつの間にかドーターとサナは【種族転生】したらしい。おかしいよこの親子。

 さらに、ここには俺、ミライ、カオリ、サクラがいるのだ。通常プレイヤーの限界を超えたプレイヤーが四人もいる時点でこいつらに勝ち目はない。


 実際はミライとサクラが魔法や弓を使えないので全力を出せるのは二人だが、物理戦闘でもこいつらには負けないほど強いので大丈夫だ。

 実際、サナ一人でも制圧できるんじゃないだろうか。


「ドーター、殺さずに無力化してくれ」

「わかってる。俺も誰も殺したくはない」

「また相談か? いくら最強のギルドと言われていたとしても、今ここにはお前たち6人しかいないだろう? そんな状況で勝てるとでも?」

「お前の目的はなんだ」


 何となく、何となくだけど、こいつは馬鹿なような気がしてきた。調子に乗っている今なら、なんでも吐いてくれそうだ。


「目的? そんなの決まってるじゃないか。【明誠の誓い】を倒し、【ゴットギャラクシー】を最強のギルドにすることだ」


 あ、ギルドは一緒なんですね。これはカムイにクレームかな。

 だが、こいつは聞いていないのだろうか? 俺達の事やドーターの強さについて何も。


「お前たちは直ちに無力化し、【ゴットギャラクシー】のギルドメンバーとしてこき使ってやる。かかれ!」


 馬鹿なのだろうか? そんな狭い入り口にお前が立ってる時点で誰も入ってこれないような気がするんだけど。


「まぁ、そんなわけないよな」


 が、何らかのスキルか武技を使ったのか、数人のプレイヤーが室内に突然現れた。レベルは100前後。


「ドーター、やっぱり俺達は戦わないことにしよう」

「は?」

「おいおいおい? 今更怖気づいたのか? もっと早く降参宣言すればよかったものを」

「頼んだ、ミカエル」

「はっ」


 別に俺達が戦う道理なんてないよね。

 俺は【ストレージ】からミカエルを呼び出し、こいつらの制圧を頼むことにした。

 いくらNPCだと言っても、ミカエルは今まで何度も激戦を潜ってきたのでそこら辺のプレイヤーよりは断然強い。もしかしたら【種族転生】してないレベル200プレイヤーとも互角に戦えるのではないだろうか。


「NPCに戦闘を任せる? それはNPCの無駄遣いじゃないのか? 本当に、大丈夫なんだよな」

「俺を……いや、ミカエルを信じろ。アイツは十分強くなってる」

「そのようなお言葉を賜っていただき、ありがたき幸せ」


 俺の方を向き項垂れるミカエルに、初めてミカエルを見たドーターやサナは驚いている。


「忠誠心凄いな……」

「キラおーさまみたい!」


 何故かミカエルを使えば使う程俺への忠誠心? が上がってるような気がするんだよな……。


「はっ、俺達との戦いをただのNPCに任せる!? 弱くても数でゴリ押せると思ってるんじゃねぇぞ」

「弱い、だと? 一体誰の事を言っているんだ」


 挑発するかのような台詞に、ミカエルがキレた。てか挑発、だったのか?


「んなの決まってるだろ。そいつだよ」


 そう言って、俺の方を指さす。


「あとそいつら」


 そしてそのまま指をスライドさせミライ、カオリ、サクラ、ドーター、サナを順々に指さしていく。サナを指さしたことに親バカが怒り始めているが、無視をすることにした。もう面倒くさい。

 因みに俺もミライ達を指さされてムカッとしたが、抑え込んでいる。人を指さしちゃいけません。


「貴様……っ!」

「お? NPC風情が主のために怒っているのか? 素晴らしい忠誠心だこと」

「……」


 あ、こいつ完全にキレさせやがった。

 ミカエルの顔から感情が消えうせ、無表情になった。その瞳には感情が一切ない。


「やれ」


 そんなミカエルを見ても、一切怖気づかないこいつは、ミカエルを攻撃しろと命を出した。


「【光槍】」


 小さく呟かれたミカエルの言葉に呼応するかのように、ミカエルの右手付近の空間がねじ曲がった。そのねじ曲がった空間に光が集束していき、一振りの槍を形作っていく。

 【光槍】。ミカエル達天使NPCのみが使えるスキルだ。光を集束させ己が武器とするスキル。

 出来上がった光の槍を右手に持ち、襲い掛かろうとしていたプレイヤーに軽く投擲した。


「ひっ!?」


 放たれた槍は光速で一人のプレイヤーまで飛んでいき、顔面に当たる直前で停止した。

 それを受けたプレイヤーはというと、床にへたり込み失禁していた。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないだろうが、女の子のそういう姿をそのままにしておくのはかわいそうなのでミライに綺麗にしておくように頼んだ。


「来ないのか?」


 今の攻撃を見たからだろう。ミカエルに襲い掛かるものはいない。

 いつの間にか光の槍はミカエルの手に戻っている。


「強いねぇ。そんなやつじゃなくて俺の所有物にならない?」

「お断りだ」

「じゃ~仕方ない。俺が相手になろう」


 訂正。ビビってないやつが一人いた。マジかよアイツ。どんな神経してるんだ……?


「いいだろう」

「そ・の・か・わ・り~。武器の使用はなしで」


 なるほど。こいつは武器が強いと勘違いしてるわけだ。確かに武器も強いが、それを操っているミカエルの方が強いとは考えないのだろうか? 普通光速で飛ぶ槍を操るなんて難しいだろう。


「じゃ、始めようか」

「ああ」

「【錬成】」


 突然床が抜けた。察するにアイツが【錬成】を使って床の物質を溶解させたのだろう。だが、


「それずるくね?」

「これは私達天使ならば誰でもできること」

「後ろは?」

「主のお力を考えれば当然のこと」


 ミカエルは空飛べるし、俺も空飛べるし、【浮遊(レビテーション)】を使えば浮けるから全く意味をなしていなかった。

 さらにミカエルは空中戦も得意なのであまりこちらの状況は変わらない。唯一変わるしとした相手の不利な状況になった事か。

 自業自得だとは思うが、なんかかわいそう。


「ミカエル。殺さずに無力化しろ。できるな」

「御意」


 それから数分もしないうちにこいつらは完全に無力化され、床を直したのちに拘束された。


 一応補足です。【錬成】を使ったプレイヤーに攻撃はできないのではないかと思われた方がいるかもしれませんが(【錬成】は生産職のスキルです)、剣を持っている描写からわかるように、【剣士】の職も持っています。つまり、生産系の職と戦闘系の職が一緒になっているということですね。

 この場合、生産職のプレイヤー(例えばブルー、レッド)でも、戦闘職のプレイヤー(例えばキラやミライ、カオリ、サクラ)でも、NPCでも攻撃できるようになります。

 通常はどちらか片方の職しかとらないのでこういうことはあり得ないのですが、何故かアイツは両方取っちゃってます。馬鹿ですね。

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